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マドリン王国の王太子妃
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エミリアが執務に戻るようになっても相変わらずジュリアは王宮に通いつめていた。
エミリアは帰国してジュリアの着るドレスが豪華になっていることに気づいていた。もちろん男爵令嬢では誂える事が出来ない代物だ。大方ヨハネスが贈っているのだろうがそれにしても多くないか?どうやらエミリアの留守の間にヨハネスはジュリア以外の令嬢とは全て仲を清算したようだ。
…本気って事ね。やれやれだわ。
それに引き替え王宮に仕える者たちのエミリアを見る眼差しがガラリと変った気もする。いつも表情すら変えず機械的であったのが笑顔を見せる者も居るではないか。エミリアは初めこそ背筋が寒くなるのを感じたが慣れとは恐いもの、それはそれで執務もやりやすくエミリアも満足していた。
そんな時、王宮主催の夜会が開かれて公爵邸に迎えにきたのがヨハネスではなくヨハネスの側近であるアルマントであった。ジュリアとの仲が進展している証だ。エミリアは少し驚きを見せるもアルマントに笑顔を向け
『お忙しい中、貴方にまでご迷惑をお掛けし申し訳ありません。』
深々と頭を下げた。絶世の悪女の詫びにアルマントは驚いたように
『こちらこそ至りませんが今宵は宜しくお願いします』
アルマントに手を引かれ夜会へと向かった。馬車の中でエミリアは頭を捻る。この展開は何を意味するものか。目の前の側近には問うことは出来ない。エミリアは窓から外を眺めながら様々なケースを頭に入れていた。
会場に入ると他国の貴族も多く参加している。最も目を引いているのはリア王国の公爵令息である。ハロルドは抜け目なく仮面装着を施し笑顔を撒き散らかしている。その笑顔にマドリン王国の令嬢らは目を輝かせているのだ。恥ずかしくなるエミリアは見なかった事とし視線を流した。
『エミリア嬢、何か飲まれますか?』
アルマントの問いかけにエミリアは
『どうぞお気遣いなく。貴方は面倒に巻き込まれただけでも災難なのに、絶世の悪女のお守りまでなんてお気の毒すぎますわ。』
素のままのエミリアにアルマントは複雑そうにエミリアを見つめた。その視線は何故だが少し申し訳なさそうにも取れた。エミリアはアルマントがこれから起こる事を知っていると確信した。
『1つお願いをしてもいいかしら?』
エミリアの言葉にアルマントは真っ直ぐにエミリアを見つめた。
『これから起こる事態は私とて分かります。その時は私はご期待通りの絶世の悪女となりますので貴方は私に構う事なく放っておいて下さい。でないと貴方にご迷惑が掛かるかもしれません。これ以上貴方を巻き込む事は出来ませんから。』
素のままのエミリアが優しく微笑むとアルマントは目を見開き
『貴女は…。』
アルマントの次の言葉を待つ前にファンファーレが王族入場を告げた。
エミリアの予想通りヨハネスはジュリアをエスコートし入場してきた。エミリアは顔色1つ変えずに眺めている。ジュリアがエミリアをチラリと見ると勝ち誇ったかのように微笑んでいる。全てが想定内の事であり思わずアルマントへ微笑んでしまった。アルマントは何故だが真っ赤になっている。
しかしエミリアの予想はここまでであった。
国王陛下の挨拶が終えた所で王太子であるヨハネスが口を開いた。
『今宵は皆に報告がある。私はエミリア・フォン・ヘルツベルトとの婚約を解消しなければならなくなった。』
…?
エミリアは驚いた。よくある小説のようにお前との婚約は破棄する!と宣言されるものだと思っていたのに驚く程下からではないか?むしろ残念そうではないか。
『ジュリア・バルド嬢との婚約とジュリアの懐妊も同時に報告する。』
…。
どよめく会場はすぐに拍手喝采となる。エミリアは驚き固まっていた。エミリアは自分が悪女になる予定であった。もっとヨハネスから罵られる予定であった。
…アホなの?
