貴方に嫌われたくなくて【完】

mako

文字の大きさ
9 / 47

緊迫する時

しおりを挟む
リディアンネは目の間に並ぶ侍女らに向って強張りながらも笑顔を作るがその笑顔こそが侍女らをますます固くさせている事に気づいてはいない。


しばらくの沈黙の後リディアンネは意を決したかのように立ち上がると深々と頭を下げた。





侍女らは驚き目を見開くと、このパフォーマンスの意味を裏の裏まで考えていると


『同じ女性として聞くわ!あなた達は少なくとも私より知識を持っているはず!だからこの通り!教えて!』


目をパチクリさせる侍女らに尚も



『王族のくせにと笑っても構わないわ!ね?意地悪しないで教えて!』



…え?

…王女が頭を下げているけど

…何を?


侍女らは様々な事を思いながらルイザが口を開いた。


『先ずは頭をお上げ下さい』


恐る恐る頭を上げるリディアンネ。



『それで何をお聞きになりたいのですか?』


リディアンネはバツが悪そうに


『初夜…の嗜み?』





キタ!


侍女らに一斉に緊張感が走る。

リディアンネはここまで話しをして気が楽になったのか


『緊張したわ。先ずはお茶にしましょう。うんと甘いお菓子もね。それからお茶は6人用よ。さぁ急いで!』


侍女らは理由もわからず言われた通り用意をしテーブルに並んだ。





『お恥ずかしい話しなんだけど、私は第3王女でしょ?初夜のアレコレなどはお姉様たちから伝授するつもりだったのね?だけどほら?何がどうしたのか私が初っ端となったの。ね?わかる?何も知らない私がよ?』


砕けた物言いのリディアンネに呆気に取られ固まる一同に


『緊張してるわね?さぁ先ずはお茶でも飲んで肩の力を抜くのよ』


…いやいや貴女は王女、緊張もするよ。


何故だがお茶を飲まされ王女から勇気づけられている風になっているではないか。



『それでアルフォンス様とは?』


リディアンネが一連の話をすると


『それではいつまで経ってもお二人はすれ違いですね?』


『どうゆう事かしら?』


『アルフォンス様の朝はお早い。リディアンネ様の夜もまたお早い。お二人が今顔を合わせられる事は滅多にございませんもの』



…私はコソッと覗き見してるけど



『そうね。だから先ずは初夜の心得を習得して乗り込むのよ。』


『乗り込む!?』


侍女の1人アンと名乗る者が思わず声を上げた。


『何?おかしいの?』

アンは思い切りお茶を飲み干すとリディアンネがサービス精神旺盛で自らお茶を注ぎアンに促す。

まるで宴会で上司に酒を進められているみたいだ。


『いえ、おかしくはないですが、その、今はまだ心得がゼロなのですよね?いきなりハードル上がっちゃいませんか?』


リディアンネは顎に指を添えながら


『それもそうね?ではどうする?』


もはやチーム戦である。



『でも何故、アルフォンス様はリディアンネ様に触れなかったのでしょうか?アルフォンス様はリディアンネ様の心得が無い事はご存知ないはず。それに例え心得が無くとも事は成せるはずでしょう?』


今度はアンとは異なり知性で物を言うサーシャが口を開いた。サーシャの方へ向き直したリディアンネは


『それもそうね。…ってことはわたくしに魅力が足りない?っ事よね。』


ハッとする侍女らの心配を他所にリディアンネは己の胸をもみほぐし


『足りないか…』


一同はガクッと崩れそうになるも


…そこ?


『そんな事はございません。アルフォンス様には何かお考えかあるのかもしれません。』


リディアンネは腕組みをしながら


『これは長期戦になるわよ?覚悟はいい?』


侍女らは揃って頷いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...