冷酷皇帝とお花畑妃殿下

mako

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2人の王女。

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それは夜も明け切らぬうちに、静かな皇宮に響き渡った。

『ちょっと!何度も言わせないで!寒くて堪らないわ。火を絶やさぬ様に番をなさい!』


そしてサンドラ王女であるステファニーは夜明けを待ってまだ皇宮が動き出す前にすぐさまファビウスを呼び付けると

『どうなってるのかしら?この責はどなたに?』

ファビウスはメガネをそっと持ち上げると


『王女、責と言われましてもここはサンドラ王国のような温暖地ではございませんので。これはもう慣れて頂く他ございません。』


サンドラ王女は目を細めると

『貴女は他国の王女に凍え死ねと?』

『滅相もございません。ですが隣のお部屋では現にマリラン王女は何も仰らずお休みになられておりますよ?』


『どうせ成金王国の王女ですもの。ちゃっかりご自分だけ暖の取れる物をお持ちになってるのよ。

だけれど私が国へ暖を取り寄せるとなれば、マリラン王国とは異なり帝国属国としてここに参りましたのよ?おそらくは殿下のお耳にも入りましょう?よろしいのかしら?』


『それは困りましたね。何とかしなければなりませんね。』


ファビウスはそう言うと小さく笑顔を作り部屋を出た。


…知るかよ。


ファビウスが隣のフランシスの部屋を通り掛かるとこれまた騒がしい声が漏れ出している。


…やれやれ騒がしい姫たちだよ。


『王女!何をなさっておられるのですか?』


『あら?知らない?こうしてタオルでね体を摩擦するとね、な、なんと温かくなってくるのよ?凄いでしょう?私もあまりの寒さに震えてた時に見出したのよ?貴女たちもやってみたらいいわ!そうよ、街に出て広げちゃう?みんな助かるわよ~』


…こっちはまた

ファビウスは扉の向こうの女官を案じながらカイザルの待つ執務室へ急いだ。






『ちょっと、私の朝食は?』


目の前に並べられた朝食を前にまたも金切声を上げるサンドラ王女ステファニー。困惑する食堂に騒ぎを聞きつけたファビウスが

『どうされました?』


冷静に問うファビウスに苛立ちをぶつけるかのように

『また貴方?あのね、この者たちが侍従の食事を並べ出したのよ。いったいどうなってるの?きちんと説明してあるのかしら?』


ファビウスは対面に座り、嬉しそうにモグモグ平らげるマリラン王女フランシスを横目に


『王女の朝食で間違いございませんが?』


ステファニーは驚いたように立ち上がると


『は?何を言ってるの?リスじゃないんだからこんな固い木の実なんて食べないわよ!それにこのスープはなに?』


『薬膳スープだそうですよ?健康管理もバッチリなんですって』


にこやかに答えるフランシスを睨みつけると


『マリラン王女?貴女こんな物召し上がってらしたの?』


『いいえ、初めてですわ!何だか不思議なお味ですの。頂いてみて下さいな!』


得体の知れないスープを飲み干すフランシスを顔を歪めながら見つめると


『とにかく!私はこんな物食べないの!朝は軽くでいいわ!新鮮な摘みたてサラダとパン。そしてオムレツと普通のスープでいいわ!』



外は雪景色である。どこに摘みたての野菜があるのであろうか。頭を巡らせているフランシスは首を捻りながら固いパンと格闘していた。


『サンドラ王女。しかしながらこの季節は食物が豊富にある訳ではございません。温暖期に蓄えた物を食す季節となりますので。』


ファビウスの説明を聞き終える前に


『そんな事分ってるわ!それは平民の話しでしょう?ここは宮よ?それに私はサンドラ王女なのよ。このような扱いが許される訳無いわ!』



…私は一応マリラン王女なのだけど…

固いパンとの格闘に敗れたフランシスは人目を盗んでそのパンにかじりついた。

頬張ったパンは手強くフランシスは何度も咀嚼を繰り返しやっとの思いで飲み込んだ。


…なかなか手強いわね?


手に持ったもう一つのパンを凝視しながら頭を悩ませていた。






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