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王命
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閉じた瞳をまたゆっくりと開く王妃。
『私は貴方を心から愛しておりました。』
西国国王もそれに応える様に
『私もだ。私にもう少し力があれば‥すまない』
アルフレッドは我が身と重ねて複雑な面持ちとなる。しびれを切らしたオブライアン公爵は
『そんな事を聞いているのではありません』
『私は本当に西国でハインリッヒを産みたかったのです。ハインリッヒは‥』
『私の子だ』
重い扉が開かれ、東国国王が入ってきた。
『間違いなく私の子だが、問題があるか?』
一斉に立ち上がり礼を取る。
『アンネ、そんな所に隠れてないでこちらに来い』
手招きしリデュアンネと一緒にソファに掛ける。
『失礼ながら申し上げてもよろしいでしょうか?』
オブライアン公爵は冷や汗を流し問うた。
『今更失礼も何も無いであろう。申してみよ。』
『西国国王と愛し合う王妃をお許しになられるのですか?』
『くだらぬ。この世界に政略結婚は珍しくあるまい。』
『ですが。真実は置いておいて、このような噂はあっという間に広がり、やがて国を揺がす事となるでしょう。ここにおいでになる方で生粋の東国の血をお持ちなどは貴方様のみにごさいます。西国の子かも知れぬ王子よりも相応しい方を置かれた方が』
饒舌に語るオブライアン公爵を遮り陛下が口を開く
『静まれ。』
低く重い声。
リデュアンネは初めて見るウィル改め陛下の表情に固まった。
(‥親子だわ。)
『先程から黙っておれば聞いておれば‥不敬の数々。お前如きに心配される東国ではない。その噂とやらを流してみたければ流せばよい。何なら私から流してやろうか?そんな噂に左右されるのは西国の低俗貴族のみであろう。我が国の民を侮辱するな。』
沈黙が続く。
『アレク、この事態どうするのだ?』
国王はニヤリと笑い西国国王を愛称で呼び問うた。
『愚息はやはり私にそっくりでございました。』
親しみを込めた笑顔を咲かせた。
そしてかつて愛する婚約者を手放した自分と同じ様にリデュアンネを、手放したアルフレッドを見た。
『父上‥』
アルフレッドは視線を落とした。
『きっかけはどうあれ、大事なのは今である。私も王妃とは政略結婚であった。アレクとの事も全て受け入れた。アレクと王妃の帝国復活の志も強い絆も、確かに若い私は辛かった事もあった。だが私は王だ。生まれた我が子をアレクの子供かと疑心暗鬼になった事も事実だ。だがな、成長していくハインリッヒを見て確信をしたのだ。間違いなく私の子だと。幼い頃の私とそっくりであった。そして愛する者を手に入れ幸せにしようとする姿、私とそっくりではないか?なあ、キャシー?』
王妃を見つめる殿下の表情はリデュアンネの知るウィルであった。王妃は静かに微笑み
『はい、瓜二つにございます。私も正直アレクとの子を望んでおりました。生まれてきたハインリッヒを見てアレクと重ねておりました。アレクにそっくりであって欲しいという願いがハインリッヒを追い込んでしまった事でしょう。私は後ろめたさから孤立しまだ幼いテオドールに縋り共にハインリッヒを見守っておりました。ですが事情を何も知らないテオドールはある日私にこう言いました。ハインリッヒは自分にそっくりだと。絶望した孤独な私を救ってくれたのは、毎日部屋に届く色とりどりのお花でした。毎日それが楽しみで、枯れてもいないのに取り替えられる花々をドライフラワーにして大切にしておりました。いつしかそのお花を一緒に愛でておりましたのが陛下でしたわ。』
『母上‥私はお二人が仲睦まじい姿を見たことがございませんが‥』ハインリッヒは言葉をこぼした。
『あら、それは帝国復活の為ですわ。ねえ、ウィル?』
王妃は陛下を見つめる。
『あぁ、だから私は絶賛病中なのだ、な?アンネ?』
いきなり振られたリデュアンネは
『はい、陛下には泥がお似合いですわ』
『アハハ!そうか。』
大きく笑い、そして声を下げ静かに話しだした。
『ハインリッヒ、母から西国国王と母の志を聞きさぞや苦しんだであろう。母のためにも必死に揺るぎない力を持つべく精進しておる姿を頼もしくも申し訳なくも思っておった。父として己と同じプレッシャーを追わせる事に私も辛かった。だがな私が王として苦しんだ様に、お前の辛かった日々は決して無駄ではないぞ。今をみよ。』
陛下はリデュアンネを見た。
(わたし?)
