愛するということ【完】

mako

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一発触発

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帝国は大陸の小さな国々を属国とし君臨する。一方のヴェルヘルト大王国はどこの属国ともならず、またどこも属国とせず唯一自国だけで大陸に存在する。

その自国の勢力の大きさは小国を束ねる帝国にも匹敵する程である為、交流会では迎賓館こそ格式高い【雅】を与えられるが友好的な歓迎は無い。


テオドールが迎賓館の警備を確認すべく騎士団長であるリロイを訪ねる。

『抜かりはないな?』

テオドールの言葉に騎士団長とは思えぬ柔らかい表情のリロイは笑顔で返した。

『あぁ、やりづらいのは毎度の事だからね。屋敷の中は一応整った。後は外だね。』

テオドールとリロイは並んで屋敷の外に出た所で庭の方でなにやら揉めているのが目に入った。



『ですから、ここは我が国が警備をしますからあちらをお願いします!』

何処やらの国の騎士がヴェルヘルトの騎士と揉めている。迎賓館には5カ国ほど滞在する模様だがそのどれもが最善のテリトリーを取りたいのだ。


そこへ帝国騎士らがやってくると有ろうことかヴェルヘルト騎士らに


『お前たちのテリトリーはここには無い』

流石のリロイとテオドールは顔を見合わせた。


『そんな!では我々はどこに配置すればよろしいのですか?』


食い下がる騎士に

『そんな事は知らぬ。属国でもない国を我々が守る理由が無い。それに加えて言うなら帝国騎士に逆らうなどと、ヴェルヘルト騎士如き、どうにでもなるのだぞ?』

堪らず駆け寄ろうとするリロイをテオドールは左手で制した。何故ならリロイの前にそこへ割って入るエレノアの姿を見たからだ。


『どうゆう事かしら?』

訪問の際身につけていた、なんちゃって王妃の装いから、すっかり自由時間のエレノアはまるで小娘のようなワンピースに着替えていた。


…おいおい、子どもかよ。

テオドールは目の前の光景を見なかった事にしたかった。



エレノアを見るどこぞの騎士団や帝国騎士は面倒くさそうに

『どこの侍女かは知らんが引っ込んでろ!』


…侍女って。まあ、そう思っても無理はない…

テオドールは空を見上げた。



『大切な交流会ですのに実にくだらない事で揉めていらっしゃるので聞いておられませんでしたの。』


ヴェルヘルト騎士団は皆驚いたようにエレノアを眺める。


『何だ、ヴェルヘルトの侍女か。ならば教えてやる。この帝国でここを守る事の出来る騎士は帝国の属国か友好国のみだ。ヴェルヘルトなど誰が守るか!』


エレノアはなるほどと納得の表情を浮かべる。


…おいおい納得してんなよ。
テオドールはため息をついた。



『でしたら帝国の属国や友好国以外の国々が滞在している迎賓館は誰がお守りするのかしら?』


頭を傾げるエレノアに

『そんなもの、その国の騎士が勝手に警備につくであろう?そんな事のも分からんか!ヴェルヘルトの資質が露呈するな!』


『そうでしたか!ならばヴェルヘルトをそちらへ移して頂けばよろしいですね?』

エレノアはヴェルヘルト騎士団に微笑む。


…出たよ。勝手に話を進め暴走かよ…

もはやテオドールは目の前の現実よりもエレノアに突っ込むのに夢中になっている。



『そんな面倒な事今更させるか!それに迎賓館の割当ては国の力量により決まるのだ!』


『そうね、でも仕方ないわよね?ヴェルヘルト騎士はこちらでは仕事をさせて頂けないのですもの。』

エレノアは考えながら尚も

『よし、分かった。後は任せて!』

ヴェルヘルト騎士団に告げると屋敷に戻ろうと踵を返したその時、またも帝国騎士とどこぞやらの騎士に向き直し


『後、貴方と貴方と貴方。それと…貴方かしら。』

騎士たちを見ながら


『まずは我らの騎士団に詫びなさい。貴方方の話しはあまりに礼を欠いているわ。特に帝国騎士であろうお方が何とも無礼な。

ここに居るヴェルヘルト騎士団はまだ騎士になって日も浅く若い者が多いわ。偉大な帝国騎士から多くを吸収させて頂きたい所、この実態。がっかりだわ!

彼らは命を掛けてヴェルヘルトを守るが使命。ならばヴェルヘルトは命を掛けて彼らのプライドを守るわ!』

エレノアの怒りにも勝る抗議にヴェルヘルト騎士らは熱く込み上げてくるものを感じ、一人の騎士が

『妃殿下!』

声をあげると、たちまち妃殿下コールが湧き上がった。


帝国騎士らは驚いたように目を見開き固まっていると帝国の騎士団長であろう男が駆け寄って来てエレノアに


『大変失礼をいたしました。』


ひざまずくと深く頭を下げた。エレノアはその騎士団長を真っ直ぐ捉えると

『確か、アーノルドだったかしら?』

男は俯いたままに

『はっ』

と返す。


『迎賓館のご用意は出来るかしら?』


『その必要はございません。どうぞお好きな所へヴェルヘルト騎士団を配置下さいませ。』

男は顔をあげると後ろで突っ立っている騎士らを睨みつけると帝国騎士らを連れてその場を後にした。残されたどこぞの騎士らは逃げるように後を追って行った。


もはや出る幕を失ったテオドールとリロイは呆然としたまま屋敷に戻るとリロイは

『流石は姫。ハインリッヒ殿下の気持ちが分かるね。』


テオドールは驚いたようにリロイを見る。

…そうだった。リロイはハインリッヒ殿下の幼なじみで側近の一人。


『リロイは妃殿下とは?』

『直に話した事はないけどね、毎日殿下から聞いてるからね。』


…毎日?まぢで?

『そうか。』


『姫は最高だね。』

嬉しそうに語るリロイにテオドールは返す言葉が見つからない。


…また旅に出されるの?








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