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夫婦の時間
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ヴィクトリアは混乱していた。初めて知る事実に頭を巡らし、探し求めていたルシャードという男は実は殿下の側近であり自分の身近に居たのだ。
明るみになった事実は転生してきたヴィクトリアにとって考えもつかないものばかりでまだ頭が追いついていないのだ。
促されるままに晩餐を軽く口にし、湯浴みを済ませ放心のまま寝室へと向かうと既にアレクセイはソファで寛いでいた。
『トリア、大丈夫だった?』
目の前で微笑むアレクセイはいつもと変わらないようにも見えるが何故だか遠い存在のようにも思えた。
ヴィクトリアはすっと視線を外すと小さく微笑みバルコニーへ出た。その後からアレクセイもバルコニーにやって来ると
『どうしたの?夜は冷えるから、さぁ中へ。』
ヴィクトリアは星空を見上げながら
『いいえ、心地よい風ですわ。私は少しこうしておりますので、殿下は先にお休み下さい。』
眺める星空はこの世界へ来る前に見た景色と何ら変わりは無い。
得体のしれないモヤモヤがヴィクトリアの心を支配している中、輝く星空だけはヴィクトリアを癒してくれている。
ヴィクトリアが見上げるその横にアレクセイも立つと
『こうしてゆっくりと星空を見上げるなんていつぶりだろうか。』
『…。』
『トリア、怒ってる?』
…怒る?何を?
ヴィクトリアは隣のアレクセイに視線を置くと
アレクセイは星空を見上げたままに
『怖い想いをさせてしまったから。』
…怖い?何が?
頭を巡らせるヴィクトリアに尚も
『君を信用していなかった訳ではないんだ。だけど結果的にあのよくわからない部屋に閉じ込められたのは事実。全ては私の責任だよ。申し訳ない。』
ゆっくりと視線をヴィクトリアに流すと何故だかヴィクトリアはモヤモヤしていた気持ちがやがて怒りに変わる感覚を覚えた。
『先ほどまでは怒っていませんでしたが今殿下の話しを聞いて怒りが湧き出てきましたわ。』
アレクセイは眉を下げ
『ごめん。』
『何にごめんなのですか?』
ヴィクトリアはさっさと現実に戻るかのようににバルコニーを後にしソファに沈んだ。
…これ駄目なやつだわ。
ヴィクトリアは意を決したようにアレクセイを見ると
『ちょっと王太子妃モードを中断させて頂きますわ。今から殿下に当たり散らしますがよろしいですか?』
…当たり散らすって。
アレクセイはたまに当たり散らしモードになるヴィクトリアを頭に描きながら小さく微笑んだ。
『どうぞ?』
大きく息を吐いたヴィクトリアは背筋を伸ばすと
『私は殿下がお二人を疑っていらっしゃる事は存じておりましわよ?』
驚きながらもヴィクトリアを凝視しているアレクセイに尚も
『初めて知る事実の多さに戸惑ってます。』
…。
『一人の人間として貴方の今日のお姿は大変ご立派でしたわ。ですが妻としては何か寂しさをも覚えました。』
『寂しさ?』
『はい、何故か殿下が遠い存在のような気がして。私の手の届かない場所にいらっしゃるような…』
アレクセイは急いでヴィクトリアの手を取ると
『私はここに居る、トリアの側に居るよ?』
『私が知らないだけで、殿下は初めから動いていらっしゃった。統率者として抜け目なく。そんな貴方の評価を私は、かつて地に落としてしまった。だからヴィオランテ様のお気持ちもわかりますの。私であればとっくに追放しているわ。目障りですもの。』
…。
『だからあの部屋でルシャードと会った時もお二人と会った時も、私の命など惜しくも怖くもなかったわ。ただ…』
『ただ?』
『王女のように日頃、側で一見好意的に付いていても本心はわからないものなのです。ですから殿下貴方も、あの部屋の存在をご存知でこうして私を追放を目論む1人なのであれば私の心に芽生えた気持ちは独りよがりだったのだと悲しくなりました。』
『違う!それは違う。』
涙を溜めるヴィクトリアはその大きな瞳から溢れんばかりの大粒の涙を堪えながら
『最期を迎える際に貴方の笑顔を思い出せたらそれだけで良かった。別に王太子妃に未練など無いし本当それだけで良かった。だから死など恐ろしくも何とも無かったの。だけど最期に貴方の本心が私を憎んでいた表情であるならば
それが私は何より恐ろしくて堪らなかった…』
アレクセイはヴィクトリアを己の胸に抱き込むと
『ごめん、誤解を与えていたんだね。それは違うから。私もあの部屋の存在を知らなかった。そんな危険な部屋が存在するならトリアを王宮に置いてなんていなかったよ。あれだけ王宮から出てはいけないって言っておきながら実は王宮が最も危険だったなんて…本当申し訳ない。』
『殿下、話し聞いてました?』
目をパチクリさせるアレクセイに
『ですから私はあの部屋の事など何とも思ってませんし、ヴィオランテ様の事も何とも思ってませんわよ?全ては過去の自分のした事の代償ですもの。全て背負って精算してみせますわ。』
アレクセイは小さく笑うと
『頼もしい妻だ。さぁ、残念ながら明日もあの王女と話さなくてはならない。今夜は早く休もう。』
アレクセイはヴィクトリアの手を引きベッドに入った。余程疲れていたのか2人はすぐに寝息を立て夢の中に入って行った。
明るみになった事実は転生してきたヴィクトリアにとって考えもつかないものばかりでまだ頭が追いついていないのだ。
促されるままに晩餐を軽く口にし、湯浴みを済ませ放心のまま寝室へと向かうと既にアレクセイはソファで寛いでいた。
『トリア、大丈夫だった?』
目の前で微笑むアレクセイはいつもと変わらないようにも見えるが何故だか遠い存在のようにも思えた。
ヴィクトリアはすっと視線を外すと小さく微笑みバルコニーへ出た。その後からアレクセイもバルコニーにやって来ると
『どうしたの?夜は冷えるから、さぁ中へ。』
ヴィクトリアは星空を見上げながら
『いいえ、心地よい風ですわ。私は少しこうしておりますので、殿下は先にお休み下さい。』
眺める星空はこの世界へ来る前に見た景色と何ら変わりは無い。
得体のしれないモヤモヤがヴィクトリアの心を支配している中、輝く星空だけはヴィクトリアを癒してくれている。
ヴィクトリアが見上げるその横にアレクセイも立つと
『こうしてゆっくりと星空を見上げるなんていつぶりだろうか。』
『…。』
『トリア、怒ってる?』
…怒る?何を?
