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レイモンドの本音
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ヴィクトリアは馬車の中で得意の狸寝入りを決め込んでいた。何故なら目の前に座り腕組みをしヴィクトリアに睨みを効かせるレイモンドの視線から逃れるためだ。
ヴィクトリアがトンプソン領へとサンライズ王国御一行とともに向かう事が許されたのが2日前。ハロルドは早馬に乗ってメープルに入った為にサンライズ王国は馬車の用意が無かったのだ。そこでハロルドはがっくりと肩を落とすヴィクトリアに
『ヴィッキー大丈夫だよ。私が乗せて行くからね。』
王太子スマイルを浮かべていたのだが、出立の朝になると王宮前にはサンライズ王国の騎士団とメープル王国騎士団がごった返していたのである。
『我が国の王太子妃ですからね?馬車に乗って向かうならばトンプソン領へ行く事の許可が降りました。』
淡々と語るレイモンドの言葉を聞いたヴィクトリアはどちらでもトンプソン領へ行けるならば構わなかったのだ。が、しかしこれは聞いてない。
ヴィクトリアと共に馬車に乗り込んだのはレオンではなくまさかのレイモンドであった。レイモンドは乗り込むやいなや、腕組みをし終始このままの状態なのだ。
…何で睨むのよ。
ヴィクトリアは沈黙に耐えきれなくなり恐る恐る口を開いた。
『あの、レオンはどうしたのかしら?』
レイモンドは表情すら変えること無く
『殿下についておりますが?』
…なんでチェンジしてるのよ!
ヴィクトリアは次の言葉を発する事なく今に至るのである。
長旅に於いて身体を休める馬車の中。対面にはこちらを睨みつけるレイモンド。
…駄目だわ。限界。
ヴィクトリアは重い口を開いた。
『ねえ、レイモンド。貴方の気持ちは分かるのよ?そりゃ憎き私と馬車の中。立腹するのもわかる。』
…。
変わらぬ表情のレイモンドを上目遣いで確認するも鬼の形相。
『そりゃ憎いわよね?貴方がこの国の行く末を見越して立てたステファニー様。我が国の宝とも呼ばれるお方だもの。
それを貴方が帝国に行っている間にどこの馬の骨かも分からぬ令嬢がかっさらっていったような物ですもの。そりゃ穏やかでは居られないわ。だからねそれに付いては理解しているし受け止める所存よ。
でもね、これから行くトンプソン領でのプロジェクトは別物でしょ?一時休戦てのは無理かしら?』
これまた恐る恐る上目遣いでレイモンドを見るとレイモンドは呆れ果てたように大きく息を吐いた。
…ヤバいわ。益々怒ってるわ。
ヴィクトリアはまたも狸寝入り戦法に切り替える準備をしていると
『違う。そうじゃない。』
小さく消え入る程の声だがレイモンドが口を開いた。ヴィクトリアはすぐさま目を開けるとレイモンドはまっすぐにヴィクトリアを見据えていた。
『ステファニー嬢、いやステファニー様は我が国の宝であった。あの方ほど王太子妃として相応しい者など居ない。』
…何よ、違わないじゃないの。分かってるわよ。ステファニー様が素晴らしい事は。
ヴィクトリアは怪訝そうにレイモンドを見た。
『聞いた時は卒倒しそうになりました。急いでメープルに戻ってみたらわけの分からない女狐が殿下の隣で微笑んでいる。完璧なステファニー様を捨ててまで娶るのがこの女狐かと思うと腸が煮えくり返る思いでした。』
…女狐って私のことよね?
『今となってしまえばあの時の殿下はどうかしてた。だから今でこそ、それを知る者はおかしくなっていた時の殿下と揶揄しますが…』
…おかしくなっていた時のってどうなの?
レイモンドはしばらくの沈黙の後、少し息を吐いてからゆっくりと口を開いた。
『私が許せないのは貴女がアレクを愛していなかった事です。』
…へ?
ヴィクトリアは自分でも分かる程アホ面でレイモンドを見上げた。
…ヴィクトリアは殿下を愛していなかったの?
