王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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危険な街角、囚われの王太子妃

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クラリスが馬車へ乗り込み、扉が閉まるのを待っていると──
閉まるより早く、その隙間からテオドールが滑り込むように乗り込んできた。

「っ……!」

驚愕と嫌悪が同時に浮かぶクラリス。
対するテオドールも、隠す気ゼロの嫌悪を顔に貼りつけながら向かいの席に腰を下ろした。

「ちょっと! 何をしれっと乗り込んできているのよ!」

……いや、それはこっちの台詞なんだが?

「待って。フィリップスならまだ分かるわよ?
あなたは“殿下の側近”でしょう。読んで字の如く、殿下の側にいなさい!」

「妃殿下。あなたが“公務”でお出かけになるのならフィリップスが同行したでしょう。
しかし、これは“プライベート”でのお出かけですよね?」

「だからって、あなたが来る必要はないでしょう?
護衛なら、ほら……三羽ガラスの一人にいたじゃない。あのガタイのいい……なんて名前だったかしら? もう一人!」

「……三羽ガラス?」

テオドールは眉をひそめ、少し考えてからため息を吐く。

「まさかランドールのことですか?
彼は我が国が誇る騎士団を束ねる“騎士団長”です。
普段は国のために前線で動くべき人材ですよ」

「何? つまり“私を守るには役不足”ってこと?」

「いかにも」

……。

返す言葉を失うクラリス。
そして最初から最後まで不機嫌なテオドール。

そんな二人を乗せ、馬車は無情にも走り出した。



「ねえ。なんであなたが機嫌悪いのよ?」

「別に」

……むっかつく男ね。

「言っておくけど、私はこう見えて護身術に長けているの。
だから足手まといにだけはならないようにね?」

テオドールは沈黙したまま、視線ひとつ向けない。

……無視? いい度胸してるわね。

クラリスは諦めて窓の外の景色を眺めながら、ほどなくしてウトウトと眠りに落ちていった。



どれほど時間が経っただろう。
重いまぶたをゆっくり持ち上げると──真正面から刺さる視線がある。

「な、何よ?」

テオドールが鬼のような形相で睨んでいた。

「とっくに到着しております。
あまりにも幸せそうに熟睡されていたので起こすのをためらいましたが」

……熟睡って! いや起こしなさいよ!

クラリスも負けじと睨み返す。
テオドールはため息ひとつ落とすと、先に馬車を降りクラリスへ手を差し出した。

……。

クラリスは渋々その手を取って馬車から降り立つ。

彼女は慣れた足取りで歩き出し、テオドールはその五メートル後方を一定の距離を保ってついていく。

長く歩き、スラム街の入口にたどり着くと、クラリスは一切ためらわず門をくぐった。

その瞬間だった。

テオドールが裏路地へ足を踏み入れるより早く──
空から、影から、幾つもの黒ずくめの男たちが一斉に襲いかかる。

「──っ!」

クラリスが悲鳴を上げる間もなく、口元に布が押し当てられた。
強烈な薬品の匂い。身体から力が抜ける。

何か言おうとした唇が震えるが、声にはならなかった。

次の瞬間、クラリスの意識は闇に沈んだ。
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