ヴィクトリアは隣のアレクセイに視線を置くと
アレクセイは星空を見上げたままに
『怖い想いをさせてしまったから。』
…怖い?何が?
頭を巡らせるヴィクトリアに尚も
『君を信用していなかった訳ではないんだ。だけど結果的にあのよくわからない部屋に閉じ込められたのは事実。全ては私の責任だよ。申し訳ない。』
ゆっくりと視線をヴィクトリアに流すと何故だかヴィクトリアはモヤモヤしていた気持ちがやがて怒りに変わる感覚を覚えた。
『先ほどまでは怒っていませんでしたが今殿下の話しを聞いて怒りが湧き出てきましたわ。』
アレクセイは眉を下げ
『ごめん。』
『何にごめんなのですか?』
ヴィクトリアはさっさと現実に戻るかのようににバルコニーを後にしソファに沈んだ。
…これ駄目なやつだわ。
ヴィクトリアは意を決したようにアレクセイを見ると
『ちょっと王太子妃モードを中断させて頂きますわ。今から殿下に当たり散らしますがよろしいですか?』
…当たり散らすって。
アレクセイはたまに当たり散らしモードになるヴィクトリアを頭に描きながら小さく微笑んだ。
『どうぞ?』
大きく息を吐いたヴィクトリアは背筋を伸ばすと
『私は殿下がお二人を疑っていらっしゃる事は存じておりましわよ?』
驚きながらもヴィクトリアを凝視しているアレクセイに尚も
『初めて知る事実の多さに戸惑ってます。』
…。
『一人の人間として貴方の今日のお姿は大変ご立派でしたわ。ですが妻としては何か寂しさをも覚えました。』
『寂しさ?』
『はい、何故か殿下が遠い存在のような気がして。私の手の届かない場所にいらっしゃるような…』
アレクセイは急いでヴィクトリアの手を取ると
『私はここに居る、トリアの側に居るよ?』
『私が知らないだけで、殿下は初めから動いていらっしゃった。統率者として抜け目なく。そんな貴方の評価を私は、かつて地に落としてしまった。だからヴィオランテ様のお気持ちもわかりますの。私であればとっくに追放しているわ。目障りですもの。』
…。
『だからあの部屋でルシャードと会った時もお二人と会った時も、私の命など惜しくも怖くもなかったわ。ただ…』
『ただ?』
『王女のように日頃、側で一見好意的に付いていても本心はわからないものなのです。ですから殿下貴方も、あの部屋の存在をご存知でこうして私を追放を目論む1人なのであれば私の心に芽生えた気持ちは独りよがりだったのだと悲しくなりました。』
『違う!それは違う。』
涙を溜めるヴィクトリアはその大きな瞳から溢れんばかりの大粒の涙を堪えながら
『最期を迎える際に貴方の笑顔を思い出せたらそれだけで良かった。別に王太子妃に未練など無いし本当それだけで良かった。だから死など恐ろしくも何とも無かったの。だけど最期に貴方の本心が私を憎んでいた表情であるならば
それが私は何より恐ろしくて堪らなかった…』
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『ごめん、誤解を与えていたんだね。それは違うから。私もあの部屋の存在を知らなかった。そんな危険な部屋が存在するならトリアを王宮に置いてなんていなかったよ。あれだけ王宮から出てはいけないって言っておきながら実は王宮が最も危険だったなんて…本当申し訳ない。』
『殿下、話し聞いてました?』
目をパチクリさせるアレクセイに
『ですから私はあの部屋の事など何とも思ってませんし、ヴィオランテ様の事も何とも思ってませんわよ?全ては過去の自分のした事の代償ですもの。全て背負って精算してみせますわ。』
アレクセイは小さく笑うと
『頼もしい妻だ。さぁ、残念ながら明日もあの王女と話さなくてはならない。今夜は早く休もう。』
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