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義理の兄弟
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カイザルは冷酷皇帝と称されてはいるが実は気は長い方だ。そのカイザルがあからさまに不機嫌な表情で向かい側に座る2人を睨みつけていた。
『良ければ、あの白いド派手な馬車に乗られてはどうだ?』
カイザルは何故かフレディックまで北帝国の馬車に乗り込んでフランシスと仲良く兄妹愛を堪能している2人を理解できずにいた。
『お気遣いありがとう。でも大丈夫。こんな機会滅多にないからね?』
…何なら2人とあのド派手な取り巻きを連れてマリランへ帰ってもよいのだが?
カイザルの視線にフランシスは申し訳なさそうに目配せをする。
…。ったく。
『で?何をそんなに持ってこられたの?』
荷馬車に積まれている象東を確認するフランシスに
『日頃お世話になってる北帝国にせめてもの気持ちだよ?北帝国では農作物がなかなか育たないであろう?だから寒冷地でも栽培できる苗とやらを見繕ってきたのだ。』
フランシスは目を輝かせると
『どこから?』
『むこうの大陸からね。』
遠くを指差すフレディックにカイザルは思わず口を開いた。
『大陸?マリランは他国との国交は無いのでは?』
フレディックは不思議そうに
『うん、この大陸ではね?だけど大陸は1つではないもんね?視野は大きく持たなきゃ駄目だよ。
あっ、それから僕は君の義理とは言え兄となる訳だよね?僕には弟が居ないから嬉しいんだ。これからはよろしく頼むよ。』
1人でどんどん話を進めるフレディックにフランシスはため息をつくと
『ほら、殿下もお困りになってるわ!もうこれだから嫌なのよ。』
…いや、お前とそっくりだよ。フランシス。
カイザルはフランシスよりも大きなため息を1つ落して瞳を閉じた。
…寝るしかないな。
カイザルは瞳を閉じて真っ暗な闇を感じながらも、耳から入ってくる雑音に苛立ちを覚えながら北帝国へと到着を待っていた。
北帝国正面にズラリと並んだ馬車からは様々な出で立ちの男女がゾロゾロと降りてくると荷馬車へ向かい、フレディックの言った通り苗やらをごっそり運んでいる。またその後方からは沢山の書物やズタ袋が運ばれてきている。
…?確かに富裕国の王女の嫁入りにしては珍しい。
黙りこくり様子を伺うカイザルにフレディックは
『驚いたかい?富裕国からの贈答品ならば調度品や金銀財宝だと思ったろ?それが欲しいなら用意させるけど?』
フレディックはカイザルを覗き込んだ。
『いや、必要はない。』
言葉短めに答えると、カイザルはズタ袋に興味を取られている。
『これらはね、皆宝の種だよ』
カイザルは眉間にシワを寄せフレディックを見ると
『だってそうだろ?真心込めて育てればやがては心を癒やす花が咲く。また民の命の源になる食になる。
ここは大帝国でも管理が甘く荒れ果てていたからね。ここからが歴史の始まりだよ。カイザル。
大変な責だろうが、我々は応援してるんだ。』
こう語る姿を見るとやはり王太子である。それも自国だけで成立している独立国家の統率者である。
カイザルはフレディックの話に耳を傾けながら北帝国再建への道しるべを見た気がしていた。
『良ければ、あの白いド派手な馬車に乗られてはどうだ?』
カイザルは何故かフレディックまで北帝国の馬車に乗り込んでフランシスと仲良く兄妹愛を堪能している2人を理解できずにいた。
『お気遣いありがとう。でも大丈夫。こんな機会滅多にないからね?』
…何なら2人とあのド派手な取り巻きを連れてマリランへ帰ってもよいのだが?
カイザルの視線にフランシスは申し訳なさそうに目配せをする。
…。ったく。
『で?何をそんなに持ってこられたの?』
荷馬車に積まれている象東を確認するフランシスに
『日頃お世話になってる北帝国にせめてもの気持ちだよ?北帝国では農作物がなかなか育たないであろう?だから寒冷地でも栽培できる苗とやらを見繕ってきたのだ。』
フランシスは目を輝かせると
『どこから?』
『むこうの大陸からね。』
遠くを指差すフレディックにカイザルは思わず口を開いた。
『大陸?マリランは他国との国交は無いのでは?』
フレディックは不思議そうに
『うん、この大陸ではね?だけど大陸は1つではないもんね?視野は大きく持たなきゃ駄目だよ。
あっ、それから僕は君の義理とは言え兄となる訳だよね?僕には弟が居ないから嬉しいんだ。これからはよろしく頼むよ。』
1人でどんどん話を進めるフレディックにフランシスはため息をつくと
『ほら、殿下もお困りになってるわ!もうこれだから嫌なのよ。』
…いや、お前とそっくりだよ。フランシス。
カイザルはフランシスよりも大きなため息を1つ落して瞳を閉じた。
…寝るしかないな。
カイザルは瞳を閉じて真っ暗な闇を感じながらも、耳から入ってくる雑音に苛立ちを覚えながら北帝国へと到着を待っていた。
北帝国正面にズラリと並んだ馬車からは様々な出で立ちの男女がゾロゾロと降りてくると荷馬車へ向かい、フレディックの言った通り苗やらをごっそり運んでいる。またその後方からは沢山の書物やズタ袋が運ばれてきている。
…?確かに富裕国の王女の嫁入りにしては珍しい。
黙りこくり様子を伺うカイザルにフレディックは
『驚いたかい?富裕国からの贈答品ならば調度品や金銀財宝だと思ったろ?それが欲しいなら用意させるけど?』
フレディックはカイザルを覗き込んだ。
『いや、必要はない。』
言葉短めに答えると、カイザルはズタ袋に興味を取られている。
『これらはね、皆宝の種だよ』
カイザルは眉間にシワを寄せフレディックを見ると
『だってそうだろ?真心込めて育てればやがては心を癒やす花が咲く。また民の命の源になる食になる。
ここは大帝国でも管理が甘く荒れ果てていたからね。ここからが歴史の始まりだよ。カイザル。
大変な責だろうが、我々は応援してるんだ。』
こう語る姿を見るとやはり王太子である。それも自国だけで成立している独立国家の統率者である。
カイザルはフレディックの話に耳を傾けながら北帝国再建への道しるべを見た気がしていた。
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