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淑女の仮面をなくしました
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『珍しい歓迎だな。ドレスを着たサル』
ど直球で来た。
『何のコトでしたか?』
淑女の笑みを何とか見繕い首を傾げてみせた。
『ほう‥』
(ヤバい、こいつのほぉ‥の後はまずいはず。)
『私は嘘が嫌い。些細な嘘も許さぬと言ったのを聞いておらぬか?木の上で。』
サルがニヤリと笑った。
(こわい、こいつが笑うと余計に恐ろしい。
氷の彫刻のような笑顔がこんなに恐ろしいものなのか‥どうする?どうする?)
『ドレスを着たサルですか?私は東国で毎日自室に令嬢を連れ込む下半身でしか考えられないサルしか存じませんが』
こうなったら開き直るしかない。
『ほう‥先程までは淑女の仮面を被っていたようだが、仮面はどうされた?』
『あら、大変。会場に忘れて参りましたわ』
その場を逃げる様にして離れようとしたとき、
腕を捕まれた。
『待て、話はまだ終わっていない』
待てと隣国の王太子に言われれば待つしかない。
諦めたリデュアンネはベンチに腰をおろした。
それと同時にハインリッヒ殿下はベンチから立ち上がりバルコニーに立った。
流石は王太子。夜のバルコニーで隣に腰を掛けるリスクは犯さないらしい。
サルからチンパンジーに成長したか。
『仮面を被ってまで西国王妃になりたいか?』
まるで軽蔑するかの様な視線を送られリデュアンネは切れそうになるのを必死に我慢していた。
『そこまでして王妃になりたいとは。王妃となれば国母である。その野心には感服するな。』
リデュアンネの表情を逃すまいとじっと見ながら話すハインリッヒに悟られまいと冷静を装うリデュアンネ。
『生まれ持った血か?』
我慢だ、我慢。これぐらいの事はなんてことない。
『それともアルフレッド殿下にご執心か?皆に優しい王子さまか。あなたにも優しいければ他の令嬢にも同じく優しい。今もダンスを楽しんでおいでだ。』
リデュアンネは次々に投げ込まれる暴言に耳を塞ぎたくなりつつも必死で我慢をした。
そんなこと知っている。アルフレッド殿下は皆に優しい。それは彼が王太子であるために、王子さまを演じなければならないのだ。それは今に始まったことではない。それが常なのだ。
私がどう思うとか関係ない。私は王妃になるのだ。
リデュアンネの頭の中はぐちゃぐちゃに絡みついに言葉を放つ
『所詮、駒。私たちは駒にすぎないわ。好きも嫌いもなく、与えられた環境を受け入れていかなければならない。それが貴族。それが貴族の結婚。
下半身にだらしなく、身籠った女性に責任も取らない男よりマシだわ。』
息継ぎをも忘れ一気に吐き出した。
しばらくの静寂。遠く彼方に夜会のワルツが響き渡る。
『私の名誉の為に言っておくが、彼女は身籠ってなどいなかった。それに私が令嬢を弄んでいるように思ってるようだが、私に寄ってくる令嬢は私の肩書に寄ってくるのだ。その令嬢に愛想を振りまくのか?そこまで善人にはなれんがな。まあ、アルフレッド殿下は別のようだ。でも、彼の優しさは時には罪でもあるぞ。あの優しさは誤解を招く。無駄に令嬢同士の醜い争いにもなろう。』
うるさいうるさいうるさい!
