反主流派の公爵令嬢ですが何か?【完】

mako

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…本気ですか?

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ライドは事の詳細を始めから話す羽目となりアナベルの表情が七変化する姿を見ながら話しだした。

『ちょっちょっとお待ち下さい。』


話の終盤まで来ると公爵令嬢のアナベルでさえ思考が追いつかない話に思わずそれを制止させた。


『帝国…。帝国と並び立つということですか?』


『いや、この大陸に帝国が幾つもあっては厄介であろう?』


…。


押し黙るアナベルにライドは尚も


『帝国を喰うということだ。』




アナベルは驚き思わず2人しか居ない執務室を見渡した。


『恐れながら帝国は、ミハエル殿下との、繋がりもございます。』

『そうだね。』


…そうだね、ではないでしょう?


『ミハエル殿下のお母様…クラウディア様はご存知なのですか?』


『彼女はとても優秀な人だからね?理解してくれているさ。』


…。


帝国は皇帝が亡くなり皇子が成人するまでの混乱の中、帝国を討つというのか?アナベルは怪訝そうにライドを見つめた。


『幼い皇太子はとても優秀らしい。』

…ならば?

『だけどね、優秀というのは時に厄介なのだ
。恵まれた環境下で育まれる帝王学ならば良いが混乱の中、いろんな思惑が渦巻く中でその優秀さが誤った方に行く場合もあるからね。』


…。


『そしてスタートから誤ったんだ。帝国はミハエルに白羽の矢を打った。』

『わが国を混乱に巻き込んだという事ですか?』


ライドは首を振ると


『あんなもの混乱でも何でもないさ。』


…いやいや大変だったけどね?ってか今も尚。


『帝国皇太子が成人するまでの皇帝にとミハエルに矢を放った。それがどういう事かわかるかな?ミハエルは大陸でも皇太子の次に血統が優れている。』


『だからこそでは?』


『そうだね。だけどね?ミハエルはわが国の王子でもある。そのミハエルを期限付きの皇帝に担ぎ上げるというのだ。既に幾つも派閥があろう所にいきなり他国から来た統率者に忠誠などあると思うかい?皆上辺だけは装うが腹の中では自分の立場を守る事しかないよ。そして陰で実権を持つのは皇后陛下だ。彼女は野心家だからね?ミハエルに全てを託す事なく自分が、そして我が子へと筋書きがあるのさ。』


…。


『そうしたら直にどこの王国も混乱の帝国に属する国など居なくなり先が見えてるよ。私はね帝国最後の皇帝となる汚名をミハエルに着せるわけにはいかないからね?』 


…そんな。


アナベルの思考が追いつかないままのその時、ゆっくりと部屋の扉が開きミハエルがにこやかに入ってくると焦るアナベルに声を掛けた。


『大丈夫、私も承知している事だからね?っていうか兄上その説明では彼女は納得しないよ。』


アナベルは怪訝そうにミハエルを見るとミハエルはまるで幼い子供に説明するかのように


『兄上もね、私の為だけに動いていた訳じゃないよ?帝国の混乱は大陸をまたたく間に駆け巡るだろ?そうしたらさどうなると思う?』


『我こそはという国が出で参りますわ。』 


『だよね?中途半端な国が出てみろ?じゃあうちも!となるだろう?そうしたら帝国を打つ前に中途半端な国同士が先ずは争わないといけないね?それも2国とは限らない。大陸中を巻き込んだ争いになるかもしれない。』 

『そんな…』


ミハエルは固まるアナベルににこやかに微笑むと


『だからだよ。兄上は中途半端な国が出る前にわが国が帝国を討てば流石に他の国は静観する他ないだろ?大陸の安寧の為に、流す血は少ない方がいい。』


…。 


客観的に見ればそうかもしれないが、帝国の血を引くミハエルの言葉にアナベルは心が痛んだ。


『前皇帝にはとても良好だったからね。』


呟くミハエルにアナベルは


『でしたら、その後継者をお守りするのがミハエル殿下の─』


『それは違う。』

ライドの言葉にアナベルは驚いたように振り返る。


『だからこそだ。前皇帝の築いた安寧の大陸を守る為だよ。我々統率者はね我が子よりも先ずは国、大陸で無ければならないんだ。』


…。


『何の罪もない幼い子供を打つという事が正義だと?』


『それが、絶対的権力を持つ統率者の使命だよ。我々だって同じだよ?その幼い子供の命を利用する者が必ず出てくるんだ。その存在があるだけでね?』 


『そんな…』


乾いた空気が漂う中ミハエルは真青になるアナベルに追い打ちを掛けるように


『君はいい意味でも悪い意味でも真っ白だ。理解に苦しむのは分かるけどね、これがこの世の定めだよ。別に私はお飾りの皇帝でもそれが使命ならば全うしたさ。だけどね?私も兄上と同じようにトゥモルデン王国で帝王学を学んだ身。兄上は私欲の為でも野心でもなく大陸の安寧を思っての事。それを支持しない王族は誰一人居ないさ。』


困惑するアナベルは背もたれに寄りかかり天を仰いだ。


『育つ環境って大事なんだよ。ランドルフだってそうさ。幼い頃は本当遊んでばかりで手もつけられない程だったんだ。だけど父上の引いたシナリオ通り今では大陸1の騎士団を率いるまでになった。更にはランドルフの剣術は大陸でも右に出る者は居ない程だ。その幼い原石を生かすも殺すも統率者次第という事だよね?皇太子だって皇帝が存命ならば今のまま素晴らしい統率者となったかもしれないけどね。』


ライドの言葉にアナベルは以前ランドルフが話していた事を頭に思い浮かべながら何とか頭が追いついてくるのが分かった。その様子を見たライドとミハエルは安堵の笑みを浮かべた。


『どう?仮の王太子妃さん、ご理解頂けたかな?』


茶化すミハエルにアナベルは


『ミハエル殿下の血だけは素晴らしいという事は分かりましたわ。』


ミハエルはぎょっとし


『…一言多いよ。』 

3人は声を上げて笑った。








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