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柔らかな空気
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『君は私の為に?』
アナベルは俯いたまま
『そんな…烏滸がましい事ではなくて、ただ私がそうしたかっただけで…』
上目遣いで盗み見ると予想外にもライドはアナベルに優しい視線を送っていた。
『その気持ちは嬉しいけれど、君から見て私はそんなに頼りがないかな?』
驚き首を振るアナベルは
『そうではなく、そうではありません!』
『じゃあ何故?』
アナベルは上手く言語化できない気持ちを素直に吐き出した。
『殿下にはわからないと思います。』
『どうして?そもそも言ってくれなきゃわからないよ。』
『殿下はとてもドライでいらっしゃるから。』
…。
ライドは頭を巡らせながら呟いた。
『ドライ?私が…?』
疑問符を付けるライドに疑問符を打ちたいアナベルである。
『初めてお会いした時は王太子スマイルを撒き散らす絵本の中の王子様のようでしたわ。ですがそれは王太子としての社交のお顔。実際の殿下の心はよくわからないのです。』
ライドは尚も不思議そうにアナベルを見つめている。アナベルは納得させる説明を上手くできないもどかしさにモヤモヤしながら言葉を探していた。
…ううう、わからん
『ですから!寂しかったのです!外には相変わらずの社交スマイルを無駄に撒き散らすくせに私にはいつも事務的ですわ!結婚したかと思えば何日も王宮に戻らず、ひとりぼっちでどれだけ悩んだ事か。そしていきなり帝国となりその際にはリルムの血だの何だの言われ、駒としての役割は理解しておりますが駒も駒なりに悩むのです!』
半ば逆ギレをしスッキリしたアナベルは大きく息を吐くと己の口から出た非礼にまずは自分が驚いた。
…やってしまった。これ2度目だわ。
そう。2度目。1度目の時は失言をきっかけであのエレナ・シャニオンのお守りをしたものだ。
…デジャヴだわ。
頭を回転させるアナベルを他所にライドは顎に手を当て真剣に頭を悩ませている。
…これは、難題を考えるときのポーズだわ。
アナベルは恐る恐るライドを観察していたのである。
『君は存分鈍いのかな?』
…は?
アナベルは予想外の言葉に思わず顔を歪めた。
『忘れもしない。私が令嬢に声を荒げた事があるのはただの一度きりなんだ。もちろん後悔しているけどね?君がエレナ・シャニオンを庇って茶会で腹を刺された時に私は生きた心地がしなかった。だから教育をしてくれと頼んだが誰が守れと言ったかと詰めたよね?』
…そんな事もあったわね。だけど声を荒げてはいないわよ。確かに怒ってはいたようだけど?
アナベルは静かに話すライドを見つめていた。
『大切な人でなければ感情的にはならないよ。感情的になってしまうのは私が未熟故であるけれどね。』
…むしろ感情が、なければ人間じゃなくない?
