どちらの王妃でも問題ありません【完】

mako

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兄弟愛

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長い一日を終え、ハインリッヒとアルフレッドはハインリッヒの私室でくつろいでいた。


ハインリッヒは幼き頃よりアルフレッドの様に愛嬌もなく、誰かと特別に仲が良かったという記憶が無い。側近といっても肩書に忠誠を誓う側近だと認識していたのだ。

だからアルフレッドが羨ましくも思えた。肩書関係なくアルフレッドに忠誠を誓う側近を目の当たりにし、皇帝の素質は自分よりもアルフレッドにあるのではないかとも思えた。


『アルフレッド、いやアル。お前は本物だ。人として尊敬に値するよ。』

小さく思いを吐露するハインリッヒに

『どうしました?兄上らしくありませんが?』

安定の王子スマイルにノックアウトされるハインリッヒ。

『いや、たまたま私が東国王太子であったが為、デュアンを手にする事が出来たが、この立場が他の者であれば他の者がデュアンを手にしていたのだろうな。例えばアルもその一人だな。』

美しい彫刻の様な男が遠い目をしていると、かなりの色気が漂う。

『私を誘惑しているのでしたら、あいにくその気はございませんが(笑)』

『‥』

『何とも弱気になっておいでだ。リデュはアナタの肩書に惚れ込んでいるのではありませんよ。これでも元婚約者ですから

って何で私が貴方を慰めているのですか!こちらが慰めてもらいたい位ですよ』

『きっとデュアンも今日のアルを見たら惚れてしまっていたよ。』

『ではお返しして頂きましょうか?』

『出来ない‥』

子犬の様になってしまっているハインリッヒをしばらく見つめるアルフレッド。

普段の氷の表情から一転しこの表情。これは落ちる。だれでも落ちる。分かっていないのは本人のみか‥ニヤリと笑うアルフレッドに

『嫌だからな。そもそもアルには妃がおったではないか!あれはどうしたのだ?』


『どうしたって、貴方が処罰を求めたのでしょう?既に公爵家もありませんよ。』

余りにお酒に酔うのが早すぎだろ?

『そうだそうだそうだったな。あれはなんちゃって聖女だったろ?あいつは駄目だな。アルにはもっと良い女がおるはずだ。』

酔っ払いはウザい‥

『余計なお世話ですよ‥』

そこへいつもと違いラフな格好になっているテオドールが合流した。

『ハインリ、しっかりしろ』

テオドールがソファに横たわるハインリッヒを起こす。

『全く、いつもはこんなにはならないのにどうした?』

『いや、リデュを手に入れられたのは東国王太子だったから?みたいな具合になりまして、それで元婚約者の私の傷口をえぐっております』

グラスを優雅に傾けるアルフレッド。

『何を見当違いな事を。まずスタートから違うだろう?アルフレッドには西国の公爵令嬢としての仮面装着で接している。

ハインリッヒにはサルという醜態を晒してしまい、仮面装着不可の状態で接している。

この段階でアルフレッドには勝ち目は無い。どちらがお嬢様の好みとかではなく、アルフレッドに関してはスタートにも立ててないのだから。』

スラスラと話すテオドールに

『もっとオブラートに包むとか出来ませんかね?これでも既に傷口をえぐられて弱っている所なのですが‥』


『そうか、でもな?もしお嬢様が公爵令嬢の仮面を外したままでアルフレッドは恋に落ちただろうか?

そもそもアルフレッドの知るお嬢様は、美しい令嬢で控え目で聡明で天使の様な令嬢であろう?』


頷きながら
『周知の事ですね。』


『だが、本来のお嬢様はそうではない。

例えば西国でアルフレッドの王妃となっていたとしたらお嬢様は本来の姿ではなく、仮面を付け続けなければならない。

しかし残念な事にお嬢様にはその忍耐力が無いのだ。いずれアルフレッドも本性を知る事になる。』


『‥本性って

ではその本性とやらを兄上はご存知だったのですか?』


ソファに横たわるハインリッヒに声を掛けるが答えるのはもちろんテオドール。

『いや、むしろそれしか知らんだろうよ(笑)』

『‥そんなのズルくない?』

王太子らしからぬ一言にテオドールも苦笑いをしながら


『だからこれは運命なのさ。

ってかさ、アルフレッドは天使の様な女を好むであろう?王妃が木に登って昼寝してたらどうよ?

