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初キャンプ
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カイザルとファビウスは言葉を失った。目の前に現れたフランシス。フランシスの変装は紛れもなく完璧でどこから見ても町娘。フランシスは満面の笑みでカイザルを見ると
『殿下、ではこの宮を出た瞬間から私達はもう1人平民ですからね?私の事は姫ではなく、そうですね…ファニーとお呼び下さい。殿下の事はカイザー?カイ?そうねカイにしますわ!』
楽しそうなフランシスを呆気に取られて眺めている2人にフランシスはカイザルの手を引き早々に宮を出た。
カイザルは孤児院視察をまだ北帝国に入ってからは経験がない。しかもフランシスとの2人の時間も初めてなのである。
孤児院に入るとフランシスは集まって来る子どもたちを抱きかかえ慣れた手つきで輪の中に入っていく。カイザルは孤児院をぐるりと見渡し想像以上に整っている事に驚いた。おそらくはマリラン王女であるフランシスの功績であろう。
『さあ、みんな出発よ!』
フランシスの言葉に子どもたちは喜び列を成して山に出かけていく。
…?
カイザルはあまりの少ない荷物に驚きながら
…こんな荷物でキャンプが出来るのか?
大人しく列の後を追うカイザルに1人の青年が声を掛けた。
『君は?』
カイザルは突然の声掛けに怪訝そうに青年を見た。
『僕はアンドレ。君は?』
『カイ。』
『名を聞いているのではなくて、君はファニーの何?』
『…。』
何と言われても返答に困る。
『兄弟には見えないけど?ってまあ、いいや。とにかくよろしくね。』
アンドレはそれだけ言うとフランシス達の輪に入り楽しそうに笑っている。
…お前こそ何?だ。
カイザルは経験の無い苛立ちを覚えながら後を追った。
カイザルはまたも驚いた。
キャンプと聞いていたがこちらでのキャンプではテントらしきものは無い。何やら小さな小屋が幾つもの並んでいる。ご丁寧に火を起こす窯までありカイザルが思い浮かべるキャンプとは全く違う代物である。
…これが?
そもそも孤児院の子どもたちが行うキャンプとはキャンプ施設での社会学習である。カイザルのように何も無い所で寝泊まりする野営とは根本が異なる。
懸命に火を起こす青年らに先程のアンドレも居る。ここに居る大人は皆ボランティアだろうか?ここでは全く役に立っていないカイザルは居心地が悪そうに近くの切株に腰をおろした。
カイザルの気持ちを慮ったフランシスは声を小さく
『仕方ありませんよ。何せ初めての経験ですものね?』
皇子として育てられたカイザルには未知の世界である。
…いや、姫もだろうが?
そんな心の声を押し殺し
『いや、勉強になるな。』
カイザルは懸命に働く青年たちとそれを習う子どもたちに視線を送った。
そこへフランシスも加わり楽しそうである。どっから見てもその青年らと変らない。誰もフランシスが富裕国の王女とは夢にも思わないであろう。
…。
カイザルはその様子を視察しながら若干の苛立ちを覚えた。先程からアンドレという男はフランシスに寄り添うようにフランシスに手を貸している。一見助け合う2人であるが、カイザルは先程受けたアンドレからの、牽制があるためアンドレの下心が透けて見えていたのである。もちろんそんな事など知らないフランシスは純粋に手を取り合い子どもたちの為に頑張っている。
凝視するカイザルに1人の少女が声を掛けた。
『お姉ちゃんはがり見ているね?』
純粋に話す少女にカイザルは驚いたように笑うと
『そんな事はないよ。それよりどうした?輪に入らないのか?』
カイザルは少女に目線を合わせ話をすると少女は
『お姉ちゃんはね、みんなのお姉ちゃんなの。だから独り占めは駄目だからね?』
『…そんな事はしないよ。大丈夫だから。』
何だか子どもに詰められたような感覚に陥るカイザルは少女と共に出来上がったスープとパンを頬張りながらもフランシスを目で追っていた。
フランシスは子ども達の輪に入り楽しそうに歌い踊っている。
…違和感無いのが笑えるな(笑)
カイザルもまた楽しそうにその様子を眺めていた。そんな平和な時間を過ごしていた時であった。
いきなり複数の黒いマスクの集団がその場に乱入してくると場は一気にパニックとなり泣き叫ぶ声が広がる。カイザルが立ち上がるやいなや、すぐさま護衛騎士らが飛び込みマスク集団らを一気に捕らえたのである。ほんの一瞬の事である。
静まり返ったキャンプ場は荒れ果てぐちゃぐちゃになっている。楽しい時間は終わりを告げた。
『殿下、ではこの宮を出た瞬間から私達はもう1人平民ですからね?私の事は姫ではなく、そうですね…ファニーとお呼び下さい。殿下の事はカイザー?カイ?そうねカイにしますわ!』
楽しそうなフランシスを呆気に取られて眺めている2人にフランシスはカイザルの手を引き早々に宮を出た。
カイザルは孤児院視察をまだ北帝国に入ってからは経験がない。しかもフランシスとの2人の時間も初めてなのである。
孤児院に入るとフランシスは集まって来る子どもたちを抱きかかえ慣れた手つきで輪の中に入っていく。カイザルは孤児院をぐるりと見渡し想像以上に整っている事に驚いた。おそらくはマリラン王女であるフランシスの功績であろう。
『さあ、みんな出発よ!』
フランシスの言葉に子どもたちは喜び列を成して山に出かけていく。
…?
