冷酷皇帝とお花畑妃殿下

mako

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規格外の王女

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フランシスには幾つもの顔が存在していた。皇宮では侍従らと共に楽しそうに暮らし、社交界では婚約者として振る舞い、慈善活動にも勤しみ、北帝国の繁栄に尽力していた。


『殿下、勿体無い程の妃となりますね。マリラン王女は。』


ファビウスは珍しく嬉しそうな表情でカイザルを見た。カイザルは北帝国に似つかわしくない賑やかさを放つ庭を眺め下ろしながら


『そうかもね。無理をしていないとよいのだが』


ある日突然お仕掛けてきた王女を案じながら執務室のソファへ腰をおろした。


しばらくファビウスと、お茶を飲んでいるとフランシスが執務室の扉をノックした。


『殿下、フランシスです。』


カイザルファビウスは顔を見合わせると


『どうした?』


カイザルは自ら扉を開けに立つと


『少しよろしいですか?』


フランシスは相変わらず破顔させながら執務室に入ってくると、ファビウスはさっと席を譲る。


『ファビウス、そのままでいいのよ。座ってて。』


フランシスはファビウスの隣りに腰を下ろし微笑んだ。


『で?どうした?』


フランシスは戸惑う事なく


『実はですね、来週に孤児院の子どもたちがキャンプに行くらしいのです。』


年に1度、子ども達が山へキャンプに行く事を言っているフランシスに


『あぁ、もうその時期か。幾分か暖かくなって良かったな。』


カイザルは窓から外を見ながら柔らかく微笑んだ。


『そうなのです。その時期なのです。ですからわたの外泊許可?らしきものを頂きたくて…』







固まるファビウスに視線を送るカイザルは


『待て、キャンプに行くのは孤児院の子ども達であろう?姫の外泊とは?』


『その孤児院は私が毎週通っております孤児院なのですよ?私が行かなくてどうするのです?』


…どうするのです?では無いですよ。王女。


ファビウスは恐る恐るカイザルを見ると


『姫、それは無理だ。』


『何故です?』


『何故って王女がましてや皇后となる姫がそんな所に参加する訳にはいかないだろう?』


『ですから王女としてではなく町娘の1人として参加するのですよ?これなら大丈夫ですわ。護衛付きでは子ども達も、興醒めしてしまいますからね?』


自信満々で、答えるフランシスにファビウスは頭を抱える。


…余計に無謀ですが?


『駄目だ。許可は出来ん。』


カイザルは短く答えるとフランシスは珍しく笑顔を無くした。


案ずる2人はフランシスを凝視していると


『ではバレなきゃ良いのですね?』


…。


…。


『恐れながらマリラン王女。誰にバレなきゃ?』


ファビウスはもはや敬語が取れてしまっている。

フランシスは嬉しそうにファビウスを見ると


『もちろん、殿下にですわ!』


…いや、ここに居るけど?

ファビウスはカイザルとフランシスを交互に見ながら返す言葉を懸命に探した。


『それは難しいですよ?殿下が姫を宮から出すなと言われたらそこまでです…』


黙りこくるカイザルに視線を流すとフランシスは


『ファビウス大丈夫よ。』


…何が大丈夫なのでしょう?


『私はこう見えて忍者のような姫と言われてるのよ?』


…知らんがな。


『マリランでもね城を抜け出させたら右に出る者は居ないのよ?』


…そんな胸を張られても?


ファビウスは頭を巡らせていた。

手の内をカイザルを前にしてペラペラと話す王女。例え抜け出したとしてもどうやって帰ってくるのだ?それなりの罰を受ける覚悟か?いやマリラン王国では罰など与えられなかったのか?


甘やかされた王女を怪訝そうに眺めていた。



するとカイザルは呆れたようにため息を落とし


『ファビウス、調整を頼む。』


『はあ?』

心の声が咄嗟に出たファビウスは改めて


『殿下、よろしいのですか?』


『よろしいも何も無い。言い出したら聞く王女では無さそうだ。』



『護衛は?』


カイザルは天を仰ぐと


『要らん。私も一緒に行く。』


『はあ?』


ファビウスはまたも心の声をそのまま漏らすとこちらも大きくため息を付き


『知りませんからね?』



2人のやり取りを嬉しそうに眺めていたフランシスであった。


…話せば分ってもらえるのね♡




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