リデュアンネを見つめるハインリッヒは、
『仰せの通りですね。ありがとうございます。』
家族の蟠りが溶けたひとときであった。
誰も口を挟めない。
静寂な広い部屋に再び威厳ある声が響く。
『ここに東国の元、帝国を復活させる事を宣誓する。東国と西国はオリビア帝国とする。そして私は王座を王太子に譲り、王太子を、即位させる。帝国復活の日まで精進せよ』
一斉に立ち上がり最上級の礼を取る。
『で?この者どもは?いかがする?』
ハインリッヒが、アレクに問う。
『お任せ下さい』
アレクもまた誰よりも帝国復活を夢見ている1人だ。今回の事ももちろん事前に把握していた。わが子であるアルフレッドの愚かな計画もまた想定通り。その狭間で悩み苦しんできた。それでもアレクは父親の前に西国国王である。
『そなたの息子のお任せ下さいから今回の事が起こったのだか?』軽く笑う。
アレクはゆっくりと息を吐くと、国王に微笑み返し軽く頭を垂れる。
『では、失礼して。』
アレク国王が手を上げると一斉に西国護衛が入って来る。宰相のトゥモルデン公爵筆頭に‥
『!お父様~』
寡黙な宰相は一瞬リデュアンネに微笑み
すぐにオブライアン公爵を拘束した。
『オブライアン公爵、覚悟しておけ』
アレク国王の声は大きく響き、オブライアン公爵は項垂れた。
『私は貴方を心から愛しておりました。』
西国国王もそれに応える様に
『私もだ。私にもう少し力があれば‥すまない』
アルフレッドは我が身と重ねて複雑な面持ちとなる。しびれを切らしたオブライアン公爵は
『そんな事を聞いているのではありません』
『私は本当に西国でハインリッヒを産みたかったのです。ハインリッヒは‥』
『私の子だ』
重い扉が開かれ、東国国王が入ってきた。
『間違いなく私の子だが、問題があるか?』
一斉に立ち上がり礼を取る。
『アンネ、そんな所に隠れてないでこちらに来い』
手招きしリデュアンネと一緒にソファに掛ける。
『失礼ながら申し上げてもよろしいでしょうか?』
オブライアン公爵は冷や汗を流し問うた。
『今更失礼も何も無いであろう。申してみよ。』
『西国国王と愛し合う王妃をお許しになられるのですか?』
『くだらぬ。この世界に政略結婚は珍しくあるまい。』
『ですが。真実は置いておいて、このような噂はあっという間に広がり、やがて国を揺がす事となるでしょう。ここにおいでになる方で生粋の東国の血をお持ちなどは貴方様のみにごさいます。西国の子かも知れぬ王子よりも相応しい方を置かれた方が』
饒舌に語るオブライアン公爵を遮り陛下が口を開く
『静まれ。』
低く重い声。
リデュアンネは初めて見るウィル改め陛下の表情に固まった。
(‥親子だわ。)
『先程から黙っておれば聞いておれば‥不敬の数々。お前如きに心配される東国ではない。その噂とやらを流してみたければ流せばよい。何なら私から流してやろうか?そんな噂に左右されるのは西国の低俗貴族のみであろう。我が国の民を侮辱するな。』
沈黙が続く。
『アレク、この事態どうするのだ?』
国王はニヤリと笑い西国国王を愛称で呼び問うた。
『愚息はやはり私にそっくりでございました。』
親しみを込めた笑顔を咲かせた。
そしてかつて愛する婚約者を手放した自分と同じ様にリデュアンネを、手放したアルフレッドを見た。
『父上‥』
アルフレッドは視線を落とした。
