41 / 61
面談
しおりを挟む
ウィリアムは目の前のハロルドに問う。
『ハロルド、どういう事だ?』
ウィリアムがハロルドをハロとは呼ばずハロルドと話す。これは家臣として問うておるのだ。
その事を理解しているハロルドは真っ直ぐにウィリアムを見る。
『ハロルド、お前は誰の家臣かな?ある時よりハインリとの距離が近くなり弟を支えてくれるお前には感謝している。』
ウィリアムはゆっくりとハロルドの表情の変化を1ミリも逃さぬ様に見ながら話している。
ハロルドは少し表情を和らげ
『殿下、私は昔から殿下の側近の一人でございます。』
『だな。』
ウィリアムも、納得の表情である。
『では聞くよ?私が何も気づいてないとでも思ってる?ハロ。』
忠誠を、再確認したウィリアムはいつもの口調に戻し問うた。
『いや、ウィルが私を注視していることは始めから分かっていたよ?我らが王太子だからね。欺けるなんて思ってないさ。』
ウィリアムは黙って聞いている。
『初めてハインリッヒ殿下の想いを聞いてテオとたまげたよ。もしかしたら愛を知らない妃殿下をハインリッヒ殿下はその力で愛を与えながら妃殿下のお心までもお掴みになったなら…』
『私は廃太子だね。』
ウィリアムはにっこり微笑む。
『ですが、ハインリッヒ殿下は身をもってお感じになられなたのでしょう。妃殿下の心に、夫は殿下しかいない事を。』
『さあ、どうかな?例えそうだとしてもそれでエレノアの姉上との結婚とは色々問題が山積していないか?まずシンシア殿が、何故この話しに乗ったのかだ?』
『シンシア王女は正直に話されたハインリッヒ殿下を尊重されたのでは?』
『…?そもそもハインリッヒは良いのか?あれ程エレノアにご執心であったではないか?』
『兄弟愛ではございませんか?』
ウィリアムは怪訝そうに
『待て待て、どういう事だ?それにエレノアが駄目ならシンシア殿ってどうなの?』
『殿下もそうでしたように、元々は政略結婚が常ですから。』
『ハインリとアミュレットの婚姻が両国にメリットなどあるか?』
ハロルドは背筋を伸ばしてはっきりと告げる。
『あります。』
…。
『ご報告が遅くなったのは私がハインリッヒ殿下なら同じ事をしたと思うからです。もちろんテオドールも同じでしょう。』
…?
『今のままのヴェルヘルトは毎日充実し楽しく時が過ぎております。ですが、ここはヴェルヘルト大王国の中枢でもある王太子執務室。仲良しこよしでは済まされない場所。
その上、殿下と妃殿下の仲は初めこそあんなでしたがこの所すこぶる良好。何もハインリッヒ殿下が代継を担わなくてもとお考えになるのは普通でしょう?』
…。
押し黙るウィリアム。
『ハインリッヒ殿下は自らヴェルヘルトの代継を残せないお立ち場になられ殿下の背中を押されたという事。』
『待て、ならばそう話せばよい。何もアミュレットまで巻き込む事はなかろう。』
『殿下、ハインリッヒ殿下が殿下に勝るとも劣らない力をお持ちなのはご存知ですね?その彼が殿下の留守を守る中、統率者の醍醐味に魅力されたのでは?』
『…。だとしても。』
『まぁ、それだけではないでしょう。実際、妃殿下のお言葉を借りれば、そのシンシア王女がおかしくなられた姿をご自分が自暴自棄になっておられた頃と重なる部分があったのかも知れません。その上シンシア王女は美しいお方ですからね。』
『…。』
ここまで話すとハロルドは、目の前のカップを手に取り優雅に口に流し込んだ。
『で?ウィルはどうするの?』
ニヤリと笑うハロルドにウィリアムは怪訝そうに睨みつけた。
『ハロルド、どういう事だ?』
ウィリアムがハロルドをハロとは呼ばずハロルドと話す。これは家臣として問うておるのだ。
その事を理解しているハロルドは真っ直ぐにウィリアムを見る。
『ハロルド、お前は誰の家臣かな?ある時よりハインリとの距離が近くなり弟を支えてくれるお前には感謝している。』
ウィリアムはゆっくりとハロルドの表情の変化を1ミリも逃さぬ様に見ながら話している。
ハロルドは少し表情を和らげ
『殿下、私は昔から殿下の側近の一人でございます。』
『だな。』
ウィリアムも、納得の表情である。
