反主流派の公爵令嬢ですが何か？【完】

驚愕な真相

アナベルはしばらく固まり動く事が出来なかった。

…怖いんだけど…？


『マリーナ？あの、聞いてもいい？』


『どうぞ？』


至極当然という風にアナベルを見るマリーナにアナベルは言葉を逡巡させながら


『幼き頃から知ってるって、この私を？』


『はい、他にどなたが？』


…。


『その…他国のそれも公爵家の令嬢をどうしてカサンドラ王国の民までに知り渡ってるのかしら？』


マリーナは目をパチクリさせながら


『…カイン王太子殿下の婚約者になるお方だと。未来の国母だと聞き及んでおりますが…違うのですか？』


あまりに困惑するアナベルの様子にマリーナは不思議そうにアナベルをみつめていた。


アナベルはマリーナを呼び寄せ、ひざを合わせマリーナの肩をポンポンとたたいた。


『マリーナ。よく聞いて。貴女のいえ、この国の民の見解は間違ってるわ。』

『…。』


ゴクリと喉を鳴らすとマリーナはアナベルを凝視した。アナベルはカサンドラに生まれ育ったマリーナにまさか貴女の国はホラ吹きだとは言えず言葉を選びながらゆっくりと話しだした。


『私はトゥモルデン王国の公爵家に生まれましたが社交界に虫唾が走り公爵家に引きこもりがちな生活を送ってましたの。』


…引きこもりがち。あながち嘘ではないわ。


『幼き頃、旧帝国で幼い王子様と出会い、その方との結婚を夢見てたの。その王子様は大きくなったら迎えに行くと青いバラを1輪手渡してくれましたわ。』


マリーナはバツが悪そうに


『それが、カイン王太子殿下？…』


目の前のアナベルを見ながら尚も続けた。


『では、無さそうですね…』


アナベルはゆっくり頷き

『それが、我が夫。ライド・トゥモルデン皇太子殿下なの。』


マリーナはパァと笑顔になると嬉しそうに手を合わせ


『なんて素敵なの！…って。では、何故アナベル様は…ここにいらっしゃるのですか？』


…そうなの。そこなのよ。

アナベルは心から激しく同意である。


察しが良いマリーナは怪訝そうにアナベルを見つめると

『困りましたね。』


…そうなのよ。困りましたなのよ。

『大丈夫。貴女が案ずる事ではないわ。今の話は聞かなかった事にしてちょうだい。こう見えて私は皇太子妃なの。何とかなるわ。』


…多分。


『アナベル様。では今回の件サプライズではなく…ただの拉致みたいなものですか？』


…そう、拉致なのよ。


とは言えず苦々しく笑顔を作るアナベルをマリーナは頭を捻り見つめていた。