31 / 47
怒りを露わにするユリウス
しおりを挟む
夜会から戻った翌日、リディアンネはジュールに即刻にサエラに戻る準備を命じた。
慌ただしく動き出す屋敷にいきなりユリウスがやって来たとの知らせが届いた。リディアンネは
『時間が無いわ…お帰り頂いて。』
ジュールに答えると既にジュールはユリウスを案内していた所であった。
仕方なくリディアンネは応接間にユリウスを通すと2人はソファで向かい合った。
『何をしている?』
ユリウスの単刀直入の問にリディアンネも
『見ての通りサエラ王国に帰る準備をしております。』
『許さないと言ったはずだが?』
珍しくユリウスは怒りを露わにリディアンネを見た。
『許すも許さないも無いですわ。私はサエラ王国王女ですのよ?いくら帝国の皇太子であろうがそのような権限は無いはずです!』
リディアンネの言葉に悲しそうな表情のユリウスは
『私は皇太子の権限で言っているのでは無い。』
ユリウスの真っ直ぐな視線を受ける事が出来ずにリディアンネは目を逸らした。
『何がどうなった?』
リディアンネは視線をユリウスに戻すと
『悪女になるのは疲れたのです。』
リディアンネを直視しているユリウスは
『違うね。私はこう見えても帝国皇太子だ。嘘など通じないよ?』
…。
押し黙るリディアンネから視線を外さず見つめるユリウスに観念したかのように
『…無いのです。私には。』
ゆっくりとリディアンネの言葉の余韻までを感じながら
『何が?何が無い?』
リディアンネは大きく息を吐くと
『私はもう、純血ではありません。』
そんな事、とっくに知っているかのように
『それが?何なら私も既に済ませているが?』
敢えて間髪入れずに答えるユリウス。
『殿下とは違いますわ…』
悲しそうに俯いたリディアンネにユリウスは
『リディアン、問題はそこではない。今、私がリディアンにここに居てもらいたいのは、時間が必要だからだ。万が一、その…。』
珍しく言葉を濁すユリウスをリディアンネは顔を上げて再び視線を合わせた。
『万が一アルとの子どもを身籠っていたならば、生まれてくる子どもの未来が異なる。もちろん私はアルの子を生むリディアンを支える。だけど生まれてくる子どもの未来は私ではどうにもならないからね?』
いつか元令嬢にリディアンネが話したように離縁してから1年未満に再婚する事が出来ない理由がこれだ。貴族でも大変なのだから皇族ともなれば尚更である。
リディアンネは自らのお腹を手で擦りながら瞳を閉じた。その様子を優しく見守りながらユリウスは
『リディアン、他から入るとまた複雑になるから言うけど、私は妃選定に残っていた王女らを帰したよね?それで皇宮では様々な噂が飛び交っているんだ。
だからこの時期にここに来るのも本来ならばタブーだ。結果リディアンに迷惑を掛ける事になるからね?
だけど当のリディアンが帰っちゃったら意味がないから慌てて飛んできたけど、恐らく私がリディアンを妃にしたいと思っていることは、敵対派閥にはバレたと思う。
それこそ本当に帰りたくなっちゃう位の事は起こるだろうね。でも必ず私が守るから。信じてほしい。』
ユリウスの言葉にリディアンネは思わず
『…ユーリ。』
!
『思い出してくれたの?リディアン!』
とっくに思い出しているなんて言えないリディアンネは目をシロクロとさせ俯いた。
『リディアン、私はもう遠慮する事なんて無いから全力でリディアンを娶りにいくよ。』
リディアンネはユリウスに握られた手に幸せを感じながら
『サエラ王国に帰りたくなっちゃう事って何かしら?』
ユリウスは嬉しそうに笑いながら
『流石はリディアン。そこ?』
…むしろそこしか無いでしょう?
