王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako

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王宮の秘密と忠誠の絆

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ミケルたちを衛兵が案内するのを見届けると、フリードリヒはまずマリネットに問いかけた。

「何故知っている?」

その冷めた声に、マリネットは思わず震える。

「殿下…。」

クラリスがミケルの婚約者候補であったように、このマリネットもかつてフリードリヒの婚約者候補であった。冷たい視線に、大粒の涙がマリネットの目に浮かぶ。

「答えよ。」

マリネットは観念したように口を開く。

「たまたまです…。ヨハネス殿下が王宮から抜け出す…」

「違う!」

突然声を荒げたフリードリヒに、一同は驚愕し固まる。

「あの入口のことではない。」

震えるマリネットに向かってさらに続ける。

「ヨハネスがクラリスを狙っていたということをだ。」

…。

…。

「聞いたのです…」

「誰から?」

ますます冷めた口調でフリードリヒが問いただす。マリネットは視線を跳ね返すようにして、再び答える。

「社交クラブで…。」

フリードリヒは呆れた顔で眉を上げる。

「君は社交クラブに出入りしているのか?」

マリネットは大きく目を見開き、必死に否定する。

「違うのです!違う!」

「勘違いするな。君がどこに出入りしようと自由だ。それで?誰から聞いた?」

…。

「何度も言わせるな。誰からだ?」

マリネットは言いにくそうに口を開く。

「メアロット男爵が…王子がスラム街に出入りしていると。それに妃殿下もそこに出入りしていることが話題になり、その…お酒も入っておりますし…お二人がそういう関係なのでは?とか、王子が兄嫁を狙っているのでは?とか…」

まるでゴシップ誌の記事のようだ。

「ヨハネスが狙っているとは、クラリスの命を奪うという意味ではないのか?」

恐ろしいほど冷めたフリードリヒの言葉に、マリネットは言葉を失う。

フリードリヒは安堵のため息をつき、衛兵を呼んでマリネットを引き渡した。

連れ出されるマリネットに、ヨハネスは冷たく言い放つ。

「我が国の機密を、事もあろうか他国に漏らすとは。公爵家は取潰しだな。」

首切りのジェスチャーを交え、マリネットを見送る。

安堵の空気が広がる中、クラリスはフリードリヒを真っ直ぐ見据えるアルフレッドの側近、ファビウスを見つめていた。

能面のように無表情なことで知られるファビウスが、珍しく目頭を押さえる仕草を見せていた。

…どうした?

アルフレッドの側近であるファビウスがここに居るのはおかしくないが、感情を揺さぶられる出来事などあっただろうか。

二人を交互に見つめるクラリスに、ヨハネスがニヤリと笑いかける。

…なに?

「姉上は分かりやすくていいや。兄上が一番拘ったこと。それは王宮の秘密ルートではなく、私が姉上を狙っていたとミケル殿が口にしたことなんだ。」

…。

「何故だか分かる?」

…。

その問いに答えたのはテオドールだった。

「殿下はその件について、ファビウスに箝口令を命じていました。あのままではファビウスが背いた形となるから、殿下はファビウスのプライドを守るために敢えてそこに拘ったのです。」

クラリスに丁寧に説明するテオドールに、クラリスは息を呑む。

「殿下は初めから信じていたのですね?」

「もちろん。あれは、ファビウスが案じていることを察知した殿下が、彼を守るために…」

フリードリヒは当たり前のように言う。

「ファビウスを疑うことは、兄上を疑うことになるからね。」

アルフレッドも嬉しそうにファビウスに視線を送ると、ファビウスはフリードリヒに一言。

「勿体無いお言葉。」

最上級の礼を取りながら、涙を流すファビウスはとてつもなく美しかった。
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