貴方に嫌われたくなくて【完】

mako

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皇太子の苦悩

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リディアンネは目の前に広がる庭園に吸い込まれる様に中に入っていくと、木の柵の向こう側からの声に耳を奪われた。


『皇太子妃はまだ決まらんのか?』


『モンタナ王女の1択であろう?』


『早く話を進めろ!』 


リディアンネは姿こそ見えないが3、4人いやもっと居るかもしれないが男達の声に顔を歪めた。


…なんて勝手な事を。そもそもこんな所でこんな話をしていて大丈夫なのか?それこそ皇太子の耳にでも入ったら不敬であろう。


リディアンネは来た道を帰ろうと振り返ると

…うわぁっ


ユリウスが人差し指を鼻の前に立て、声を出さぬようにと頷いた。


リディアンネの頭の中は高速処理を行うも、ただ黙って頷くしか出来ない。どれだけの時間だろうかリディアンネは微動だにせず固まっていると、やがて男達の声は遠くなっていった。




…。リディアンネはユリウスの顔を覗き込むとユリウスはハニカムように笑うと



『散々だろ?』


短く答えると側のベンチに腰を降ろした。


リディアンネは対応に倦ねていると


『慰めは要らないよ。…そうだな君は帝国の皇太子妃には誰が相応しいと考える?』


リディアンネは目の前のユリウスが今まで抱いていた印象と異なる様な気がした。もちろん慰める事なんてしないし、出来るはずもない。


辺りを見渡すとユリウスに


『殿下は、大公家の嫁取りとしてのお答えと私個人としてのお答えとどちらを?』


ユリウスは小さく笑うと


『もちろん、君自身の。サエラ王国第3王女であった君はのね。』


リディアンネは笑顔になり


『では殿下、今から殿下のお耳は休暇中ですよ?私は独り言を話しますから。』


ユリウスは呆れたように頷いた。


『先ずはサエラ王国の2人の王女は、早々に帰すべきですわ!』


『干渉が入るか?』

『お耳は休暇…ってまあ、いいわ。違います。あの2人に帝国皇太子妃は無理かと。ただでさえ皇女だらけの皇室に争いの種を巻き散らかしますわ。』



…。


ユリウスは頭を巡らせている。



『それからモンタナ王女ですが、先程の方々のイチオシのようですが、そもそもそれはモンタナ王国の財を求めておられるのでしょう。

財政を圧迫しているのは皇族の数です。それを補うにも補い続けるにはいつか限度がきます。ならば縮小し支出を削減するほうが先ですわ。』



…。腕組みをし考え込むユリウス。



『後は、どなたでも一緒でしょう?殿下がピンとくるお方がいらっしゃればその方を。居ないのならば即刻みなさんを帰されるべきかと。』



ユリウスは難問を出題するかのように


『ならば皇太子妃は不在で良いと?』


リディアンネは難問を解いたように


『いいえ、ですがそれを案じるのは時期尚早。事を急ぎすぎると、とんでもないハズレを引くことになりますわ。皇族や貴族らは自身の保身のために急いでいるだけです。

政略結婚ならばそれ相応の方を、万が一殿下が真実の愛と巡り合われたのであればそれは尚、良しということでは?』


リディアンネは大きな瞳をキラキラと輝かせユリウスを見た。そのまっすぐな視線をユリウスは受け取る事を憚るように視線をそらすと、スッと立ち上がり静かにそこを後にした。


『ありがとう。王女の話しが聞けて良かった…』


その一言を残して…。

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