『婚約破棄から始まる物語』へ転生したってか?【完】

mako

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新たなる女狐誕生

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 アン王女はあれからアレクセイとの接見などせずまるでメープル王国へ観光に来たかのように連日街に繰り出していた。

『新たな女狐の誕生だな。』

 レイモンドがアレクセイに投げかけるとアレクセイも額に手を当てると

『一難去ってまた一難とはこの事か…』


 ヴィクトリアは即座に反応すると

『殿下一難去って大惨事ですわ。』


 かつてのヴィクトリアの記憶の無いヴィクトリアにとって、図々しい王族と一緒にされては困るのだ。


『あまり変わらないように思うが…』


 心の声がダダ漏れなレイモンドを睨みつけると
 ヴィクトリアは咳払いを1つしてから


『考えてみたのですが、あの橋を渡るルートは隣国にとってもやはり旨みのある話しなはず。最短ルートを通れば朝、水揚げされた新鮮な魚をその日のうちに我が国の王都まで運べますのよ?それ以外にも隣国だけからでは無くその他の国も今までの半分程時間で我が国の王都まで来る事ができますわ。それらの国々へも通行料を取れるのですから寧ろ邪魔するなどありえませんわよね?』



確かに言う通りである。アレクセイとレイモンドは黙ってヴィクトリアの話しに耳を傾けた。


『ということは。』






…。


…。



『ということは?』



ヴィクトリアは満面の笑みを作りながら


『サンライズ王国は国を封鎖せざるを得ない何かがあるということですわ。』


前のめりになるレイモンドは


『何かとは?』



ヴィクトリアはチラリとレイモンドを見るもアレクセイに視線を戻し


『そんな事、私の預かり知る所ではございませんわ。』


2人はがっくりと肩を落とした。


…要するにわからないって事ね。

アレクセイは含み笑いでヴィクトリアを見つめた。


そこへ急ぎアナスタージアが沢山の請求書を抱えて駆け込んできた。


『どうした?』


アナスタージアはチラリとヴィクトリアを見ると


『妃殿下はここ最近王宮に籠りっぱなしでしたよね?』

へ?

すっきょんとんな表情のヴィクトリアに代わりレイモンドが


『妃殿下に付いている私が保証する。妃殿下は執務室から出る時はもっぱら君とガゼボテラスで茶を飲む時だけだ。』


…なに?

アナスタージアはアレクセイに山程ある請求書を渡すとアレクセイは目を見開いた。全て王太子妃付けの掛売りである。


アレクセイとレイモンド、アナスタージアは顔を見合わせかつてのヴィクトリアの散財を思い浮かべた。


『デジャヴだ…』


わけの分からないヴィクトリアは請求書を手に取ると濡れ衣を晴らすように


『レイモンド!私は貴方と共に執務をしていてこんなに散財する時間なんてなかったわ。それに何?ドレスや宝石なんて今でも捨てる程あるのよ?必要ないものは買わない主義なの!』


3人にとってまるで説得力のない申し開きに揃いも揃って固まっているとヴィクトリアは


『ねえ、王族って他国で他国のお金で散財するものなの?』



んなわけあるかい!

レイモンドが心の中で突っ込むと


『ねえ、アン王女はアホなのかしら?』



…。


…。


…。


『だってそうでしょう?これから先は知らないけれど今は王太子妃はこの私。王太子妃として
掛売りを切ってくるなんて詐欺だわ。王太子妃のサインまでして文書偽造。王族の身分を偽るなんて厳罰よ?そんな事市井の子どもでも知ってるわ。』


一人憤慨するヴィクトリアにアレクセイは
真面目に


『この先も娶らないけどね。請求書の束は懲り懲りだよ。』


アナスタージアは思わず失笑し


『殿下、この件はお任せしても?』


アレクセイは1つ頷き


『あぁ、任せてくれ。ありがとう。』


ヴィクトリアは興奮冷めやらぬ表情で2人の会話を背中できいた。



…どんだけ図々しいのかしら。





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