どちらの王妃でも問題ありません【完】

mako

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お茶会

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カインからしつこくしつこく言われていた王宮主催のお茶会が開かれている庭には、美しく咲き誇る花華。

心地よい風も加わり最高のお茶会日和。
続々と集まってくる貴族たち。

さり気なくフローラ様を探すと奥のテーブルにいらっしゃる。流石は社交界の重鎮。多くの令嬢が取り囲んでいる。

全体を見渡し、和やかな雰囲気を確認するリデュアンネは安堵し小さく息を吐いた。

そんな中不謹慎にも、国王となったハインリッヒの出生の秘密を話す令嬢が居た。あの髪色、声、話し方‥どこかで会った事があるように感じたリデュアンネは慎重に事の行方を見守った。

『あら、そのお話しは私も聞きましたわ。なんでも西国国王がお父上様だとか?』

『ではアルフレッド殿下の兄上様となりますわね?』

『あら、西国では庶子では継承権がございませんわ』


(‥好き勝手言ってるわ。)

しかし噂の出どころは恐らく西国。元西国公爵令嬢のリデュアンネは頭の痛い話しである‥

(勘弁してほしいわ。よりにもよってフローラ様のお隣で‥)
リデュアンネは目を閉じ静観する。

(どうする?)


『では皇帝はどなたが?』

『それは、アルフレッド殿下?』

『そんな~西国有利の人事となれば大変な事になりますわよ』




『うっうん。』
リデュアンネは大げさに咳払いをしてみる。


振り返り驚く令嬢たちの中で一人だけニヤリと不敵な笑みを浮かべる令嬢。

(!あのときの令嬢だわ。)
そう、リデュアンネが木の上で息を沈めていた時の、あのハインリッヒの怒りを買った令嬢。
その人だと確信した。

『王妃!』
皆立ち上がり礼を取る。人一倍美しいカーテシーをする令嬢。名前は確か、

『リデュアンネ様、本日はお招きありがとうございます。』

令嬢の一人が失言を取り繕うように言うと皆同調する。

(愚かな。王宮であのような会話‥)

『面白いお話をなさってますね。私も混ぜて頂けません?』

『リデュアンネ様!是非是非~』

(‥ひとりアホが混ざってるわ。)

ピンクブロンドにイエローの瞳。甲高い声が特徴的な令嬢である。確か、確か‥

『セリナ様、ありがとう』
セリナ嬢の隣に腰を掛ける。

『リデュアンネ様。私をご存知で?嬉しいですぅ。それでですね、今殿下ついての密談をしておりましたの。リデュアンネ様はご存知でしたか?』

密談って‥
一斉に青ざめるも、返答には興味がありそうにこちらを見つめる。‥アホばっかだわ。


『密談ですか?さぁ、どのような?』

一旦焦らしてやる。

『ですからぁ、殿下の本当のお父上様が西国の国王なのです。そうしましたらね?殿下は皇帝になれるのか?って話しですの!ここだけの話しですよ?』

‥ここだけの話しね。そんな大きな声で。隣のテーブルの令嬢までもが息を飲むのがわかるわ。

ここでの私の返答は公となる。皆注視しているわ。
カインの顔が浮かんで来る‥

『では、私もここだけの話しですわよ。』

リデュアンネが話し出すと皆一斉に静まり返り
耳をすましている。

『私も聞きましたの。そのお話。それでね、私は元々西国王太子妃候補でしたの。どちらにしても国は違えど王太子妃となってたのね!って面白いでしょ?』

静まり返り乾いた空気が流れる‥

‥はいはい面白くも何ともありませんよね?存じております存じております。

『本当ですね~うわぁびっくりぃ。』

ガクンと左肩が落ちる。このセリナ嬢は生粋のおバカなの?

『そんな事を聞いているのではありません!』

声を上げたのはそう、赤い髪の令嬢。なんちゃってできちゃった婚を目指したこの令嬢。えっと、確かマリアンヌ様。一斉に視線を独り占めしておりますが?

『失礼いたしました。つい。』


『つい?なんですの?』
リデュアンネは声を低く問う。

『私、我が国の公爵令嬢です。我が国を心配するあまり。』

『あまり?なに?』
体裁よい言葉で逃がすか!私も伊達に西国で社交界にて揉まれてきた女よ。

『ですから西国の血を継ぐ殿下が皇帝になられたら、皇帝の人事では西国寄りに働きますでしょう?王妃は西国のご出身故、都合がよろしかもしれませんが東国にとりましては一大事ですわ。例えは、トゥモルデン公爵は西国の宰相。では我が国で宰相を務める‥』

そう言いながら宰相を務める公爵令嬢へ顔を向ける。

えっと、確かマース公爵のお嬢さんはパトリシア様?