ひっくり返るだろ?冷めるであろう?そうなれば夫婦は末路。一緒にならず良かったのではないか?』



『‥リデュが?木に登るの?』

言葉が続かないアルフレッドに、ハインリッヒは急に勝ち誇った様に起き上がる。

『ならばどちらにせよ、良かったな』

グラスを一気に空けるアルフレッドの肩を抱き寄せた。

『まあ、飲もう』
テオドールは珍しく優しく声を掛ける。

テオドールは西国でアルフレッドを見てきていた。
弟であるハインリッヒと肩を並べるアルフレッド。

もちろんハインリッヒはかわいい。
むしろ恋敵でもあるアルフレッドであったが、彼の王族としての素質は高いと評価していた。だが兄弟もなく孤独なアルフレッドは致命的な弱さもまた隣り合わせであった。

そんな2人がこれから帝国を導いていくという現実に心から嬉しく思っていた。
そして心地よく酔う二人に衝撃な一言を浴びせてみた。


『そもそも立場など無関係ならば、お嬢様を手に入れたのは私であっただろうな。』


『『はぁ?』』


一気に酔いが冷めた2人。



『だって、あの美しさだよ。
それなのに本人無自覚(笑)
それでいて公爵令嬢としての品格はある。
脱着式ながらね。確かに聡明だし、心根も優しい。天然だけどアホじゃない。

ってこんな令嬢見たことある?』


『‥‥‥』

『で、でもさ、テオはリデュに毛嫌いされてない?』

『そりゃそうさ。私は東国第1王子だよ?使命があったからね。嫌な役回りを進んでしたよ。だけどそんなの関係なく出逢ってたなら、私も本気で落としに行ってたよ。

そうしたら結果は変わってたと思うけど?』

『‥‥‥』

『‥‥‥』



『それに2人よりお嬢様の事は熟知している。2人相手だと王妃にならなければならない為制限もされるだろう?その点私は、たかだか東国第1王子。
そんな心配は無用だし?それなりの生活も保証されるわけ。西国公爵令嬢よりは豊かに暮らせる。何ならお嬢様専用の森まで用意出来るし、ジャングルジムだって部屋に置けるさ。』


『ジャングルジム程度なら私でも』
張り合うハインリッヒ。
テオドールはアルフレッドを見て

『無理だろ?』

『‥‥‥ジャングルジムってあれだろ?子どもが‥』
悩む必要の無い悩みに頭を悩ませる。

『で、でもさ、私は誰よりも長く婚約者だったのだからテオよりもリデュを知っているつもりだよ』


何とか反撃を試みるアルフレッドをあざ笑うかのように、

『所詮子どものおままごとの延長だろ?私はお嬢様がお風呂でのぼせた時には介抱までやってたぞ。』

『‥‥‥お風呂』

想像するアルフレッドの頭上をかき消す様に手を降るハインリッヒ。

『やめろ!想像するな!』

『良いではないか?なあ、アル?ついでに教えてやろう。お嬢様はな、サルの如く身軽だ。知っての通り華奢だろ?だからな残念なことに胸の発達が乏しいぞ。』

『‥‥胸、確かに腰を抱く際はびっくりするくらい細かった‥』


『おい!おまえらその辺にしとけよ。不敬罪で捕らえるぞ。』


『兄上。で?実際どうなのです?』
真剣に問うアルフレッド。



『どうって‥まあ、私はあまり大きいのは好きではないからな‥』
これまた真剣に答えるハインリッヒ。




酔っ払い3人の横の部屋では、当のご本人様はすっかり夢の中であった。
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