こじらせ王子とその妃【完】

mako

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ヨハネスの心

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相変わらず毎日、朝一番で恒例となるエリーヌのヨハネス執務室訪問で一日が始まる。

昨日の今日でヨハネスはエリーヌを見るも、市場での姿が嘘のように平常運転のエリーヌ。

『おはようございます!ヨハネス様。』

脳内お花畑代表のようなエリーヌに反射的に

『こうも毎日毎日来なくても良いのだけど?』

いつものセリフを吐くとエリーヌは嬉しそうに

『契約結婚の婚約者ですもの!』

いつものように返し部屋を出て行った。



‥。



『殿下、よろしいですか?』

顔を出したのはギャレット。ヨハネスは頷くと


『仰々しいのはいいから報告しろ。』


ギャレットは急いでヨハネスに報告書を手渡した。
ヨハネスが黙読している間、じっと見つめるギャレット。

『何だ?』

怪訝そうにヨハネスが言うと


『いえ、まだ途中の様ですので、ネタバレはマズいですもんね?』


‥ネタバレって


『ならばそこに座って待っていてくれ、気が散る』

ギャレットは嬉しそうにソファに腰を下ろした。


しばらくしヨハネスは席を立ちギャレットの前に座ると


『どういう事だ?』


『書面の通りでございます。私も驚きました。まさかあのエリーヌ嬢が。』

嬉しそうなギャレットに

『お前の感想は聞いていないよ。ってか何でお前が嬉しそうなの?』


『エリーヌ嬢はもう5年程になるようです。』

『何が?』


『看板娘ですよ。』


‥看板娘って、公爵令嬢だぞ?


『幼い頃よりエリーヌ様は母上とよく慈善活動に参加され孤児院などを訪問していたとの事ですが、母上がお亡くなり今はお一人で活動されておられる様です。』


『それがどうなったら看板娘なのだ?』

『あそこの店にはちょくちょくお手伝いに入っているようですが普段はエリックという青年がお手伝いをしているらしいです。昨日はエリックとやら青年が都合が付かずピンチヒッターじゃないですか?』


ニヤニヤしているギャレットに

『ピンチヒッター。私の婚約者がか?』

ギャレットの顔は一気に引き締まる。


『何でも普段のエリーヌ様はスラムの子ども達に読み書きを教えているらしく、今日もこの後行かれるんじゃないですか?』

ヨハネスはギャレットを睨み付けると


『何が今日もこの後だ!仮にも我が国の公爵令嬢だぞ!スラムに令嬢が1人で行くなんて有り得ないだろ!何故止めなかった!』


ヨハネスはギャレットを残しエリーヌの後を追った。


エリーヌはちょうど公爵家の馬車に乗り込む所でヨハネスはエリーヌを確保した。

息を切らすヨハネスに

『どうされました?』

王子が息を切らし追いかけてくる。これは一大事とエリーヌは素のまま声を掛けた。

はっとするもヨハネスが注視しているのでエリーヌはキョトンと首だけ傾げた。


『何処へいく?』

ヨハネスの言葉にエリーヌは少し固まり

『いやですわ、殿下。公爵邸に戻りますわ!』


‥。

『そうか、ならば私が送ろう。』

目を見開くエリーヌは少し考え

『そうでしたわ!新作のドレスを街に見に行くのでした!忘れてましたわ!』

エリーヌは舌を出して笑った。

『そうか、では私も付き合おう。』


そう言うとエリーヌの腕を掴み公爵家の馬車に乗り込んだ。馬車はいつもの様に走り出す。毎日通る道のりを確かめる様に静かに走る馬車。

『殿下!執務はどうするのです?』

『今日は特に無い。』


『殿下、契約結婚ですのでお気遣いなく!』

『別に気を使っているわけではない。婚約者だからではなく公爵令嬢に話を聞きたくて王子としてここに居る。』


真剣な表情のヨハネスをエリーヌは初めてみた。おそらくムヌク王国の令嬢たちも見たことは無いはずだ。

『王子として聞く。何処へ行くつもりだ?』


エリーヌは目を泳がせるも

『別にやましい事はありません。王家に対する謀反でもありません。』

ヨハネスは息を1つ吐き


『当たり前だ。それならばとっくに牢屋にぶち込んでいるよ。』

ヨハネスはエリーヌをじっと見据える。エリーヌはそれでも怯まない。2人の攻防が続く中、馬車は静かに止まった。


エリーヌは瞳を閉じた。
白い肌を伝う大粒の涙。

ヨハネスは扉のカギをしっかり閉めると


『どういう事か説明してくれるよね?』

この日初めてヨハネスは王子スマイルを見せた。

エリーヌは顔を上げヨハネスを見据えゆっくりと話しだした。


『こちらで子ども達に読み書きを教えております。』


『公爵令嬢がする事ではないね?』


『ここに居る子どもたちに罪はありません。みんな素直な良い子達です。ですがこのまま大きくなれば先は見えております。

子どもたちの可能性を広げる為にも微力なのは分かっております。いつまでも続けられない事も分かっております。でも私はやめられなかった‥』


黙り込むヨハネス。

『今日だけ、今日で終わりにしますから。』


『駄目だ。行かせるわけないにはいかない。』


『殿下、本当に今日だけ。今日は約束しておりますので。

子どもたちに嘘はつきたくありません!今までの事が全て信じてもらえなくなります。きちんとさよならをしたいのです!

お願いします。罰なら喜んでお受けしますから!』


‥。


どれほどの時間が経ったのであろう。静寂な馬車とは裏腹に外は賑やかな音が響き渡る。1人叫ぶ者。
ケンカする者。泣きじゃくる赤子。



『エリーヌ嬢、やはり君1人でこの外へ行かせる事は出来ない。』


落胆するエリーヌ。

ガチャガチャと扉が開かれるとエリーヌは驚いた様にヨハネスを見る。ヨハネスは先に降りるとエリーヌに手を差し伸べた。驚きながらもエリーヌはヨハネスの手を取り馬車を降りた。






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