愛するということ【完】

mako

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最終日の夜会にて①

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交流会の最終行事となる夜会が帝国挙げて盛大に執り行われるとなれば各国挙って着飾るもの。何故ならそれで、力の違いを見せつけるのだ。


エレノアも朝から磨かれ王太子妃として仕上げられている。


控え室までの案内にテオドールが扉をノックする。


…安定のアンバランスだろ?

テオドールの期待虚しくエレノアは凛と背筋を伸ばして椅子に腰掛けている。その後ろ姿にしばらく声を発するのを忘れていたテオドール。


『テオ、そろそろ?』


エレノアが我に返ったように微笑んだ。


『いや、まだ時間に余裕があるのでゆっくりでいいですよ?』


『ヤバい、緊張してきたわ。』


…緊張?あんたにそんな言葉あったのかい?

驚くテオドールは

『どうされました?いつもの妃殿下らしくありませんね?』

『だって帝国の公式の夜会よ?今まではアミュレット王女として扱われてきたけれど、やはりヴェルヘルト王太子妃となった今は扱われ方も違うもの。

いい意味でも悪い意味でもね。

でも、ここでの印象付けは私の最重要事項だもの。これはヴェルヘルトで待つ皆の未来をも掛かってるのよ?緊張もするわよ。』


…未来ってそんな大袈裟な。


『テオ、大袈裟って思ってるでしょう?私もそう思ってたの。だけどねこの立場になってみないと分からない事もあるのね。殿下はいつもこうして多くを背負われているのよ?』


…。

テオドールは言葉を失う。

『テオ!真面目な話しは似合わないって顔してるわよ?』


和やかなに笑うエレノアにテオドールは踏み込んだ問を投げかけていた。


『妃殿下、1つよろしいですか?』


エレノアは戯けながら


『1つと言わず何個でも!』


テオドールは小さく笑い


『妃殿下は様々なものに愛情を注がれております。大きく言えばアミュレットやヴェルヘルト。小さく言えばそこに住む会った事の無い民にまで。そして妃殿下に関わる全ての者まで。あらゆる愛をコンプリートされておられる妃殿下ですが、異性への愛はお持ちではないのですか?』

固まるエレノアにテオドールは我に返り

『妃殿下、失礼をいたしました。』


頭を下げるテオドールに


『テオ、謝る事ではないの。そうね、もちろん私にも、真実の愛はあるのよ?それが他の人とは違う比重なのかしらね?』 

…。真実の愛がある?それなのにヴェルヘルトへ?



『その真実の愛はよろしいのですか?』


思わず踏み込んでしまったテオドールにエレノアは首を傾げる。


『ですから真実の愛をあきらめても?』


エレノアはクスっと笑い



『テオ!貴方もなかなか失礼ね。諦めてはいないわよ?育んでるもの。』



…。えっと?話が見えないですが?ヴェルヘルトに愛を注ぎながら真実の愛も育む?え?待って。間接的な裏切り?え?愛を知りすぎているってそっち?気が多いって事なのか?



混乱するテオドールは尚も


『それって殿下への裏切りでは?ってか義務を果たせば後は自由ってそうゆう事?え?』


もはや心の声がダダ漏れで敬意も何も無くなっている。


しかし目の前のエレノアも混乱し目を白黒させている。


『待って、何故殿下への裏切りになるの?私は殿下の要求通り過ごしているけど?駄目だったの?』


『いやいや、いくら鬼のような要求でも…それに殿下は妃殿下に酷い要求をしておりますが殿下自身も他に側妃や妾が居るわけでもなく妃殿下を大切にされておられる訳で…』

ヴェルヘルト王太子側近ともあろうテオドールがシドロモドロでおかしくなっていた。


…。

『他の想い人ってどなた?』

『は?』

もはやテオドールは家臣でないようだ。


『整理するわよ?私の沢山ある愛の中に異性への愛もあるの。それは殿下よ?裏切りなの?』


…。は?


『へ?いやそれならば裏切りではないけれど…って、まぢで?ってかそれだと約束違反なのか?』


頭を悩ますテオドールに

『大丈夫。わたしのキャパは小さいから殿下には迷惑を掛けないもの。だから勝手にお慕いしてるだけで満足なの。見返りは必要ないの。これでも駄目?』


困り果てるエレノアの潤む瞳にテオドールは持って行かれそうになりながらも


『それなら大丈夫だ』


もはやどちらが上か分からない(笑)


…おいおい殿下。どうすんだ?


テオドールは我に返り


『妃殿下、そろそろ参りましょうか?』


エレノアを促すテオドールの視線がいつもよりあたたかく穏やかであった。







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