こじらせ王子とその妃【完】

mako

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王太子妃の力

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『マリ王国とフランドル公爵家が繋がりました。』

ファビウスがカールトンに報告書を手渡すとカールトンは眉間にシワを寄せ読み進めていく。


『帳簿はどうなっている?』


『記載はありません。』



…。


『黒だな。』


カールトンは書類をヨハネスに渡すと席を立ちソファに腰を下ろした。


『エリーヌお手柄だね。先日の件もあるし公爵は素直に話すだろう。』

カールトンはエリーヌに笑顔を向ける。


『私はただ、キャサリン様に習った通り口をつぐんだだけですから。』


控え目に微笑むエリーヌに何故だかヨハネスの後ろに控えるロアンがノックアウト。


『な、何を言っておられるのかしら?』

慌ててお茶を吹きこぼしそうになるキャサリン。キャサリンは依然の拉致監禁の際、偽りの報告をしているのだ。もちろん全容は周知の事。


ヨハネスはまだ続きそうな茶番を打ち切るかのように


『義姉上、もうよろしいですから…』

呆れた様に語るヨハネスにカールトンは


『でもエリーヌはその事をお前に話したんであろう?私はキャシーからは何も聞かされてないからね?』


誰よりも1番詳しく知っているであろうカールトンにキャサリンは金魚の様に口をパクパクさせている。

…私以上に知ってるくせに!


キャサリンは視線のやり場に困ると目の前のスコーンに手を伸ばした。


『で?兄上はマリ王女とはどうするの?』


エリックはお茶を優雅にお茶を飲みながらヨハネスに問うた。


『お前もか?何なんだ揃いも揃ってマリ王女マリ王女って。』


気に留めず答えるヨハネスに



『だって恋仲なんだろ?マリ王女は兄上との契約期間をしきりに気にしていたじゃないか。』


ヨハネスはエリーヌを見るもエリーヌは驚いたように首を左右に振る。


エリックは当たり前のように


『言ってたよね?マリ王女。』

エリックはエリーヌに問うと一同が

…?


『だってたまたまだけど、あの場に居たからね…』

…?

『お前!見ていたのか?何故もっと早くに言わない?』


カールトンが詰めると


『義姉上同様、どうして我が国の公爵令嬢とマリ王女が繋がってるのか不思議に思って考えてたら、大騒ぎになってるから。』


『ならばステファニー嬢を呼んだ時そう言えばよかろう?』


『言ったよね?調べればわかることだって。先に吐いたほうがいいよって言わなかった?』



…。

『あの時、言いかけたら義姉上が私に話すなオーラを投げかけてくるんだもん。喋っちゃいけないんだと思ってって違った?』


エリーヌは嬉しそうに肯定の頷きをした。



『だよね?』


安心したエリックはカールトンに得意気に


『ね?』


カールトンは軽く咳払いをしながら


『まあ…。あっでもお前は義姉上が2人もいっぺんに出来たから呼びにくいね…』


どうでもいいことに頭を悩ますカールトンに


『大丈夫だよ。』

エリーヌを指差し『義姉上』
キャサリンを指差し『キャス』


『ね?紛らわしく無いね。』


納得するエリックに


『おい、キャスって何だ?キャスって。』


…ってそこかよ。小せぇな。


ヨハネスは怪訝そうにカールトンを睨みつけた。



『おい、いつからそんなに仲良くなった?』

まだ食い下がるカールトンに


『仲良くって…キャスに上手く使われているんだよ。こちらが迷惑してるさ…』



『まぁ、なんて事を。ちょっと拗らせてるヨハネス様の背中を押すようにお願いしただけでしょ?』


…は?

ヨハネスの手が静止する。


『よく言うよ。あれがお願い?びっくりするわ。俺は役者じゃないからね?それなのに何度も練習させられ挙げ句の果てには大根役者とか言い出すしね?』 



『だって、本気の愛を伝えるのよ?あれじゃあ駄目よ。』


『本気じゃないしね。』


2人のやり取りに


『ちょっと待て、お前がエリーヌを第3王子妃に迎え入れるって話し…』


『そうだよ。当たり前じゃん。あんなのキャスの台本通りだよ。でも流石に真実の愛を演じられるほどには上達しなかったからね。政略結婚の線で行ったんだけど、逆に良かったよね?』


『まぁ、結果オーライよね?』


ヨハネスは楽しそうな2人を睨みつけていると、おもむろに振り返りロアンを見た。ロアンは気まずそうに目を逸らす。


『お前もか?何だか知らぬが自分の婚約者がどうの、令嬢は大変など理由の分からない事を言っておったな。』

『ロアンを責めてはだめよ!』


キャサリンが割って入ると


『ロアン、お前はキャンキャン吠える女性が苦手であったろ?』


ロアンは申し訳なさそうに


『はい、しかしながら王太子妃殿下ですからね?私の立場もご理解頂けると…』


ヨハネスは大きく息を吐き


『お前は誰の側近だ?』


『もちろん、ヨハネス殿下でございます。』

ロアンは敢えて最上級の礼を取ってみせた。


『まあ、良い。ってか兄上どうされた?』


終始無言を貫くカールトンに声を掛けると


『キャス、キャスってどうなの?』


…あんたまだそこにいたのかよ。


ヨハネスはおもむろにため息を付きエリーヌを連れて執務室に戻って行った。






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