『婚約破棄から始まる物語』へ転生したってか?【完】

mako

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夜会までの時間

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翌朝レイモンドが目を覚ますと既にアレクセイは公爵邸には居なかった。


『殿下は?』


『早朝に朝食を召し上がり王宮へと戻られました。レイモンド様もお急ぎになられては?』


レイモンドは促されるまま馬車へと急いだ。


…どんだけ執務が好きなんだよ。




レイモンドが執務室に駆け込むとアレクセイは爽やかな笑みを浮かべながら


『レイ、おはよう。昨夜はありがとう。今夜は夜会だから早めに執務を切り上げる。』


そう言うとすぐに書類に目を落とす主をレイモンドは嬉しそうに見つめた。







夜会までの時間アレクセイとレイモンドは執務室でくつろいでいた。ヴィクトリアのエスコートに向かうのは、いくら何でも早すぎる。


『そろそろか?』


ソワソワするアレクセイにレイモンドは呆れ果てながら

『まだかなり早いよ…妃殿下なんてまだ風呂にでも入ってんじゃねえの?ってか控え室もまだ整ってない時間だよ。』


…。


2人が暇を持て余していると、ノックとは言えないノックらしき音が鳴り執務室の扉が開いた。怪訝そうに2人は扉へ視線をやるとレイモンドは


『いきなり無礼な!殿下は今手が離せない!』


どうみても暇そうな2人ではあるが、いきなりの訪問者をレイモンドは一蹴すると大きな段ボールを抱えた女?らしき者が


『ごめんなさい、急いでいたものですからってあぁ~!』

バランスを崩し段ボールから書類が散乱した。
急ぎ後を追ってきたレオンは息を切らしながら目を覆った。


…勘弁してくれよ。


執務室の主らは固まりその様子を目を丸くして眺めていたが先に我に返ったのはレイモンド。

『妃殿下!何をなさっているのですか?』


そこには既に夜会の準備を終え美しく着飾って段ボールを抱えるなんともチグハグなヴィクトリアが慌てて書類を集めている。


『来年の予算を確認頂く参照資料をお持ちしたのですが…ごめんなさい。』


レイモンドとレオンが急いで駆け寄り書類を集めているとヴィクトリアはアレクセイの前に腰を下ろした。


『お騒がせして申し訳ありません。』


アレクセイはまだ驚いていたが


『あ、あぁ構わないけどそんなに急ぎなの?』


ヴィクトリアはきょとんとしながら


『殿下がいつ予算案に目を通されるかわかりませんので…』


…だからって夜会の前に持ってこなくてよくねえか?


レイモンドはブツブツと呟きながら資料を丁寧に整理していく。



『そういえばチラっとしか目を通していないけど予算案にマーサ伯爵家への援助金が見当たらない気がしたんだけど…』


何気に問うたアレクセイにヴィクトリアは


『見当たらないのではなくて無いのです。』


レイモンドは驚き振り返ると


『妃殿下、まだそんな事を。以前も申しましたが伯爵家も黙ってはいませんよ?それに王宮が切ったとなればまた面倒な事になります故にあの程度でしたらそのまま継続されては?それに妃殿下のご実家なのですよ?』

これまたデジャヴのようなやり取りが繰り返される。


『レイモンド、以前も申しましたがなんの働きもない家門に何故王宮から援助金が出るのですか?昨年もそうゆう無駄を省く所からトンプソン領地の開拓へと繋がりましたのよ?前回はレイモンドの提案通り減額を飲んだのですから今回は私のゼロを飲んで下さいね!』


『ですが妃殿下のご実家…』


レイモンドの言葉を遮るように


『確かに私はヴィクトリア・マーサでしたわ。ですが今は一応…王太子妃…。予算案を吟味しまとめ上げて殿下に提出するは王太子妃でありヴィクトリア・マーサとは何の関係もありませんわ。これに納得せず身の程も弁えず王宮に乗り込んでくるならば来れば良い。そうすれば私は金輪際マーサ伯爵家とは縁を切りますわ。』


憤るヴィクトリアをレイモンドは黙って凝視しレオンはまたも頭を抱えていた。


『ヴィクトリア、1つ良いか?』


…。


…。


レイモンドとレオンが緊張し2人を見つめる。


『はい、何でしょう?』



『ヴィクトリアの気持ちは理解したが一応…王太子妃…とは何だ?』


…。


…。


…。



押し黙るヴィクトリアを3人は見つめているとヴィクトリアは首をひねりながら

『何でしょう?』



レイモンドへ問うた。


いきなり飛んで来た矢に驚きながら


…なんで俺?


『さぁ…っていうか最近隣国のお荷物兄妹を見ませんが?』


矢を上手くいなすとヴィクトリアはニコリと笑いながら

『里帰り中ですわよ。』


…里帰りって。



『本日の夜会には他国からも参加されるからね。彼らも王族。まさか我が国の王太子妃に仕えているわけにもいかないからね?』


アレクセイが言うとヴィクトリアはお仕事モードとなりレオンに


『レオン、トンプソン領を利用する国のリストは揃えてある?』




これから夜会というのに珍しい王太子妃であった。
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