愛するということ【完】

mako

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兄弟

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久しぶりにウィリアムの私室にハインリッヒが前触れなしに入ってきた。


『入るよ!』

ハインリッヒは慣れた様にウィリアムの私室にあるグラスを2つ手に取ると、持参したワインを注ぎ入れた。


ウィリアムもソファに掛けると

『久々だな。前まで連日私を監視に来ていたのな。』


小さく笑うウィリアム。弟が自分のために背負おうとしている現実に胸が痛む。


ハインリッヒは幼き頃のような笑いをし


『また兄上は余計な事を考えてるね?ハロから聞いた。ハロの話しを補う為ここに来たんだ、ワイン持ってね!』


ウィリアムは小さく笑う。


『勘違いしないでほしい。私は兄上のためにエレノアを諦めたのでは無くただ振られただけ。エレノアは私の愛を感じる事さえない。それを愛とも気づかないもんね。強い義姉上だよ。完敗だね。』


ウィリアムは注がれたワインを口にする。


『それにシンシアを利用しているわけじゃないよ?私は兄上みたいな理不尽な要求はしないもん。ただ正直に自分の気持ちを話しただけだからね?』


ウィリアムはすかさず

『シンシア王女は納得したのか?』


ハインリッヒは

『したも何も寧ろノリノリだけど?流石は義姉上の姉上だよ。面白い。兄上夫婦も初めこそそこに愛など無かっであろう?そう、それこそ育んでいる訳だよね?私達はお互い良く似ている。育んでいける相手だと思ってるんだ。』

穏やかに話すハインリッヒ殿下を嬉しそうに見つめるウィリアム。


『それに私ほどの優秀な人材が次の後継者を作るだけの働きだなんて勿体ないよ?だから自分の力を活かせる場所でワタシも兄上のように輝きたいと思ってね。一応私もヴェルヘルト大王国の王子だからね?』


ウィリアムは大きく頷く。

『もちろんだ。お前はこの大王国の王太子である私と同じ血が通う弟だ。ヴェルヘルトの王太子にもなり得る男だからね。』

『兄上、アミュレットから理不尽な要求を好んで嫁いできた姫は、私たち兄弟に忘れかけていた大切な事までも運んで来てくれたようだね。』

ハインリッヒも嬉しそうに語る。ウィリアムは


『最後に聞かせてくれ。この婚儀はお前の幸せの為なのだね?私に忖度なくお前とシンシア王女の幸せな未来の為なのだな?』


念を押すウィリアムにハインリッヒは昔のようにウィリアムの横に座り肩を抱き

『何で僕が兄上の為に?僕は弟だからね?お兄ちゃんからしてもらう事はあっても僕がしてあげる事なんて無いよ?末っ子はワガママなんだ!エレノアと同じくね?これからも頼むよ?兄上!』


幼子のように笑うハインリッヒをウィリアムは心の底から愛おしくそして頼もしく思った。


…幸せになれよ。



ウィリアムの心の声に応えるようにハインリッヒは大きく頷いた。



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