貴方に嫌われたくなくて【完】

mako

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充実した日々

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アルフォンスはユリウスの言葉に酷く落ち込むも執務の段取りを見直し出来るだけゆっくりと登城するようになり朝食をリディアンネと取るように努めていた。


リディアンネもまたチームリディアンネとの協議の末、子どものように早く寝る習慣を改めてアルフォンスの帰りを待つようになっていた。


リディアンネは憧れのアルフォンスとの時間を心待ちにしアルフォンスもまた初恋のリディアンネとの時間を楽しみにしていた。もはや2人の中では初夜の事など消えてしまっているかのようだ。


そんなある夜、アルフォンスの帰りを待っていたリディアンネは私室から出て玄関へ向っているとチームリディアンネの1人で名をサラという一番若い侍女が1人片隅に座り込んで泣いているのが見えた。


サラはリディアンネを見ると慌てて顔を擦り立ち上がる。


『そのままでいいわ。』

リディアンネはサラの隣に座り込んでみせた。


王女が床に座り込んだのを驚きながらもサラは隣に恐る恐る座った。


『で?どうしたの?サラ。』


サラは今まで直接話をした事など無かったはずなのにリディアンネが自分を名前で呼んだ事に驚いた。


リディアンネの笑顔に不安が溶かされる感覚を覚えたサラは重い口を開き語りだした。一連の話を聞いたリディアンネは


『なるほどね。要はサラは単刀直入に言うと貧乏な男爵家で借金の代わりに伯爵家に買われるって事ね?』


サラの長い話を端的にまとめるとそうなるのである。


『はい…。』



『サラ、貴女やるわね?』


サラは首を傾げると


『だってここは大公家よ?その侍女に男爵令嬢が成り上がるだなんて余程貴女が優秀ってことよ?それを伯爵家ごときが金で買おうだなんて許せないわ!で?いくらなの?』


『え?』


『その借金よ。』


憤るリディアンネにサラは恥ずかしそうに

『500リロンです。』


固まるリディアンネに


『お恥ずかしい限りで…』


『違うわよ。今サエラ王国とのレートを換算してるのよ…分かった。では貴女はこの事を私に話した事を忘れなさい。いい?ここで私と会った事も忘れるのよ。』


リディアンネがいつもの砕けた感じではなく、一国の王女としての風格で言い放つとサラは恐る恐る頷いた。




翌日、帝国にあるサエラ王国のハウスに滞在しているジュールが大公家にやって来ると侍女らを集め嬉しそうに紹介をするリディアンネ。


すっかり手なづけられた侍女らにジュールは微笑みながら


『ジュール・フランドルと申します』


ジュールの微笑みに既にアンはノックアウト。


ジュールはリディアンネに一つ頷くとリディアンネは大袈裟に笑顔になり


『あのね?今日はみんなは私が王女として身につけてここに入るべきであった初夜のアレコレ。そのせいでみんなには本来の業務以外の事までお願いしているわけよね?だから臨時ボーナスを出そうと思って。』


『そんな!』


驚いたルイザを制するように


『大丈夫、大公家から出すわけじゃないから。そもそも王女として至らないところを補填してるんだから。』


『尚更です!サエラ王国からとならば…』

リディアンネは人差し指を横に降りながら


『それも大丈夫。サエラ王国から出すのでもないの。全て私の個人資産からだから誰にも文句は言われないわ。でも、ほらお優しいアルフォンス様はそれでも黙っていないと思うの。だからここは私からジュールへ。そしてジュールからみんなに支払うってことね。』






ますます分からない侍女らに



『そうね、表向きジュールへの指導料とでもしましょうか。』


うんうんと1人納得するリディアンネにジュールは


『何の指導ですか?』


怪訝そうに見るジュールの視線を跳ね返すように

『そうね…そりゃあ、貴方。初夜の嗜みよ。』


ひっくり返るジュールに


『貴方より彼女たちの方が色々凄いわよ♡ご教示願ってみたら?(笑)』


ジュールは咳払いをすると


『王女、こう見えても私もなかなか…って何を言わせるのですか!』


一斉に笑いが起こるチームリディアンネ。


『王女、ではおいくら?』


リディアンネはニコリと笑うと



『そうね、1人500リロンでお願いするわ。』


『承知しました。』


ジュールは王女に最上級の礼を取ると急いで仕事に着手した。







驚きを隠せない侍女ら。リディアンネは侍女らに視線を流し、一番最後のサラに静かに一つ頷いた。


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