こじらせ王子とその妃【完】

mako

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ヨハネスの誤算

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『殿下!おはようございます。』

朝早くから王宮にやって来たエリーヌは今日も安定の脳内お花畑。流石のヨハネスもそうそう王子スマイルの安売りはしない。怪訝そうにエリーヌを見ると


『こう毎日毎日やって来なくてもよいのだけど?』


エリーヌは顔全体で微笑み

『今流行りの契約結婚ですのよ?こうして仲睦まじい所を見せつけておかなければ!』


‥。意味がわからないが?


このやり取りはヨハネスの朝に欠かせない物となっていた。


ヨハネスの側近であるロアン・バーリスは怪訝そうにこの脳内お花畑畑の令嬢を見つめていた。

『ねえ、ルアンお茶をお願いできます?』


『エリーヌ、ロアンだ。』

ヨハネスが毎度の如く訂正をする。

ヨハネスは目の前で無邪気に笑う令嬢がつい先日王太子妃を拉致する大罪を犯したものとはどうしても信じ難くしばらくエリーヌを見つめていた。


‥いったいこいつの頭の中はどうなっているのか?かち割って見てみたいものだ‥。




久々に開催される王宮での夜会に初めてエリーヌはヨハネスの婚約者として出席していた。

常日頃カールトンに纏わりつき一時は側妃候補とも噂されていた令嬢がヨハネスの婚約者として参加する夜会は貴族らの関心を集めていたのは勿論の事。


ひな壇に並ぶカールトンとキャサリン。ヨハネスとエリーヌ。1人だけ悪目立ちしている感は否めないが当の本人は全く動じてはいない。


‥ある意味流石だわ。

キャサリンは心の声を押し殺し、優雅に微笑んでいる。


ファーストダンスを終えると貴族たちもダンスの輪に入り各々楽しんでいる。ヨハネスは側近らを連れて控え室へ戻っていったがカールトンとキャサリンはまだ踊っている。その様子を眺めながらエリーヌは給仕からグラスを受け取りバルコニーへ出た。


『あら、エリーヌ様!』


声を掛けたのは同じく公爵令嬢のステファニーであった。エリーヌは幼い頃よりステファニーが苦手であった。

『ステファニー様、どうかされました?』

ステファニーは令嬢2人を連れ、伯爵令嬢のアナベルを囲んでいた。


『いえ、アナベル様にちょっとお話が‥』

エリーヌは少し微笑み、奥のベンチへ腰掛けた。


耳に入って来る会話からそのアナベルがヨハネスの側近ロアンの婚約者だとエリーヌは知り興味深く耳を澄ましていると


『ロアン様の婚約者といえども政略結婚でございましょう?ロアン様もお気の毒な事だわ。こんな令嬢を娶らなけばならないなんて』


ステファニーの取り巻きに言われたい放題なアナベルは黙って俯いている。

『ねえ、お優しいロアン様は何も仰らないかもしれませんが、こういう時は貴女からご遠慮なさるのが筋ですのよ?』


‥ロアンって優しいのかしら?いつも眉間にシワを寄せてるけど?


エリーヌがそんな事を思ういると、令嬢たちはますますボルテージが上がりついにはアナベルに手を掛けた。

エリーヌは無意識のうちにアナベルの前に出ると

『政略結婚だなんて羨ましいわ!私なんて契約結婚ですのよ?』

アナベルを庇うエリーヌにステファニーはニヤリと笑い


『貴女って昔からそうね?頭空っぽで可愛いだけが取り柄。だから契約結婚をさせられる羽目になるのよ?貴女からすればそりゃあアナベル様が羨ましいのでしょうね?』

ステファニーがエリーヌを見下すと

『まあ、ステファニー様。契約結婚は今やトレンドですわ!』

固まる令嬢たち。それを解くかのようにステファニーが声を上げて笑いだした。


『アハハハ、貴女。契約結婚したら離宮で一人さみしく一生暮らして以下なければならないの?わかるかしら?貴女の頭で。』

ステファニーと他2人の令嬢もあざ笑うかのように見下す。エリーヌは安定の天使の笑みを浮かべアナベルに声を掛ける。

『さあ、ロアンの所へ戻りましょう?』

アナベルは嬉しそうにパッと笑顔になると令嬢らは

『お待ちなさい!先程の話しが理解出来ていないようね?』

ステファニーの取り巻きの1人、パトリシアがグラスのワインをアナベル目掛けでぶち撒けた時、エリーヌはアナベルの手を引き自らが前に出た。

ワインを被るエリーヌにパトリシアは目を見開くも

『まあ、よくお似合いだわ!』


ステファニーも同調し3人で笑っていた所に騒ぎを聞きつけたヨハネスと側近のロアンがやって来た。


『何をしているのかな?』

安定の王子スマイルのヨハネスと無表情なロアン。

ステファニーが優雅にカーテシーをし

『これはこれはお騒がせして申し訳ありません。パトリシア様が手を滑らせてしまいまして‥』

逃げる様にステファニーの後ろに隠れバルコニーを後にしようとする3人にエリーヌが声を掛けた。


『お待ちなさい。』


ギョッと振り返る3人にエリーヌは

『パトリシア様、貴女公爵令嬢である私にワインをぶち撒けてそのままお帰りになるおつもり?』

パトリシアはロアンをチラリと見、

『違います!エリーヌ様がアナベル様の前に勝手に出てこられたから‥』


エリーヌは微笑む事なく


『私が出なければアナベル様がワインを被っていましたわ。それなら問題ないと?』

パトリシアはバツの悪そうに俯くと

『ステファニー様、我が国の公爵令嬢という立場ながらお騒がせしましたと他人事ですか?』


ステファニーは目を見開いて驚いている。


『何故エリーヌが前に出たの?』

不思議そうにヨハネスが問うと

ステファニーは同調するように

『そうなのです。ご自分から勝手に前に出られたので私も驚きましたわ!エリーヌ様は常日頃ぶっ飛んでらっしゃいますもの』

とあざ笑うとヨハネスは無表情で

『君には聞いていない。』

と一蹴しエリーヌを見ると


『アナベル様は政略結婚といえロアンをお慕いしているように見えましたわ。ロアンとダンスをする時にワインを被ってたら踊れませんもの。その点私は契約結婚ですから!』

そう言うとヨハネスに満面の笑みを送る。


‥。契約、契約と公言するなよ。


『パトリシア嬢、君はアナベル嬢にワインをぶち撒けるつもりだったのか?』


第2王子に初めて掛けられた言葉にパトリシアは答えられない。


『ならば私の婚約者に?』


パトリシアは目を見開き必死に否定をするもそれはパトリシアにぶち撒けた事を認めたことになる。


続く沈黙にエリーヌは


『収拾が付きませんね。でしたら仕方ありませんね。我が公爵家から不敬として申し出ますわ!』


固まる3人に尚も続ける。


『もしくは、お三方がアナベル様に頭を下げるお下げ下さい。先程おっしゃっておられたロアンの事ですが、貴女方が言うほどの男ではありません。

特段優しくもないですしいつも眉間にシワを刻んでおりますもの。むしろアナベル様はロアンには勿体なく存じますわ!』


苦虫を噛み潰したようなロアンと好き放題語る婚約者を未知なる生物でも見るかのように見つめるヨハネス。


令嬢たちは渋々アナベルに頭を下げるとそそくさとバルコニーを後にした。













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