たまたま王太子妃になっただけ【完】

mako

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ジュリラン王国の日常

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アリスが王太子妃となりジュリラン王国は活気に満ちていた。王宮でもその人気はうなぎのぼりである。

一見するとポワーンとしているアリスだが、執務は抜け目無く熟し、人当たりもよく、気持ち良く人を使い感謝も忘れない。


ジュリラン王国では効率を考慮し、執務室は王太子と同室に置かれている為、アリスの人気ぶりはラインハルトは嫌でも知ることになる。



…。


ラインハルトが思うに、アリスは目の前に山があればまず越えるのだ。アリスには後からという言葉は無いらしい。だからいつもデスクに積まれる書類を一目散に片付けていく。そしていつもそれを終えるまでは食事どころか一息つく事もしない。

そしてそれを片付けると、一気にイメージ通りのポワーンとした表情となり、嬉しそうに執務をする文官を眺めたり、側近とお茶を飲んだりしている。



そんな姿を一目拝もうと何やら最近執務室への出入りが盛んになっている。


…。


ラインハルトとしては誰にも文句は言えないが自分の妃がアイドルのように扱われる事に面白くないのだ。


…そもそも執務室に何故こんなに人が居る?

…アリスも愛想が良すぎるのではないか?


…ってかアリスは執務より私の癒やしでは無かったのか?



ラインハルトは賑わう妻のデスクを横目に書類と格闘するのであった。



そんな中、ラインハルトは珍しくステファニーの居る公爵邸へ出向いていた。



『来週はいよいよ夫婦揃って帝国入りですわね?』


ラインハルトの出迎もせずテラスでお茶を飲むステファニー。


『公爵夫人は暇そうだな?』


ラインハルトはステファニーの前に腰を下ろす。


『まあ、ご機嫌ななめですのね?大方アリス様にお相手されず拗ねていらっしゃるのでは?』


『…。』



ラインハルトは目の前のカップを手に取ると優雅に口に運んだ。



『で?』


ステファニーの直球にラインハルトはむせながら


『ゴホンッ。その、アリスの執務を少し減らそうかと思ってな…』


『何故です?』



…。



『何故って、そもそもアレクセイ殿下は執務はステファニーが居るからジュリランの国母は2人もいらぬと。アリスはその、私の癒やしになればと言うことであったはずだ。』


ステファニーは嬉しそうに


『やっぱり拗ねていらっしゃるのではないですか!アリス様の足りない所は私が補うならわかりますがアリス様は余裕で熟していらっしゃるわ。それにまだまだ執務をお増やしになるおつもりみたいですわよ?』



ラインハルトは驚いたようにステファニーを見ると


『お増やしにってそれを止めるのがお前の仕事ではないのか?』


ステファニーはこれまた驚いたように


『何故ですの?勢力的な王太子妃の何が悪いのですか?』



『悪くは無いが…』


ステファニーはあからさまにため息をつくと



『いいですか?誰も執務が好きでやってる訳ではないのです。一重に義務だからです。』


『その義務は既に果たしておろう。』



…。ステファニーは呆れたようにラインハルトを見ると



『本当、女心の分からない男ですのね?アリス様は何よりお兄様の為に、お兄様に認めて貰う為に頑張っていらっしゃるのですよ?それを私がしゃしゃり出てはまるでアリス様のお邪魔をするみたいですわ!』



ラインハルトは目を丸くして


『私の為?』



『…他に誰がおりますの?だいたいお兄様はお言葉が足りないのです。お父様にそっくりですわ!』



…。

黙りこくるラインハルトに


『いいですか?アリス様はお兄様を良く見ていらっしゃる。そして隣に立つに相応しくなるよう努めていらっしゃるのです。』



『よく分からぬが…』



ステファニーは面倒くさそうにラインハルトを睨みつけると


『気づいてないのですか?アリス様がこちらに入られた時につけておられた香水はローズ系でしたわ。しかしお兄様はマリン系ですよね?隣に並ぶと香りがケンカしてしまうと感じられたアリス様は現在お兄様同様にマリン系をつけられております。


それだけではありません。アリス様はお兄様の好きなお花や好きな食べ物、好きなお色まで把握されておりますわ。そんな面倒な事どうしてなさるのですか?』



…。



『まだ分かりませんの?』


ステファニーは怒り出すといきなり立ち上がると徐ろに窓を開け新鮮な空気を吸い込んだ。



…マズいわ。手が出そう。




ステファニーは振り返ると


『お兄様はアリス様の何をご存知?』


…。


『相手の事をどうこう言う前にまずはご自分をどうにかしてくださいませ!』


ラインハルトはステファニーに文句を言う前にえらく叱られたまま公爵邸を後にした。



…?









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