カイザルはあまりの少ない荷物に驚きながら
…こんな荷物でキャンプが出来るのか?
大人しく列の後を追うカイザルに1人の青年が声を掛けた。
『君は?』
カイザルは突然の声掛けに怪訝そうに青年を見た。
『僕はアンドレ。君は?』
『カイ。』
『名を聞いているのではなくて、君はファニーの何?』
『…。』
何と言われても返答に困る。
『兄弟には見えないけど?ってまあ、いいや。とにかくよろしくね。』
アンドレはそれだけ言うとフランシス達の輪に入り楽しそうに笑っている。
…お前こそ何?だ。
カイザルは経験の無い苛立ちを覚えながら後を追った。
カイザルはまたも驚いた。
キャンプと聞いていたがこちらでのキャンプではテントらしきものは無い。何やら小さな小屋が幾つもの並んでいる。ご丁寧に火を起こす窯までありカイザルが思い浮かべるキャンプとは全く違う代物である。
…これが?
そもそも孤児院の子どもたちが行うキャンプとはキャンプ施設での社会学習である。カイザルのように何も無い所で寝泊まりする野営とは根本が異なる。
懸命に火を起こす青年らに先程のアンドレも居る。ここに居る大人は皆ボランティアだろうか?ここでは全く役に立っていないカイザルは居心地が悪そうに近くの切株に腰をおろした。
カイザルの気持ちを慮ったフランシスは声を小さく
『仕方ありませんよ。何せ初めての経験ですものね?』
皇子として育てられたカイザルには未知の世界である。
…いや、姫もだろうが?
そんな心の声を押し殺し
『いや、勉強になるな。』
カイザルは懸命に働く青年たちとそれを習う子どもたちに視線を送った。
そこへフランシスも加わり楽しそうである。どっから見てもその青年らと変らない。誰もフランシスが富裕国の王女とは夢にも思わないであろう。
…。
カイザルはその様子を視察しながら若干の苛立ちを覚えた。先程からアンドレという男はフランシスに寄り添うようにフランシスに手を貸している。一見助け合う2人であるが、カイザルは先程受けたアンドレからの、牽制があるためアンドレの下心が透けて見えていたのである。もちろんそんな事など知らないフランシスは純粋に手を取り合い子どもたちの為に頑張っている。
凝視するカイザルに1人の少女が声を掛けた。
『お姉ちゃんはがり見ているね?』
純粋に話す少女にカイザルは驚いたように笑うと
『そんな事はないよ。それよりどうした?輪に入らないのか?』
カイザルは少女に目線を合わせ話をすると少女は
『お姉ちゃんはね、みんなのお姉ちゃんなの。だから独り占めは駄目だからね?』
『…そんな事はしないよ。大丈夫だから。』
何だか子どもに詰められたような感覚に陥るカイザルは少女と共に出来上がったスープとパンを頬張りながらもフランシスを目で追っていた。
フランシスは子ども達の輪に入り楽しそうに歌い踊っている。
…違和感無いのが笑えるな(笑)
カイザルもまた楽しそうにその様子を眺めていた。そんな平和な時間を過ごしていた時であった。
いきなり複数の黒いマスクの集団がその場に乱入してくると場は一気にパニックとなり泣き叫ぶ声が広がる。カイザルが立ち上がるやいなや、すぐさま護衛騎士らが飛び込みマスク集団らを一気に捕らえたのである。ほんの一瞬の事である。
静まり返ったキャンプ場は荒れ果てぐちゃぐちゃになっている。楽しい時間は終わりを告げた。
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