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三度の再会

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かつての英雄が彫り込まれた大きな扉の前まで来たところで、テオドールはサッと後ろに下がり私を前に促した。背筋を伸ばし息を飲む。

静かに開かれた扉の向こうには、サル改め東国王太子ハインリッヒ殿下が既にソファに長い足を組みゆったりと座ってこちらを眺めていた。
私は急いで膝を折ろうとすると、
『よい、気を楽に』とソファに促してきた。
蛇に睨まれたカエルの様な状態から、私を救って下さったのは、あのかつての英雄であった。

部屋中に飾られている皇帝の絵姿に魅了されている私に、ハインリッヒ殿下は軽く咳払いをした。

(いけないいけない、初めが肝心)

私はお飾りであろうと私らしくこの地で生きていかなければならない。かつての英雄から力を与えられた気分になってきた私は自然とファイティングモードとなっていた。


『私を恨んでおるであろうな』
私の表情を読み取るが如く投げられた球を私は私らしく返した。

『恨んでなんておりませんわ。ただ、サルが大嫌いなだけですの』にっこりと淑女スマイルを見せてみた。
このスマイルで首を傾げてみせると、昔から大概な事は許されてきたのだ。いわゆる秘密兵器みたいなもの。

一瞬目を見開いたハインリッヒ殿下はすぐに
『ほぉ‥』

ヤバい!こいつの、ほぉ‥はあかんやつだ。

『私も生憎ドレスを来たサルが苦手でね。ここにはサルが二匹でケンカなどせぬと良いがな。』

相変わらずの氷の笑みを浮かべながら、
『早速で悪いのだが、明日簡単に式を済ます』

別に、一生に一度の結婚式に夢を見ている訳ではないので、簡単で結構だ。

『構いませんわ』
お飾りの王妃になる女との結婚式なんぞ、事務的で結構だ。べつに白いフリフリのドレスに憧れてなんていないし‥





翌日、期待を裏切らない簡素な式を迎えた。
教会で誓いを立てるだけの、介添人も居なければ祝福してくれる人などだれも居ない。
シンプルな白いワンピース姿の自分を見て、今置かれている状況を嫌でも理解させられた。

それでもテオドールは泣いている。‥何で?何の涙?お前は親か!それとも不幸の主に対しての涙か?おい!



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