愛するということ【完】

二度目の対面

テオドールがアミュレット王国から帰国し一年が過ぎた頃、ヴェルヘルト大王国では王太子妃を迎える準備に追われていた。

『テオ、本当に姫は来るのだろうか？』


ウィリアムは執務の手はそのままにテオドールには目も合わせず口を開いた。

『来てもらわなければ困りますが？』

テオドールはかすかに記憶に残る幼き姫を思い浮かべため息をついた。そのため息を拾うようにウィリアムは


『どんな姫なのだ？』

テオドールはニヤリと笑うと


『とにかく変わった王女ですが、殿下にはお似合いですよ。』


ウィリアムは首を傾げるもすぐに執務に取り掛かった。







『殿下、まだそんな格好でいらっしゃいましたか？そろそろお着替えをなさらないと…』

テオドールがウィリアムの執務室の扉を開くと呆れたように言う。


『もうそんな時間か？』

ウィリアムはようやく席を立つと奥の部屋に着替えに向かった。
　
テオドールがソファに腰を下ろそうとした時、

『失礼します！』


息を切らせながら一人の騎士が飛び込んできた。


『どうした？』


テオドールが立ち上がると


『姫が、アミュレット王女が！いらっしゃいました！』


テオドールは咄嗟に執務室を飛び出ると廊下の向こうからゾロゾロとこちらに向かう一行が目に入る。

テオドールは一行の前に立ち塞がるように走り寄ると


『申し訳ありません、予定より早くにこちらに付いてしまいあちこち観光しておりましたの。』

王女はケロリと一国の姫とは思えぬ発言をし辺りを見渡している。

テオドールは驚きながらも目の前の王女に目を奪われた。一年前接見した時にはまだ幼さが残る王女であったはず。たった一年で女性はこんなにも変貌を遂げるのか？


『お出迎えもせず失礼致しました。ではご案内いたします。』

テオドールは息を切らす騎士に謁見の間まで案内をさせた。

一行を見送るテオドールは

…遅刻はいけないとは言うが早すぎもあかんやろ？


ため息をこぼしながら執務室の扉を開けた。