39 / 72
サンライズ王国
しおりを挟む
サンライズ王国、ここは大陸でも比較的歴史が浅い王国である。メープル王国ではアレクセイは一人息子であり他の王子や王女は存在しない。良く言えば愛妻家の国王ではあるが王族としてはいささか問題でもある。何せ後継者がアレクセイ一人なのだ。
一方のサンライズ王国は王子と王女は軽く両手は超える程ではあるが全て母親が異なる、これまた珍しい王国である。第一王子であるハロルドは幼き頃より自由奔放に育ち、早くして隠居した先代と共に各国を周り様々な経験を積んできたのに対し第二王子のルドルフは常に父である国王の背中を見て歩んできた生粋のサンライズ王子である。その他にも5人の王子が存在したが全て幼くしてこの世を去っていた。王女は第一王女であるアン以外にもまた6人程存在するが全て貴族では無い女の子どもであり王宮でアンと共に暮す事は無く遠く離れた田舎町でひっそりと暮らしているという。
サンライズ王国では実質ルドルフ第二王子とアン第一王女の2人が存在していた。2人はもちろんサンライズ王国の貴族らも皆、ルドルフ第二王子が立太子するものだと思っていたし、実際にその様な組閣も組まれていたのだ。
そんな時サンライズ王国に、唯一正妃の生みし王子ハロルドが帰還し民衆の前に現れた。先代と共に現れたハロルドはルドルフから王太子の座を呆気なく奪っていったのである。
次第に王太子派は大きくなり力を持つようになるがルドルフ派もまた負けじと力を強めていた。2つの大きな派閥がせめぎ合う議会はなかなか進まない現状がここにはあった。
サンライズ王国謁見の間にはルドルフ王子とアン王女。そしてメープル王国王太子夫妻が長いテーブルを挟んで顔を合わせていた。
事の経緯はいきなりの招待状がメープル王国に届けられた事が始まりである。もちろんレイモンドは断りの書状を送るつもりでいたがアレクセイがそれを止めたのだ。なぜならその招待状の送り主がハロルドではなくルドルフ第一王子からだったからである。
『ようこそおいでくださいました。』
ルドルフはハロルドとは異なりとても彫りが深くまるで彫刻のような美男子であった。表情も乏しく冷たい印象が漂っているが、隣のアン王女は相変わらずの派手なドレスに身を包みこれまた美しく微笑んでいる。
…微笑んでいるだけなら立派な王女なのに勿体ないわ。
ヴィクトリアは目の前に並ぶ2人を注意深く見つめていた。
『隣国からのご招待ですからね。それでわざわざ呼び立てた理由をお伺いしても?』
アレクセイは単刀直入に問うた。ルドルフもまた口角を少し上げただけで口を開いた。
『アンからもお話ししたかと存じますが我が国は訳あって国境を封鎖する事になりそうなのです。ですから隣国の貴国には先ずご報告をと思いまして。』
…目が恐いんだけど?
ヴィクトリアは怪訝そうにルドルフを見た。
『王太子殿下は何と?』
ルドルフはアレクセイの言葉に鼻で笑うと
『お恥ずかしい話ですが兄はここに戻ってまだ間もないですからね?国の状況が理解出来ていないようでして。』
『本日はここには?』
ルドルフは窓の外に視線を外すと立ち上がりテラスの窓を開けた。
『兄は今、皇帝から呼び出しを受けております。また何をやらかしたのやら。何せ自由に各国を放浪していた身ですからね。』
アレクセイは黙ってルドルフを眺めていた。
『それで?側妃としてメープル王国にお残りになりますの?』
いきなり飛んで来た球に面食らうヴィクトリアは思い出してしまった…とでも言いたげにアン王女を見た。
…その話まだ言ってるの?
あれほど苦手意識の強かったアレクセイは無表情のままルドルフを見た。ルドルフもまた無表情のまま席に戻ると
『悪い話ではないかと思いますが?』
ヴィクトリアはルドルフに強い視線を投げた。別に妹であるアン王女の後ろ盾になっているからではない。ルドルフはこの部屋で顔を合わせてから一度もヴィクトリアに視線を向けていないのだ。
…嫌われているのは構わないけれど感じが悪い奴ね。
『仮に私が王女を娶ったとしたら…』
『娶ったとしたら?』
ルドルフは少し目を細めてアレクセイの次の言葉を待った。
『アン王女は二度とここへは帰れませんよ?』
!
