たまたま王太子妃になっただけ【完】

帝国の安寧

ジュリランの可愛らしい天使たちの誕生は、オリヴィアやステファニーも魅了されすっかり叔母バカになっていた２人である。

そんな時、オリヴィアの懐妊が伝えられ、アレクセイは厳戒態勢を敷きオリヴィアは気軽にジュリランの天使たちとあうことも出来なくなった。


『ねえ、レオ。これで大丈夫よね？』


レオナルドは首を傾げる。


『妃殿下、主語がありません。』


呆れ果てるレオナルドにオリヴィアは辺りを見渡すと小声になり


『側妃の心配よ…』


…まだそんな事言っとるんかい！



レオナルドは面倒くさそうに


『さあ？どうでしょう？そうゆう事は直接お聞き下さい。もう巻き込まれるのは沢山ですからね？』


予防線を張るレオナルドにオリヴィアは


『器の小さい男ね!』


！レオナルドは驚いたようにオリヴィアを睨みつけた。



オリヴィアは変わらない退屈な毎日にこの上なく幸せを感じている。大概の令嬢ならば退屈をもて余すものだが生粋の怠惰の固まりでもあるオリヴィアにとってこの時間は何より至福のひとときなのである。


アレクセイは毎日定刻になると寝室に戻りオリヴィアとお腹の子を寝かせる。まるで子どもを寝かし付ける母親のようだ。その様子を見守るフィリップは

…子どもが子どもを産むようだ。


口には出せぬ言葉を１人しっかり飲み込んだ。



穏やかな日常を重ねやがてオリヴィアが産気づいたある日、ラインハルトからも聞いていたアレクセイは夫の心得を胸にオリヴィアの待つ部屋へと向かった。さあ、これから。


アレクセイの意気込み虚しく、オリヴィアは超安産のスピード出産でアレクセイが部屋まで来ると、慌ただしく侍従らが走り回っていた。



…。



固まるアレクセイに待ってましたの如くレオナルドが飛んで来ると

『おめでとうございます！皇子！皇子！のご誕生です！』


…。


アレクセイはレオナルドに



『何故私への報告がお前なの？』


不機嫌になるアレクセイだが、聞こえてくるわが子の泣き声に勝るもの無し。笑顔で部屋へ飛び込んだ。



スピード出産を経たオリヴィアは驚く程元気な様子で既に歩きまわっている。


…誰が産んだの？


全うな疑問であった。



子どもが母親になったようなオリヴィアだが、まるでママゴトのように毎日格闘している。その姿をアレクセイだけでなく宮に仕える者たちも嬉しそうに目を細めていた。


後継者を得たアレクセイは帝国の安寧へと全力で努めたのである。