『婚約破棄から始まる物語』へ転生したってか?【完】

mako

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お茶会

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あれから幾度となくお茶会に参加するようになったヴィクトリアであるが特段変わった事も無く本人は至って充実している様子にアレクセイとレイモンドも安堵していた頃であった。



『殿下!殿下!』


執務室に息を切らして飛び込んできたのはレオン。


『どうした?騒々しいな。』


レイモンドはギロリと睨みつけると


『お茶会が!お茶会で!お茶会…』


動転するレオンの様子を見て二人は顔を見合わせ立ち上がると


『どうした?何があった?』


『毒?か…あれは恐らく毒!』



驚いたアレクセイは


『トリアは?トリアは無事なのか?』

アレクセイの鋭い視線に萎縮するもレオンは

『いや、アン王女が!』


レイモンドも目を見開き


『アン王女が盛ったのか?』


…へ?

一瞬固まったレオンは正気に戻ると


『落ち着いて下さい!倒れてられたのはアン王女です!妃殿下は無事です!』


二人は顔を見合わせるとすぐさま執務室を飛び出して行った。





二人の到着を待っていたかのようにアン王女の部屋の扉は閉められた。ヴィクトリアは不安ほうにベッドに寝かされているアン王女を見つめている。


アレクセイはそっと隣に腰を下ろすとヴィクトリアの肩を抱いた。その様子に冷めた視線を送るヴィオランテは静かに口を開いた。


『王女、そのへんでよろしいのでは?』


王妃の言葉に眠っていたアン王女は気まずそうに目を開けた。


…!

…!

…!


驚いた3人を他所にアン王女は


『バレてました?』


ヴィオランテは呆れ果てたようにため息を付くもアレクセイは


『どういう事ですか!?』


アン王女は視線をヴィオランテに流すとヴィオランテは観念したかのように口を開いた。


『ヴィクトリアの後釜を狙う者は多いのよ。その後釜の招待を探る為にしたくもない面倒なお茶会を開いてたのよ。』



…したくもない?


ヴィクトリアは不思議そうにヴィオランテを見た。


『それにしても考えたわよね。今日のお茶会はね、各国のハーブティーが出されてたわ。同じお茶ならば毒が入っていればよどむから分かり易いのだけれど色とりどりのハーブティーならばカモフラージュにはピッタリだもの。』


アン王女も同調するかのように頷いている。


『それに毒が?ロシアンルーレット的な?それとも王女を?』


レイモンドの問にヴィオランテは首を振ると


『毒が混入していたのはヴィクトリアのカップだったわ。』





目を見開きヴィクトリアを見るアレクセイとレイモンドにヴィクトリア本人も驚いたように首を振る。

『ですが、アン王女が?え?どういう事?』


混乱するアレクセイにヴィオランテは少しだけ口角を上げると


『先手を打ったのよ。王女は。あのままであれば間違いなくヴィクトリアは毒入りのハーブティーを口にしたわ。』


頷くヴィクトリアを見て更に


『だからよ、だからその前にアン王女は倒れたのよ。』


『どうして?』

アレクセイはポツリと呟いた。

『王女が服毒して倒れればどうなります?』

ヴィオランテの言葉にレイモンドは


『全員ホールド。ゆっくりと後退りテーブルから離れます。』


『そう、どうやってもヴィクトリアは毒を口に出来ないわ。だから王女は倒れたのよ。あまり褒められた演技では無かったけれどね?』


アン王女は少し眉間にシワを寄せながら

『王妃、ですがあれはあぁするしか無かったわ!いきなりで成すすべが無かったもの。』


頬を膨らませる王女にヴィオランテは優しく微笑み頷いた。


『アン王女、改めてお礼を言うわ。ありがとう。あの状況下でアレに毒が入っているのが分かるのは、私と貴女、そして毒を入れるように手配したものだけ…。実際私も半信半疑であったの。でもそういう動きを警戒していたからそう思っただけのこと。王女の咄嗟の判断には頭が下がります。』


そう言うとヴィオランテは深々と頭を下げた。それを見てアレクセイとレイモンドも急いで頭を垂れた。


…ど、どういうこと?


未だ状況が把握できていないヴィクトリアも申し訳無さげに頭を少し下げてみた。


『で?黒幕は?』


アレクセイはアン王女に問うと


『そこまでは…。ただ妃殿下の命を狙う者が居る事は確かのようだわ。それが誰か…。それは私の仕事ではありませんわ。私はあくまで妃殿下をお守りする事だけ。その者を捕らえ裁くのは殿下、貴方ですよ?』


アン王女はそっけなくアレクセイに言うと安堵するようにヴィオランテを見た。


『にしても良かった…。今だから申し上げますが私は首謀者王妃説を案じておりましたの。もしそうなれば厄介ですからね?』


ヴィオランテもまた微笑みながら


『私は貴方が私を疑っているであろう事を存じておりましたわ。』


アン王女は申し訳なさそうに


『申し訳ありません…』


ヴィオランテは首を横に振ると


『いいのです。全てはヴィクトリアを想っての事。私は有り難いと思って見てましたのよ。』



ヴィオランテは優しい眼差しをアレクセイとヴィクトリアに向けて微笑んだ。


…え?


ヴィクトリアはその視線にぎこちない笑顔で応えたのであった。






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