『きっかけはどうあれ、大事なのは今である。私も王妃とは政略結婚であった。アレクとの事も全て受け入れた。アレクと王妃の帝国復活の志も強い絆も、確かに若い私は辛かった事もあった。だが私は王だ。生まれた我が子をアレクの子供かと疑心暗鬼になった事も事実だ。だがな、成長していくハインリッヒを見て確信をしたのだ。間違いなく私の子だと。幼い頃の私とそっくりであった。そして愛する者を手に入れ幸せにしようとする姿、私とそっくりではないか?なあ、キャシー?』
王妃を見つめる殿下の表情はリデュアンネの知るウィルであった。王妃は静かに微笑み
『はい、瓜二つにございます。私も正直アレクとの子を望んでおりました。生まれてきたハインリッヒを見てアレクと重ねておりました。アレクにそっくりであって欲しいという願いがハインリッヒを追い込んでしまった事でしょう。私は後ろめたさから孤立しまだ幼いテオドールに縋り共にハインリッヒを見守っておりました。ですが事情を何も知らないテオドールはある日私にこう言いました。ハインリッヒは自分にそっくりだと。絶望した孤独な私を救ってくれたのは、毎日部屋に届く色とりどりのお花でした。毎日それが楽しみで、枯れてもいないのに取り替えられる花々をドライフラワーにして大切にしておりました。いつしかそのお花を一緒に愛でておりましたのが陛下でしたわ。』
『母上‥私はお二人が仲睦まじい姿を見たことがございませんが‥』ハインリッヒは言葉をこぼした。
『あら、それは帝国復活の為ですわ。ねえ、ウィル?』
王妃は陛下を見つめる。
『あぁ、だから私は絶賛病中なのだ、な?アンネ?』
いきなり振られたリデュアンネは
『はい、陛下には泥がお似合いですわ』
『アハハ!そうか。』
大きく笑い、そして声を下げ静かに話しだした。
『ハインリッヒ、母から西国国王と母の志を聞きさぞや苦しんだであろう。母のためにも必死に揺るぎない力を持つべく精進しておる姿を頼もしくも申し訳なくも思っておった。父として己と同じプレッシャーを追わせる事に私も辛かった。だがな私が王として苦しんだ様に、お前の辛かった日々は決して無駄ではないぞ。今をみよ。』
陛下はリデュアンネを見た。
(わたし?)
リデュアンネを見つめるハインリッヒは、
『仰せの通りですね。ありがとうございます。』
家族の蟠りが溶けたひとときであった。
誰も口を挟めない。
静寂な広い部屋に再び威厳ある声が響く。
『ここに東国の元、帝国を復活させる事を宣誓する。東国と西国はオリビア帝国とする。そして私は王座を王太子に譲り、王太子を、即位させる。帝国復活の日まで精進せよ』
一斉に立ち上がり最上級の礼を取る。
『で?この者どもは?いかがする?』
ハインリッヒが、アレクに問う。
『お任せ下さい』
アレクもまた誰よりも帝国復活を夢見ている1人だ。今回の事ももちろん事前に把握していた。わが子であるアルフレッドの愚かな計画もまた想定通り。その狭間で悩み苦しんできた。それでもアレクは父親の前に西国国王である。
『そなたの息子のお任せ下さいから今回の事が起こったのだか?』軽く笑う。
アレクはゆっくりと息を吐くと、国王に微笑み返し軽く頭を垂れる。
『では、失礼して。』
アレク国王が手を上げると一斉に西国護衛が入って来る。宰相のトゥモルデン公爵筆頭に‥
『!お父様~』
寡黙な宰相は一瞬リデュアンネに微笑み
すぐにオブライアン公爵を拘束した。
『オブライアン公爵、覚悟しておけ』
アレク国王の声は大きく響き、オブライアン公爵は項垂れた。
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