『私の預かり知るところではございませんわ』
気付いた時にはあの氷の王太子を睨みつけていた。
『そうか』
ハインリッヒ殿下は静かに答えると会場に戻って行った。
知らないうちにリデュアンネは泣いていた。
何故なのかはリデュアンネ自身わからない。
わからないが、何か知らないうちに恐ろしい渦に
巻き込まれていく恐怖がリデュアンネを襲っていた。
(悔しい)
無力な自身をリデュアンネは改めて知ることとなる。
ど直球で来た。
『何のコトでしたか?』
淑女の笑みを何とか見繕い首を傾げてみせた。
『ほう‥』
(ヤバい、こいつのほぉ‥の後はまずいはず。)
『私は嘘が嫌い。些細な嘘も許さぬと言ったのを聞いておらぬか?木の上で。』
サルがニヤリと笑った。
(こわい、こいつが笑うと余計に恐ろしい。
氷の彫刻のような笑顔がこんなに恐ろしいものなのか‥どうする?どうする?)
『ドレスを着たサルですか?私は東国で毎日自室に令嬢を連れ込む下半身でしか考えられないサルしか存じませんが』
こうなったら開き直るしかない。
『ほう‥先程までは淑女の仮面を被っていたようだが、仮面はどうされた?』
『あら、大変。会場に忘れて参りましたわ』
その場を逃げる様にして離れようとしたとき、
腕を捕まれた。
『待て、話はまだ終わっていない』
待てと隣国の王太子に言われれば待つしかない。
諦めたリデュアンネはベンチに腰をおろした。
それと同時にハインリッヒ殿下はベンチから立ち上がりバルコニーに立った。
流石は王太子。夜のバルコニーで隣に腰を掛けるリスクは犯さないらしい。
サルからチンパンジーに成長したか。
『仮面を被ってまで西国王妃になりたいか?』
まるで軽蔑するかの様な視線を送られリデュアンネは切れそうになるのを必死に我慢していた。
『そこまでして王妃になりたいとは。王妃となれば国母である。その野心には感服するな。』
リデュアンネの表情を逃すまいとじっと見ながら話すハインリッヒに悟られまいと冷静を装うリデュアンネ。
『生まれ持った血か?』
我慢だ、我慢。これぐらいの事はなんてことない。
『それともアルフレッド殿下にご執心か?皆に優しい王子さまか。あなたにも優しいければ他の令嬢にも同じく優しい。今もダンスを楽しんでおいでだ。』
リデュアンネは次々に投げ込まれる暴言に耳を塞ぎたくなりつつも必死で我慢をした。
そんなこと知っている。アルフレッド殿下は皆に優しい。それは彼が王太子であるために、王子さまを演じなければならないのだ。それは今に始まったことではない。それが常なのだ。
私がどう思うとか関係ない。私は王妃になるのだ。
リデュアンネの頭の中はぐちゃぐちゃに絡みついに言葉を放つ
『所詮、駒。私たちは駒にすぎないわ。好きも嫌いもなく、与えられた環境を受け入れていかなければならない。それが貴族。それが貴族の結婚。
下半身にだらしなく、身籠った女性に責任も取らない男よりマシだわ。』
息継ぎをも忘れ一気に吐き出した。
しばらくの静寂。遠く彼方に夜会のワルツが響き渡る。
『私の名誉の為に言っておくが、彼女は身籠ってなどいなかった。それに私が令嬢を弄んでいるように思ってるようだが、私に寄ってくる令嬢は私の肩書に寄ってくるのだ。その令嬢に愛想を振りまくのか?そこまで善人にはなれんがな。まあ、アルフレッド殿下は別のようだ。でも、彼の優しさは時には罪でもあるぞ。あの優しさは誤解を招く。無駄に令嬢同士の醜い争いにもなろう。』
うるさいうるさいうるさい!
『私の預かり知るところではございませんわ』
気付いた時にはあの氷の王太子を睨みつけていた。
『そうか』
ハインリッヒ殿下は静かに答えると会場に戻って行った。
知らないうちにリデュアンネは泣いていた。
何故なのかはリデュアンネ自身わからない。
わからないが、何か知らないうちに恐ろしい渦に
巻き込まれていく恐怖がリデュアンネを襲っていた。
(悔しい)
無力な自身をリデュアンネは改めて知ることとなる。
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