『婚約破棄から始まる物語』へ転生したってか?【完】

mako

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女狐VS元祖女狐

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ヴィクトリアは激怒りしていた。なぜなら大切な民が納めた財から、他国の女狐が好き放題遣って良い理由がない。アン王女が襲来してから既に1週間が過ぎていた。アレクセイもアレクセイである。いつまで放置するつもりなのか。あらゆる事に怒りを抱きながら怒涛の勢いで執務を熟していく。


『妃殿下、ひと息つきますか?』


レイモンドはヴィクトリアの様子を感じながら声を掛けた。


『ねえ、レイモンド。人を悪く言いたくは無いんだけれど、やはりおかしいわよね?人としてどうかしてるわ。サンライズ王国ってばどうなっているのかしら?』


レイモンドが淹れてくれたお茶を口に運ぶと満面の笑みとなり


『美味しい♡』


怒りと味覚は別物らしい。


『サンライズ王国はご存知の通りとても小さい領地です。しかしながら領土は細い横長で東側の国々はほとんどあの国を経由しなければ帝国への道のりは倍以上となりますからね。そこを上手く利用して成り立つ国です。』

『なるほど、行き来する母数が変わらないのだから便利になろうがなるまいがサンライズ王国にはメリットがないということね。現に我が国にはサンライズ王国との橋はあそこ以外にも2つあるわ。そこを通っている国がこちらに代わるだけなら…でもデメリットもなくない?そもそもサンライズ王国は国を封鎖すると言ったわ。』


『それは無いでしょう。そんな事をしたらたちまち立ち行かなくなるでしょうからね。恐らくはあの場所だけ封鎖すると言う事では?』



ヴィクトリアは少し考えて怪訝そうに言った。


『やはりアン王女は空っぽだわ。それならば国の閉鎖とは言わないわ。ただあそこだけ封鎖するだけだもの。今まで他国が通行していなかったルートを使われると何か困る事でもあるのかしら?』


もはや探偵のように顎に手を添え考え込むヴィクトリアを眺めレイモンドは少しだけ口角を上げた。



ヴィクトリアとレイモンドが長い廊下を行くと前からサンライズ御一行様が現れた。これまた大名行列であるため他の者が行き来出来ない。王女が通り過ぎるのを頭を垂れて横に退く。ヴィクトリアはレイモンドに視線を送るとレイモンドは静かに頷いた。



目の前まで来たアン王女にヴィクトリアは美しく膝を折ると


『毎日お忙しいそうでございますね。』


アン王女はヴィクトリアとレイモンドを見るとめんどくさそうに

『まあ、街の視察は大切ですからね。この国の民の暮らしぶりを知っておくのは必須ですから。』



…視察ね。


レイモンドは怪訝そうにアン王女を見る。ヴィクトリアは思い出したかのように


『あっそうそう、王女。王女が購入されております品々…』


続きを遮るように


『街の活性化ですわ。なんとも活気が足りない街でしたから。』


『ご配慮ありがとうございます。ですがそれらを使われるのは王太子妃となられてからにしてくださいね。王太子妃付けで購入されておりますから全て私の元へと運ばれて参りますでしょ?私には不要ですから全て倉庫で保管してありますからご心配なく。』

ヴィクトリアの言葉を聞いて驚いたアン王女は後ろの側近と目配せをしたかと思うと


『まぁ律儀なこと。そんな事気にせず倉庫ではなく私の部屋へ運んでくださらない?』


『失礼ながら王女の部屋ではございませんわ。それに律儀な事ではなく至極真っ当な事。王女も帳簿を担うようになられたらお分かりになりますよ。』


にっこりと笑うヴィクトリアを嘲笑うかのような笑みでアン王女は応戦する。


『なるほどね。貴方確か真実の愛とやらで王太子妃になられたのよね?あのステファニー様から横取りして。だからって私から横取りされるのは嫌なのよね?だからこんな意地悪を言うんだわ。でもね教えて差し上げるわ。王族の結婚なんてものに愛だ恋だは無用なの。でも貴女がアレクセイ殿下のお側から離れたくないと言うなら考えてあげない訳じゃないのよ?側妃という椅子もあるしね。だから上手くやってちょうだい。わかるわね?』


…えっと意地悪ってさ。子どもじゃあるまいしね。それにどうしてそんなに上からなのかしら?言うてアレだけど貴方たかだか一国の王女よね?どんだけ甘やかされたらこうなるの?


ヴィクトリアは心の声をなんとか抑え微笑むと


『まぁご配慮ありがとうございます。ですがそれとこれとは別問題。失礼。』



流石のヴィクトリアも踵を返して元いた執務へ引き返えそうとした時


『お持ちなさい!』


アン王女はヴィクトリアではなくヴィクトリアの後ろに控えるレイモンドに声を掛けた。


『貴方も側近ならば側近の仕事をなさい。』


得意気に後ろの者を披露しながら


『たかだか伯爵令嬢上がりではわからない事も多いでしょうに、そんな時の為に筆頭公爵家の貴方がフォローしなければどうするの。肩書だけの使えない男だと思われますわよ?』


こんな戯言に感情を揺さぶられる事は無いレイモンドであるがヴィクトリアは違った。


『口を慎みなさいませ。彼への非礼は私への非礼。おっしゃりたい事がお有りなのであれば私へどうぞ。』


キツイ口調にアン王女の後方に控える優秀な側近らが前に出た。その様子を鼻で笑うヴィクトリアは

『以前サンライズ王国の王太子殿下が非公式にこちらにいらした際にお連れになられた騎士らの数はこの倍はおりましたが皆とても優秀でしたわ。我が国でも朝から鍛錬を積みお帰りの際には我が国からの土産品まで非公式にて迷惑を掛けたのはこちらですからとご辞退され流石はサンライズ王国と思っておりましたが…』



含みを残したヴィクトリアは徐ろに後方らに視線を流しため息をついた。


視線を泳がせる者らへ圧とも取れる視線を浴びせヴィクトリアは執務室へ戻って行った。
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