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夜会
しおりを挟むユリウス皇帝の来訪を受け、ルヴェール王国では盛大な夜会が催された。
豪奢な会場には名だたる貴族たちが集い、金銀の装飾に囲まれて色とりどりの衣装が揺れる。
まるで蝶が舞うように、華やかな雰囲気が夜を彩っていた。
そんな中、会場の扉が開かれると同時に、一際大きな視線が一人の男に集中した。
帝国の若き皇帝、ユリウス・カエルレウス・ヴァルゼリオン二世。
注目を集めていることなどまるで意に介さず、彼は軽い足取りで中央へと進み出る。
「セリュアン、久しぶりだな」
場にそぐわぬほど気さくな口調で声をかけるユリウスに、一歩前へ出たセリュアンが恭しく頭を下げた。
「皇帝陛下、ご無沙汰しております。
遠路はるばるお越しいただき、誠に光栄です」
彼の笑顔には、礼節と懐かしさが入り混じっていた。
続いてセリュアンの隣にいたアメリアが、優雅にドレスの裾をつまみ、美しいカーテシーを披露する。
「お初にお目にかかります。アメリア・ルヴェールと申します。以後、お見知りおきくださいませ」
その丁寧な挨拶に、ユリウスは満足げに微笑んだ。
「いえ、お初ではありませんよ。かつてローデリック殿下の後をついて回っておられた頃に、一度お見かけしたことがあります」
「兄をご存じでしたの?」
「ええ。将来を嘱望されたお方でした。素晴らしい後継者になられたと伺っております」
アメリアはその言葉に嬉しそうに微笑み、少しだけ頬を染めた。
「まぁ、もったいないお言葉です。兄もさぞ喜びましょう」
何気ない社交辞令の応酬――に見えるそのやり取りを、背後で控えていたアレンはじっと無言で見つめていた。
その目にはわずかな警戒と、「余計なことを言うなよ」とでも言いたげな圧がにじんでいる。
だが、当のユリウスはそれに気づいているのかいないのか、いたずらっぽくアレンに視線を送ると、ふっと肩をすくめた。
「さて、あちらでご挨拶を待っている方々がいるので、そろそろ行こうかな。
……このまま長居してたら、誰かさんに背後から刺されそうだしね」
そう言って、わざとアレンの方をちらりと見やると、軽く舌を出して笑う。
「……」
アレンは無言のまま、その背を見送りながら深々とため息をついた。
まったく、この皇帝はどこまで本気で、どこまでふざけているのか――
わかっていて遊んでいるのなら、なお性質が悪い。
華やかな音楽と笑い声の中、夜会の熱はますます高まっていく。
だがその陰には、決して笑ってはいられない駆け引きが、静かに蠢き始めていた。
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