アナベルは心の中で突っ込んだ。
『確かに私は言葉が足りない。っていうか言葉はあまり信用しないんだ。生まれながらこの立場に居るとね、みんな口当たりの良い事しか言わないからね。だから行動と言葉はセットでなければ意味が無いと思ってるんだ。だけど私は忙しすぎてなかなか行動に移せないから軽はずみな事は言わない様にしているんだけど…伝わってないかな?』
…はい、何も。
アナベルは湿った視線をライドに送った。
『だけど今回こうやってアナベルの気持ちが知れて嬉しかったよ。私もね君の気持ちがよくわからなかったんだ。』
言われてみれば、アナベルも被害妄想があったのも事実。いつも心を押し殺していたのだ。
『殿下、私こそ申し訳ありません。言葉が足りませんでしたね。』
ライドはハニカミながら立ち上がるとアナベルの横に腰を下ろし肩を抱いた。
『行動力は半端なかったけどね(笑)』
2人はお互い顔を見合わせクスクスと笑った。
アナベルは生まれて初めての柔らかいひとときをこの上ない幸せだと感じていた。
アナベルは俯いたまま
『そんな…烏滸がましい事ではなくて、ただ私がそうしたかっただけで…』
上目遣いで盗み見ると予想外にもライドはアナベルに優しい視線を送っていた。
『その気持ちは嬉しいけれど、君から見て私はそんなに頼りがないかな?』
驚き首を振るアナベルは
『そうではなく、そうではありません!』
『じゃあ何故?』
アナベルは上手く言語化できない気持ちを素直に吐き出した。
『殿下にはわからないと思います。』
『どうして?そもそも言ってくれなきゃわからないよ。』
『殿下はとてもドライでいらっしゃるから。』
…。
ライドは頭を巡らせながら呟いた。
『ドライ?私が…?』
疑問符を付けるライドに疑問符を打ちたいアナベルである。
『初めてお会いした時は王太子スマイルを撒き散らす絵本の中の王子様のようでしたわ。ですがそれは王太子としての社交のお顔。実際の殿下の心はよくわからないのです。』
ライドは尚も不思議そうにアナベルを見つめている。アナベルは納得させる説明を上手くできないもどかしさにモヤモヤしながら言葉を探していた。
…ううう、わからん
『ですから!寂しかったのです!外には相変わらずの社交スマイルを無駄に撒き散らすくせに私にはいつも事務的ですわ!結婚したかと思えば何日も王宮に戻らず、ひとりぼっちでどれだけ悩んだ事か。そしていきなり帝国となりその際にはリルムの血だの何だの言われ、駒としての役割は理解しておりますが駒も駒なりに悩むのです!』
半ば逆ギレをしスッキリしたアナベルは大きく息を吐くと己の口から出た非礼にまずは自分が驚いた。
…やってしまった。これ2度目だわ。
そう。2度目。1度目の時は失言をきっかけであのエレナ・シャニオンのお守りをしたものだ。
…デジャヴだわ。
頭を回転させるアナベルを他所にライドは顎に手を当て真剣に頭を悩ませている。
…これは、難題を考えるときのポーズだわ。
アナベルは恐る恐るライドを観察していたのである。
『君は存分鈍いのかな?』
…は?
アナベルは予想外の言葉に思わず顔を歪めた。
『忘れもしない。私が令嬢に声を荒げた事があるのはただの一度きりなんだ。もちろん後悔しているけどね?君がエレナ・シャニオンを庇って茶会で腹を刺された時に私は生きた心地がしなかった。だから教育をしてくれと頼んだが誰が守れと言ったかと詰めたよね?』
…そんな事もあったわね。だけど声を荒げてはいないわよ。確かに怒ってはいたようだけど?
アナベルは静かに話すライドを見つめていた。
『大切な人でなければ感情的にはならないよ。感情的になってしまうのは私が未熟故であるけれどね。』
…むしろ感情が、なければ人間じゃなくない?
アナベルは心の中で突っ込んだ。
『確かに私は言葉が足りない。っていうか言葉はあまり信用しないんだ。生まれながらこの立場に居るとね、みんな口当たりの良い事しか言わないからね。だから行動と言葉はセットでなければ意味が無いと思ってるんだ。だけど私は忙しすぎてなかなか行動に移せないから軽はずみな事は言わない様にしているんだけど…伝わってないかな?』
…はい、何も。
アナベルは湿った視線をライドに送った。
『だけど今回こうやってアナベルの気持ちが知れて嬉しかったよ。私もね君の気持ちがよくわからなかったんだ。』
言われてみれば、アナベルも被害妄想があったのも事実。いつも心を押し殺していたのだ。
『殿下、私こそ申し訳ありません。言葉が足りませんでしたね。』
ライドはハニカミながら立ち上がるとアナベルの横に腰を下ろし肩を抱いた。
『行動力は半端なかったけどね(笑)』
2人はお互い顔を見合わせクスクスと笑った。
アナベルは生まれて初めての柔らかいひとときをこの上ない幸せだと感じていた。
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