エミリアはそれ以上に驚いた事はジュリアの懐妊だ。エミリアとの結婚の前にジュリアが懐妊した為にジュリアを正妃としなければならなくなったのだ。本来ならばエミリアを正妃とし1年の白い結婚の後ジュリアを側妃とするのが最善である。
お飾りの王太子妃を望んでいたわけでは無いがそれがマドリン王国の為、公爵令嬢としての義務だと捉えていたエミリアは、未来の国王への失望と、己の解放に思わず隣のアルマントに
『本当によろしいのかしら?』
アルマントを見るエミリアの大きな瞳からは嬉しい涙が溢れていた。もちろん会場の者からはエミリアが悲しくてやりきれない涙をためているかのように映ったであろう。それはそれで逆に好都合である。
アルマントは自国の行く末への絶望と、隣のエミリアの美しい涙との狭間で大きく揺れていたのである。
エミリアは帰国してジュリアの着るドレスが豪華になっていることに気づいていた。もちろん男爵令嬢では誂える事が出来ない代物だ。大方ヨハネスが贈っているのだろうがそれにしても多くないか?どうやらエミリアの留守の間にヨハネスはジュリア以外の令嬢とは全て仲を清算したようだ。
…本気って事ね。やれやれだわ。
それに引き替え王宮に仕える者たちのエミリアを見る眼差しがガラリと変った気もする。いつも表情すら変えず機械的であったのが笑顔を見せる者も居るではないか。エミリアは初めこそ背筋が寒くなるのを感じたが慣れとは恐いもの、それはそれで執務もやりやすくエミリアも満足していた。
そんな時、王宮主催の夜会が開かれて公爵邸に迎えにきたのがヨハネスではなくヨハネスの側近であるアルマントであった。ジュリアとの仲が進展している証だ。エミリアは少し驚きを見せるもアルマントに笑顔を向け
『お忙しい中、貴方にまでご迷惑をお掛けし申し訳ありません。』
深々と頭を下げた。絶世の悪女の詫びにアルマントは驚いたように
『こちらこそ至りませんが今宵は宜しくお願いします』
アルマントに手を引かれ夜会へと向かった。馬車の中でエミリアは頭を捻る。この展開は何を意味するものか。目の前の側近には問うことは出来ない。エミリアは窓から外を眺めながら様々なケースを頭に入れていた。
会場に入ると他国の貴族も多く参加している。最も目を引いているのはリア王国の公爵令息である。ハロルドは抜け目なく仮面装着を施し笑顔を撒き散らかしている。その笑顔にマドリン王国の令嬢らは目を輝かせているのだ。恥ずかしくなるエミリアは見なかった事とし視線を流した。
『エミリア嬢、何か飲まれますか?』
アルマントの問いかけにエミリアは
『どうぞお気遣いなく。貴方は面倒に巻き込まれただけでも災難なのに、絶世の悪女のお守りまでなんてお気の毒すぎますわ。』
素のままのエミリアにアルマントは複雑そうにエミリアを見つめた。その視線は何故だが少し申し訳なさそうにも取れた。エミリアはアルマントがこれから起こる事を知っていると確信した。
『1つお願いをしてもいいかしら?』
エミリアの言葉にアルマントは真っ直ぐにエミリアを見つめた。
『これから起こる事態は私とて分かります。その時は私はご期待通りの絶世の悪女となりますので貴方は私に構う事なく放っておいて下さい。でないと貴方にご迷惑が掛かるかもしれません。これ以上貴方を巻き込む事は出来ませんから。』
素のままのエミリアが優しく微笑むとアルマントは目を見開き
『貴女は…。』
アルマントの次の言葉を待つ前にファンファーレが王族入場を告げた。
エミリアの予想通りヨハネスはジュリアをエスコートし入場してきた。エミリアは顔色1つ変えずに眺めている。ジュリアがエミリアをチラリと見ると勝ち誇ったかのように微笑んでいる。全てが想定内の事であり思わずアルマントへ微笑んでしまった。アルマントは何故だが真っ赤になっている。
しかしエミリアの予想はここまでであった。
国王陛下の挨拶が終えた所で王太子であるヨハネスが口を開いた。
『今宵は皆に報告がある。私はエミリア・フォン・ヘルツベルトとの婚約を解消しなければならなくなった。』
…?
エミリアは驚いた。よくある小説のようにお前との婚約は破棄する!と宣言されるものだと思っていたのに驚く程下からではないか?むしろ残念そうではないか。
『ジュリア・バルド嬢との婚約とジュリアの懐妊も同時に報告する。』
…。
どよめく会場はすぐに拍手喝采となる。エミリアは驚き固まっていた。エミリアは自分が悪女になる予定であった。もっとヨハネスから罵られる予定であった。
…アホなの?
エミリアはそれ以上に驚いた事はジュリアの懐妊だ。エミリアとの結婚の前にジュリアが懐妊した為にジュリアを正妃としなければならなくなったのだ。本来ならばエミリアを正妃とし1年の白い結婚の後ジュリアを側妃とするのが最善である。
お飾りの王太子妃を望んでいたわけでは無いがそれがマドリン王国の為、公爵令嬢としての義務だと捉えていたエミリアは、未来の国王への失望と、己の解放に思わず隣のアルマントに
『本当によろしいのかしら?』
アルマントを見るエミリアの大きな瞳からは嬉しい涙が溢れていた。もちろん会場の者からはエミリアが悲しくてやりきれない涙をためているかのように映ったであろう。それはそれで逆に好都合である。
アルマントは自国の行く末への絶望と、隣のエミリアの美しい涙との狭間で大きく揺れていたのである。
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