根本を揺るがす事実にヴィクトリアは声を忘れていた。
『どんな出来損ないでも良かった。アレクが真実の愛をみつけられたのであれば。私はどれだけでもサポートするつもりでいたよ。だけど、貴女はそうではなかった。
ただ自分の立場の確立だけのためにアレクを騙したんだ。王太子として国を背負うアレクにとって唯一のワガママが真実の愛では無かった事にアレクは己を責め続けている。今だってそうだ。』
…。
黙りこくるヴィクトリアをしばらく見つめ尚も
『真実の愛が消え去る事もありましょう。しかし貴女は初めから己の為だけに。その代償がステファニー様を手放す事になった我が国の損失にアレクは今も苦しんでいるのだ。』
…。
ヴィクトリアは頭をフル回転させている。目の前の威圧的な視線はもはやどうでも良かった。
……いやいやクソやん。ヴィクトリア。
ヴィクトリアは己を蔑み窓から流れる景色をただ目に写して時の流れに身を任せていた。
ヴィクトリアがトンプソン領へとサンライズ王国御一行とともに向かう事が許されたのが2日前。ハロルドは早馬に乗ってメープルに入った為にサンライズ王国は馬車の用意が無かったのだ。そこでハロルドはがっくりと肩を落とすヴィクトリアに
『ヴィッキー大丈夫だよ。私が乗せて行くからね。』
王太子スマイルを浮かべていたのだが、出立の朝になると王宮前にはサンライズ王国の騎士団とメープル王国騎士団がごった返していたのである。
『我が国の王太子妃ですからね?馬車に乗って向かうならばトンプソン領へ行く事の許可が降りました。』
淡々と語るレイモンドの言葉を聞いたヴィクトリアはどちらでもトンプソン領へ行けるならば構わなかったのだ。が、しかしこれは聞いてない。
ヴィクトリアと共に馬車に乗り込んだのはレオンではなくまさかのレイモンドであった。レイモンドは乗り込むやいなや、腕組みをし終始このままの状態なのだ。
…何で睨むのよ。
ヴィクトリアは沈黙に耐えきれなくなり恐る恐る口を開いた。
『あの、レオンはどうしたのかしら?』
レイモンドは表情すら変えること無く
『殿下についておりますが?』
…なんでチェンジしてるのよ!
ヴィクトリアは次の言葉を発する事なく今に至るのである。
長旅に於いて身体を休める馬車の中。対面にはこちらを睨みつけるレイモンド。
…駄目だわ。限界。
ヴィクトリアは重い口を開いた。
『ねえ、レイモンド。貴方の気持ちは分かるのよ?そりゃ憎き私と馬車の中。立腹するのもわかる。』
…。
変わらぬ表情のレイモンドを上目遣いで確認するも鬼の形相。
『そりゃ憎いわよね?貴方がこの国の行く末を見越して立てたステファニー様。我が国の宝とも呼ばれるお方だもの。
それを貴方が帝国に行っている間にどこの馬の骨かも分からぬ令嬢がかっさらっていったような物ですもの。そりゃ穏やかでは居られないわ。だからねそれに付いては理解しているし受け止める所存よ。
でもね、これから行くトンプソン領でのプロジェクトは別物でしょ?一時休戦てのは無理かしら?』
これまた恐る恐る上目遣いでレイモンドを見るとレイモンドは呆れ果てたように大きく息を吐いた。
…ヤバいわ。益々怒ってるわ。
ヴィクトリアはまたも狸寝入り戦法に切り替える準備をしていると
『違う。そうじゃない。』
小さく消え入る程の声だがレイモンドが口を開いた。ヴィクトリアはすぐさま目を開けるとレイモンドはまっすぐにヴィクトリアを見据えていた。
『ステファニー嬢、いやステファニー様は我が国の宝であった。あの方ほど王太子妃として相応しい者など居ない。』
…何よ、違わないじゃないの。分かってるわよ。ステファニー様が素晴らしい事は。
ヴィクトリアは怪訝そうにレイモンドを見た。
『聞いた時は卒倒しそうになりました。急いでメープルに戻ってみたらわけの分からない女狐が殿下の隣で微笑んでいる。完璧なステファニー様を捨ててまで娶るのがこの女狐かと思うと腸が煮えくり返る思いでした。』
…女狐って私のことよね?
『今となってしまえばあの時の殿下はどうかしてた。だから今でこそ、それを知る者はおかしくなっていた時の殿下と揶揄しますが…』
…おかしくなっていた時のってどうなの?
レイモンドはしばらくの沈黙の後、少し息を吐いてからゆっくりと口を開いた。
『私が許せないのは貴女がアレクを愛していなかった事です。』
…へ?
ヴィクトリアは自分でも分かる程アホ面でレイモンドを見上げた。
…ヴィクトリアは殿下を愛していなかったの?
根本を揺るがす事実にヴィクトリアは声を忘れていた。
『どんな出来損ないでも良かった。アレクが真実の愛をみつけられたのであれば。私はどれだけでもサポートするつもりでいたよ。だけど、貴女はそうではなかった。
ただ自分の立場の確立だけのためにアレクを騙したんだ。王太子として国を背負うアレクにとって唯一のワガママが真実の愛では無かった事にアレクは己を責め続けている。今だってそうだ。』
…。
黙りこくるヴィクトリアをしばらく見つめ尚も
『真実の愛が消え去る事もありましょう。しかし貴女は初めから己の為だけに。その代償がステファニー様を手放す事になった我が国の損失にアレクは今も苦しんでいるのだ。』
…。
ヴィクトリアは頭をフル回転させている。目の前の威圧的な視線はもはやどうでも良かった。
……いやいやクソやん。ヴィクトリア。
ヴィクトリアは己を蔑み窓から流れる景色をただ目に写して時の流れに身を任せていた。
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