2人はケラケラと笑いあった。その様子を安堵の笑みで見守るジュールはすぐに帰る準備の中止を屋敷内に命じたのである。
慌ただしく動き出す屋敷にいきなりユリウスがやって来たとの知らせが届いた。リディアンネは
『時間が無いわ…お帰り頂いて。』
ジュールに答えると既にジュールはユリウスを案内していた所であった。
仕方なくリディアンネは応接間にユリウスを通すと2人はソファで向かい合った。
『何をしている?』
ユリウスの単刀直入の問にリディアンネも
『見ての通りサエラ王国に帰る準備をしております。』
『許さないと言ったはずだが?』
珍しくユリウスは怒りを露わにリディアンネを見た。
『許すも許さないも無いですわ。私はサエラ王国王女ですのよ?いくら帝国の皇太子であろうがそのような権限は無いはずです!』
リディアンネの言葉に悲しそうな表情のユリウスは
『私は皇太子の権限で言っているのでは無い。』
ユリウスの真っ直ぐな視線を受ける事が出来ずにリディアンネは目を逸らした。
『何がどうなった?』
リディアンネは視線をユリウスに戻すと
『悪女になるのは疲れたのです。』
リディアンネを直視しているユリウスは
『違うね。私はこう見えても帝国皇太子だ。嘘など通じないよ?』
…。
押し黙るリディアンネから視線を外さず見つめるユリウスに観念したかのように
『…無いのです。私には。』
ゆっくりとリディアンネの言葉の余韻までを感じながら
『何が?何が無い?』
リディアンネは大きく息を吐くと
『私はもう、純血ではありません。』
そんな事、とっくに知っているかのように
『それが?何なら私も既に済ませているが?』
敢えて間髪入れずに答えるユリウス。
『殿下とは違いますわ…』
悲しそうに俯いたリディアンネにユリウスは
『リディアン、問題はそこではない。今、私がリディアンにここに居てもらいたいのは、時間が必要だからだ。万が一、その…。』
珍しく言葉を濁すユリウスをリディアンネは顔を上げて再び視線を合わせた。
『万が一アルとの子どもを身籠っていたならば、生まれてくる子どもの未来が異なる。もちろん私はアルの子を生むリディアンを支える。だけど生まれてくる子どもの未来は私ではどうにもならないからね?』
いつか元令嬢にリディアンネが話したように離縁してから1年未満に再婚する事が出来ない理由がこれだ。貴族でも大変なのだから皇族ともなれば尚更である。
リディアンネは自らのお腹を手で擦りながら瞳を閉じた。その様子を優しく見守りながらユリウスは
『リディアン、他から入るとまた複雑になるから言うけど、私は妃選定に残っていた王女らを帰したよね?それで皇宮では様々な噂が飛び交っているんだ。
だからこの時期にここに来るのも本来ならばタブーだ。結果リディアンに迷惑を掛ける事になるからね?
だけど当のリディアンが帰っちゃったら意味がないから慌てて飛んできたけど、恐らく私がリディアンを妃にしたいと思っていることは、敵対派閥にはバレたと思う。
それこそ本当に帰りたくなっちゃう位の事は起こるだろうね。でも必ず私が守るから。信じてほしい。』
ユリウスの言葉にリディアンネは思わず
『…ユーリ。』
!
『思い出してくれたの?リディアン!』
とっくに思い出しているなんて言えないリディアンネは目をシロクロとさせ俯いた。
『リディアン、私はもう遠慮する事なんて無いから全力でリディアンを娶りにいくよ。』
リディアンネはユリウスに握られた手に幸せを感じながら
『サエラ王国に帰りたくなっちゃう事って何かしら?』
ユリウスは嬉しそうに笑いながら
『流石はリディアン。そこ?』
…むしろそこしか無いでしょう?
2人はケラケラと笑いあった。その様子を安堵の笑みで見守るジュールはすぐに帰る準備の中止を屋敷内に命じたのである。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
39
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる