貴方に嫌われたくなくて【完】

mako

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帝国へ

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大陸の南に位置する小さな国、サエラ王国。サエラ王国には2人の王子と3人の王女が全て同じ血を引き皆、美男美女としてその名を大陸に轟かせいた。



毎年この時期になると各国が帝国へ集結するが今年は帝国で、皇太子のお妃選びを兼ねているとかいないとか…。そんな訳でサエラ王国からも3人の王女らが共に帝国へ入っている。


ここでは淑女の象徴としてデビュタントを迎えた令嬢らは皆、原色のドレスに真っ赤なルージュを引く事がセオリーである。

第1王女のエリーナもまた真っ赤なドレスに美しい金髪をアップにし首元には小さなパールが控え目にその美しさを放っている。

第2王女のセリーヌはこれまたターコイズブルーのドレスに金髪をハーフアップにし真っ赤なルージュを引いていた。


『お姉様、このドレスにパールは合わないわよね?』


セリーヌはネックレスを首元に当てながら鏡越しにエリーナを見るとエリーナは宝石箱の中からシルバーの大ぶりな三連ネックレスを持ってセリーヌの首元に当てる。

『これはどうかしら?』


流石のエリーナの見立てにセリーヌは満足気に微笑んだ。


『素敵ね。ってリディアンネ。貴女やる気あるの?』


セリーヌはため息を落とした。

それもそのはず、リディアンネは原色ドレスではなくクリームベージュにゴールドの刺繍が施されたドレスを纏っている。


『お姉様、このドレスは上等な物ですわよ?』


『見ればわかるわ。でもね貴女今日はそんな事はどうでもいいの。そんな地味では多数の他国の王女に霞んでしまうわよ?』


セリーヌがいつものようにお説教を始めると珍しくエリーナも同調し


『リディ、いい?わが国から帝国皇太子妃の椅子のチャレンジ券は3枚しかないのよ?』

3枚とは王女の数である。


…3枚もあれば十分じゃね?


リディアンネは怪訝そうにエリーナを見ると


『3枚もじゃないの!他国からは側妃の娘までも片っ端から寄せ集めて参加しているのよ?』


…数打ちゃ当たるってか?


『何が何でも、サエラ王国から帝国皇太子妃を排出するべく、私達はここにいるの。わかるわね?』


リディアンネは辟易としながら強張りながらも2人の姉からの圧力に頷く他無かった…。


…やれやれ。




リディアンネは皇太子妃など興味もないが、大人しく帝国入りをしたには別の企みがあるのだ。

リディアンネは帝国の皇太子ではなく、皇帝の弟で大公の息子であるアルフォンス・ワイオットがお目当てなのである。そんな事は口が裂けても言えないがリディアンネはこの日を心待ちにしていた。



リディアンネは鼻歌を歌いながら美しい金髪ストレートをダウンスタイルで挑む事に決めたのである。
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