たまたま王太子妃になっただけ【完】

mako

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ジュリラン王国夫妻で帝国へ

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ラインハルトとアリスは帝国に入り最終の打ち合わせを帝国の迎賓館にて詰めていた。

アリスから手渡されたのは、交流会にて帝国より各国王太子妃や王妃に出された課題であった。孤児院についての調査と帝国からの長期課題。その課題への進捗など報告を求めるものである。


ラインハルトがサラリと確認すると、長期課題も終了し問題も無さそうであった。



『ご苦労であった。』


ラインハルトは短く感謝を述べた後、ステファニーからの小言が脳裏に浮かび、しまったっとアリスを見るとアリスは何事も無いように微笑んでいた。


…。


ラインハルトは言葉を逡巡したが目の前の書類に目を落とした。




ラインハルトがこの事を後悔する羽目になったのは翌日の各国の会談の席であった。


アナリス帝国アレクセイ皇帝からの要求、今回は各国孤児院の現状と帝国からの長期計画要求の進捗報告が各国順に報告する時である。


ラインハルトは各国の国王らの報告を配布されている書類を見ながら聞いていると、ふと違和感を感じた。


どの国も帝国からの要求の進捗状況が20~30%程のなのである。ジュリラン王国の報告までの最高でも55%。その55%の消化率にどよめきが起こっている。皇帝すら納得の表情である。

ラインハルトは焦りを覚えた。自国の報告に不備があるのか?アリスの作成した報告書を再度確認しようと開いた時にはジュリラン王国の順番となりラインハルトは小さく息を吐き、覚悟を決めた。


ラインハルトは重い口を開き報告書を配布した。
予想通り、会場はどよめいている。ラインハルトも数字を読み上げながら確認するも、差異などは見当たらない。報告を終えると会場から拍手喝采となりその見事な成果をアレクセイ自ら褒め称えた。ラインハルトは礼を取り席に付くと、アリスからの書類を隅から隅まで確認した。ラインハルトはアリスのその功績に誰よりも驚いた。

何故なら今拍手喝采を受ける相手は、皆ジュリラン王国のステファニーの手腕だと思っているからだ。この中で全てアリスの功績だと知っているのはラインハルトただ1人なのだ。


ラインハルトは悔やんだ。何故これを手渡された時にしっかり確認しなかったのか。完了報告だけに納得したのであろうか。中身を確認していたら完了までの道のりを把握出来たであろう。そうすればあのような短い感謝の言葉で済ます訳がない。それこそ驚きアリスの頑張りを褒め称えたであろう。何故これほどの仕事を熟しておきながら、何事もなく簡単に手渡したのであろうか?何故あのように微笑んでいたのであろうか?


ラインハルトは己の未熟さ悔やみ、アリスの理解できない行動に頭を抱えていた。



ジュリランの完了報告は各国王妃や王太子妃には驚きと共に、焦りを起こした。完了している国もあればまだ2割程しか進んでいない国もある。ある意味それは怠惰とも捉えられるのである。王妃らは保身のように口を揃えてステファニーを褒め称えた。ステファニーが特別なのだ。怠惰ではない。こういう時には一致団結するのが王妃らの特性のようだ。


ラインハルトは迎賓館に戻る前にアレクセイの執務室を訪れた。



『ラインハルト、待っていたよ。』


アレクセイは相変わらずの軽いテンションでラインハルトを迎えた。



『どうしたの?もっと得意気に来るかと思ってたんだけど?ってか凄いね。ステファニーは。やはり王子で生まれた方が良かったのではないか?あれ程の面倒な問題をこんなに早く完了させるなんて只者ではないね?私も2~3年は猶予を与えるつもりでいたから他国にももう少し頑張って貰わないとね。』


嬉しそうに語るアレクセイとは裏腹にラインハルトは顔色を無くしている。



『ラインハルト。どうした?』

アレクセイは真面目に問うた。



『違うんです…。』


アレクセイは少し考えるも


『何が?』


『ステファニーは執務を行ってはいません。』


『…ステファニーに何かあったのか?』


ステファニーを案ずるアレクセイに


『いえ、元気にしております。』



アレクセイは頷くと少し考え


『では、お前が全て?』


ラインハルトは首を振り



『全てアリスが担っております。』



『…。』


アレクセイは瞬きを重ねている。


『では今回の報告書もアリスが?』


ラインハルトは項垂れるように頷いた。


アレクセイはこれまた不思議そうに


『いやいや待て待て。アリスが担っていて何が悪いの?私も予想外だけどさこれは嬉しい誤算だろ?お前がそんなに死にそうなのは何でだよ?』
   

アレクセイの言葉にラインハルトは恨めしそうにアレクセイを見ると何も語らず部屋を出た。 


…おいおい、非礼じゃね?って皇帝だよ?義理の兄上とてたいがいだぞ?



アレクセイは今にも死にそうなラインハルトの背中を眺め複雑な面持ちで見送った。






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