パトリシア嬢は小さく頷き私の目を見た。

『そうですわ、我が国の宰相はお父様です。ですが帝国になればトゥモルデン公爵には負けますわ。何故なら王妃のお父様ですもの。』

‥敢えて黙ってみた。

矢継ぎ早に令嬢が口を開く

『私のお父様もですわ。我が家は候爵家ですが、どうなるのですか?』

『私の家は?』


『私の家も商家でありながら爵位を賜っておりますわ!』


‥そろそろかしら?


『静まりなさい。では問います。貴女方は殿下が西国有利の人事を取られるとおっしゃいますが何を根拠に?』

『それは王妃が西国公爵令嬢だったからですわ!』
マリアンヌ様が勝ち誇ったのように言う。

『それは何故?』

『王妃がそれを望んでおられますから。それを目論みこちらに嫁がれたのでしょう?』

冷ややかな目に晒されるリデュアンネ。

『では、貴女は殿下がこれまで行ってきた政務は全て西国の為だと?今も尚繁栄を止めることなく動いている我が国は西国の力だと仰るのかしら?』

『‥。』


『くだらぬ噂に振り回され取り乱すなど、淑女としていかがなものかしら?』

‥本当はできちゃった婚を目論むお前は淑女としてどうなのか?と問いたかったがそれは流石に飲み込んだ。

『で、ですが殿下が西国の血を引くのならば血を何より重んじる我が国にとっては一大事でございますわ!』


‥そこに戻る訳ね。

『殿下の血。何を根拠に?そんな根拠のない、それこそ噂話。そんなものを盾にどなたに訴えるおつもり?何なら殿下をお呼びしましょうか?』

青ざめるマリアンヌ。

『そこではなく、それを利用して東国に来られて皇后になる王妃について問題だと申しております。』

今度はそこかい。

『私はそのような噂、つい最近知りましたわ。もちろん西国にいた頃も聞いた事はございません。筆頭公爵令嬢の私が知らない事など社交界でも話が出た事はございませんわ。西国で噂に振り回されるなんて貴族としてあるまじき行為。そうではなくて?』

『‥』

『ついでに申し上げますと、たとえ貴女の言う西国の血が万が一殿下に流れていたとして、それの何が問題なのでしょう?オリビア帝国は東国西国両国の歴史ある帝国です。どちらの血も引いていないのならばともかく、どちらかの血を引くのならば問題ございましょうか?』

『あるわ!』
もはや感情的になってあるマリアンヌ嬢。
そんなにまでこの座を狙っていたのね。

『マリアンヌ様、貴女はご自身とご実家の保身の為にそう仰るのですか?』
少し意地悪く問う。

『違います!皆思っておりますことを私が代弁してるまでですわ!』


あらあら、皆を巻き込むのね。
ゆっくりと周りを見渡し再びマリアンヌ嬢に視線を戻す。
『マリアンヌ様はご存知ありませんか?オリビア帝国のかつての英雄が出生され過ごされた場所、それは紛れもなく西国に位置する所。そして王宮を構えた所が東国に位置する所。東国と西国ももともと、関係ございません。関係があると固執するのは已の権力への保身に他なりません。もっと視野を大きく持たれてはいかがかしら?』

真っ赤になっているマリアンヌ様にピンクブロンドの令嬢セリナ様が追い打ちをかける。

『なるほど~ですから我が国の王宮にはオリビア帝国の名残が掲げられているのですね!私は王宮が少し苦手でしたの。あの圧倒されるかつての英雄の絵姿を前にすると足が竦みますぅ。そして日頃の行いの懺悔をしてしまいますの~まるで神のように思えてなりませんもの。納得納得ですわぁ。』


‥喋り方で損しているわ。この子。言ってる事はマトモなのに。何かアホっぽいのよね。

『そうでしたか!流石ですわ、セリナ様。』
大げさに褒め称えると令嬢たちは我に返った様に同調し始めた。

遅いわ!
さて、ここでのマリアンヌ様にトドメを差しても良いのですが、敢えてやめておこう。

『本当にここだけのお話ですが、噂のない所に煙は立たないと言いますでしょう?私も内々に調べ問うた事がありましたの。

噂のない所にも煙は立つものなのだと知りました。そして噂話は75日と言いますでしょう?結局は噂話は自然に消滅し、噂話に振り回された者だけが処罰されますのよ。怖いですわね‥』


静かにそして大袈裟に震える真似をしてみせた。
一気に周りが青ざめていく。

‥知ったことか!




リデュアンネは敢えてわかり易く噂話を一蹴してみせた。

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