驚き目を見開くアン王女を見ることなくアレクセイはルドルフに尚も
『貴国が国境を封鎖するとなれば我が国はそこに掛かる橋を全て落としますからね。』
!今度はルドルフが驚き目を見開いた。
…。
…。
…。
この後長い沈黙が謁見の間に流れていた。
一方のサンライズ王国は王子と王女は軽く両手は超える程ではあるが全て母親が異なる、これまた珍しい王国である。第一王子であるハロルドは幼き頃より自由奔放に育ち、早くして隠居した先代と共に各国を周り様々な経験を積んできたのに対し第二王子のルドルフは常に父である国王の背中を見て歩んできた生粋のサンライズ王子である。その他にも5人の王子が存在したが全て幼くしてこの世を去っていた。王女は第一王女であるアン以外にもまた6人程存在するが全て貴族では無い女の子どもであり王宮でアンと共に暮す事は無く遠く離れた田舎町でひっそりと暮らしているという。
サンライズ王国では実質ルドルフ第二王子とアン第一王女の2人が存在していた。2人はもちろんサンライズ王国の貴族らも皆、ルドルフ第二王子が立太子するものだと思っていたし、実際にその様な組閣も組まれていたのだ。
そんな時サンライズ王国に、唯一正妃の生みし王子ハロルドが帰還し民衆の前に現れた。先代と共に現れたハロルドはルドルフから王太子の座を呆気なく奪っていったのである。
次第に王太子派は大きくなり力を持つようになるがルドルフ派もまた負けじと力を強めていた。2つの大きな派閥がせめぎ合う議会はなかなか進まない現状がここにはあった。
サンライズ王国謁見の間にはルドルフ王子とアン王女。そしてメープル王国王太子夫妻が長いテーブルを挟んで顔を合わせていた。
事の経緯はいきなりの招待状がメープル王国に届けられた事が始まりである。もちろんレイモンドは断りの書状を送るつもりでいたがアレクセイがそれを止めたのだ。なぜならその招待状の送り主がハロルドではなくルドルフ第一王子からだったからである。
『ようこそおいでくださいました。』
ルドルフはハロルドとは異なりとても彫りが深くまるで彫刻のような美男子であった。表情も乏しく冷たい印象が漂っているが、隣のアン王女は相変わらずの派手なドレスに身を包みこれまた美しく微笑んでいる。
…微笑んでいるだけなら立派な王女なのに勿体ないわ。
ヴィクトリアは目の前に並ぶ2人を注意深く見つめていた。
『隣国からのご招待ですからね。それでわざわざ呼び立てた理由をお伺いしても?』
アレクセイは単刀直入に問うた。ルドルフもまた口角を少し上げただけで口を開いた。
『アンからもお話ししたかと存じますが我が国は訳あって国境を封鎖する事になりそうなのです。ですから隣国の貴国には先ずご報告をと思いまして。』
…目が恐いんだけど?
ヴィクトリアは怪訝そうにルドルフを見た。
『王太子殿下は何と?』
ルドルフはアレクセイの言葉に鼻で笑うと
『お恥ずかしい話ですが兄はここに戻ってまだ間もないですからね?国の状況が理解出来ていないようでして。』
『本日はここには?』
ルドルフは窓の外に視線を外すと立ち上がりテラスの窓を開けた。
『兄は今、皇帝から呼び出しを受けております。また何をやらかしたのやら。何せ自由に各国を放浪していた身ですからね。』
アレクセイは黙ってルドルフを眺めていた。
『それで?側妃としてメープル王国にお残りになりますの?』
いきなり飛んで来た球に面食らうヴィクトリアは思い出してしまった…とでも言いたげにアン王女を見た。
…その話まだ言ってるの?
あれほど苦手意識の強かったアレクセイは無表情のままルドルフを見た。ルドルフもまた無表情のまま席に戻ると
『悪い話ではないかと思いますが?』
ヴィクトリアはルドルフに強い視線を投げた。別に妹であるアン王女の後ろ盾になっているからではない。ルドルフはこの部屋で顔を合わせてから一度もヴィクトリアに視線を向けていないのだ。
…嫌われているのは構わないけれど感じが悪い奴ね。
『仮に私が王女を娶ったとしたら…』
『娶ったとしたら?』
ルドルフは少し目を細めてアレクセイの次の言葉を待った。
『アン王女は二度とここへは帰れませんよ?』
!
驚き目を見開くアン王女を見ることなくアレクセイはルドルフに尚も
『貴国が国境を封鎖するとなれば我が国はそこに掛かる橋を全て落としますからね。』
!今度はルドルフが驚き目を見開いた。
…。
…。
…。
この後長い沈黙が謁見の間に流れていた。
1
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
ハーレム系ギャルゲー『シックス・パレット』の捨てられヒロインである侯爵令嬢、ベルメ・ルビロスに転生した主人公、ベルメ。転生したギャルゲーの主人公キャラである第一王子、アインアルドの第一夫人になるはずだったはずが、次々にヒロインが第一王子と結ばれて行き、夫人の順番がどんどん後ろになって、ついには婚約破棄されてしまう。
しかし、それは、一夫多妻制度が嫌なベルメによるための長期に渡る計画によるもの。
無事に望む通りに婚約破棄され、自由に生きようとした矢先、ベルメは元婚約者から、新たな婚約者候補をあてがわれてしまう。それは、社交も公務もしない、引きこもりの第八王子のオクトールだった。
『おさがり』と揶揄されるベルメと出自をアインアルドにけなされたオクトール、アインアルドに見下された二人は、アインアルドにやり返すことを決め、互いに手を取ることとなり――。
【この作品は、別名義で投稿していたものを改題・加筆修正したものになります。ご了承ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる