冷酷皇帝とお花畑妃殿下

mako

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エマニュエルの本音

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エマニュエルは側近から皇后の様子を聞くと、弁明に必死な公爵に

『好きにするが良い』

とだけ吐き出し急ぎ控室に向った。

侯爵の暴言からエマニュエルとのおぞましい記憶が戻った事を察知したエマニュエルは顔を歪めながら走った。


控室とドアを開けると入口に背を向け椅子に腰をおろしている皇后の姿があった。皇后は振り返るとエマニュエルを見て


『殿下、どうされました?』

変わらぬ笑顔でエマニュエルを見た。一瞬安堵したエマニュエルであったが皇后のその手は震えている。良く見れば涙の後が見て取れる。


思い出しても尚、皇后としての務めを果たそうとするその姿にエマニュエルは己の未熟さを改めて痛感する。同じ統率者の子として生を受けた身。これほどまでの覚悟をエマニュエルは知らない。


『思い出したのか?』


エマニュエルの言葉に皇后は


『何をですか?さあ、会場に戻らなければなりませんね。』


あくまでシラを突き通す皇后の言葉にいっそ乗ってしまう方が楽かも知れない。だがこの時のエマニュエルはそうはしなかった。


会場に戻ろうとする皇后の手首を掴むとエマニュエルは一気に皇后を自分の胸に抱き込んだ。


『マーガレット』


皇后は目を見開きエマニュエルを見た。その大きな瞳には涙で潤いいまにも流れ落ちそうである。


『マーガレット、すまない。』


エマニュエルの短い言葉、たった数文字の言葉にマーガレット皇后はおぞましい記憶まで清算するに十分であったのだ。



『名を、名をご存知だったのですか?』

消え入るような声を絞り出すマーガレットにエマニュエルは


『もちろんだ。だが記憶を戻す前に何も覚えていないマーガレットにそう呼ぶのは憚られたんだ。

私が今まで君にしてきた仕打ちを無かった事には出来ない。それは分っている。だけど許されるならばこれからそれを1つづつ上書きしていきたいと思う。そのチャンスを貰えないか?』


マーガレットは南帝国に嫁いだあの日からの事を走馬灯のように頭に巡らせた。しかしマーガレットの頭に巡るのは記憶を無くしていた穏やかな日常ばかりであった。そう、すでに上書きはされているのである。


『マーガレット、皇后だからとか使命とかは関係無い。君が国に帰りたいと願うならば私は悪いようにはしない。国に帰った後も皇后としての功績を称え王国を支援する事を約束する。


でも、もし万が一ここに残ってくれるのならば私は生涯君を大切にすることを誓う。』



エマニュエルはマーガレットの前に跪くとその手を取り手の甲へとキスを落とした。



『私は、』



…。


『私は確かに記憶を取り戻しました。』


…。


『ですが頭に巡るのは、記憶を無くしていた時の幸せな時間なのです…。どうかしてますわ。私は。これが何かは分かりませんが、記憶を無くしていた時の私は間違い無く殿下に恋をしていたのかもしれません。』



エマニュエルはマーガレットの言葉を1つ1つ頷きながら聞いていると


『私はやはり元王女。』


エマニュエルの顔が曇る…。


『何不自由なく育てられ欲しい物は何でも手に入るそんな環境で育ちましたので欲張りなのでしょう。あの幸せな時間を手放す事はもはや出来そうにもありません。例え苦しみがあったとしても。』 


マーガレットはエマニュエルに向けて美しく微笑んだ。


エマニュエルは経験の胸の高鳴りを覚えマーガレットの手を掴むと颯爽と控室を出て馬車へ乗り込んだ。



『ど、どうされましたの?勝手に帰っては…まだ夜会も終わってませんが?』



心配するマーガレットを他所にエマニュエルは


『私は皇帝だからね?あんな陳腐な婚約破棄を見せられる程暇ではないんだ。』


そう笑顔でマーガレットに告げると2人は宮への帰路に付いたのである。


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