『では聞くよ?私が何も気づいてないとでも思ってる?ハロ。』
忠誠を、再確認したウィリアムはいつもの口調に戻し問うた。
『いや、ウィルが私を注視していることは始めから分かっていたよ?我らが王太子だからね。欺けるなんて思ってないさ。』
ウィリアムは黙って聞いている。
『初めてハインリッヒ殿下の想いを聞いてテオとたまげたよ。もしかしたら愛を知らない妃殿下をハインリッヒ殿下はその力で愛を与えながら妃殿下のお心までもお掴みになったなら…』
『私は廃太子だね。』
ウィリアムはにっこり微笑む。
『ですが、ハインリッヒ殿下は身をもってお感じになられなたのでしょう。妃殿下の心に、夫は殿下しかいない事を。』
『さあ、どうかな?例えそうだとしてもそれでエレノアの姉上との結婚とは色々問題が山積していないか?まずシンシア殿が、何故この話しに乗ったのかだ?』
『シンシア王女は正直に話されたハインリッヒ殿下を尊重されたのでは?』
『…?そもそもハインリッヒは良いのか?あれ程エレノアにご執心であったではないか?』
『兄弟愛ではございませんか?』
ウィリアムは怪訝そうに
『待て待て、どういう事だ?それにエレノアが駄目ならシンシア殿ってどうなの?』
『殿下もそうでしたように、元々は政略結婚が常ですから。』
『ハインリとアミュレットの婚姻が両国にメリットなどあるか?』
ハロルドは背筋を伸ばしてはっきりと告げる。
『あります。』
…。
『ご報告が遅くなったのは私がハインリッヒ殿下なら同じ事をしたと思うからです。もちろんテオドールも同じでしょう。』
…?
『今のままのヴェルヘルトは毎日充実し楽しく時が過ぎております。ですが、ここはヴェルヘルト大王国の中枢でもある王太子執務室。仲良しこよしでは済まされない場所。
その上、殿下と妃殿下の仲は初めこそあんなでしたがこの所すこぶる良好。何もハインリッヒ殿下が代継を担わなくてもとお考えになるのは普通でしょう?』
…。
押し黙るウィリアム。
『ハインリッヒ殿下は自らヴェルヘルトの代継を残せないお立ち場になられ殿下の背中を押されたという事。』
『待て、ならばそう話せばよい。何もアミュレットまで巻き込む事はなかろう。』
『殿下、ハインリッヒ殿下が殿下に勝るとも劣らない力をお持ちなのはご存知ですね?その彼が殿下の留守を守る中、統率者の醍醐味に魅力されたのでは?』
『…。だとしても。』
『まぁ、それだけではないでしょう。実際、妃殿下のお言葉を借りれば、そのシンシア王女がおかしくなられた姿をご自分が自暴自棄になっておられた頃と重なる部分があったのかも知れません。その上シンシア王女は美しいお方ですからね。』
『…。』
ここまで話すとハロルドは、目の前のカップを手に取り優雅に口に流し込んだ。
『で?ウィルはどうするの?』
ニヤリと笑うハロルドにウィリアムは怪訝そうに睨みつけた。
12
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
完璧すぎると言われ婚約破棄された令嬢、冷徹公爵と白い結婚したら選ばれ続けました
鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎて、可愛げがない」
その理不尽な理由で、王都の名門令嬢エリーカは婚約を破棄された。
努力も実績も、すべてを否定された――はずだった。
だが彼女は、嘆かなかった。
なぜなら婚約破棄は、自由の始まりだったから。
行き場を失ったエリーカを迎え入れたのは、
“冷徹”と噂される隣国の公爵アンクレイブ。
条件はただ一つ――白い結婚。
感情を交えない、合理的な契約。
それが最善のはずだった。
しかし、エリーカの有能さは次第に国を変え、
彼女自身もまた「役割」ではなく「選択」で生きるようになる。
気づけば、冷徹だった公爵は彼女を誰よりも尊重し、
誰よりも守り、誰よりも――選び続けていた。
一方、彼女を捨てた元婚約者と王都は、
エリーカを失ったことで、静かに崩れていく。
婚約破棄ざまぁ×白い結婚×溺愛。
完璧すぎる令嬢が、“選ばれる側”から“選ぶ側”へ。
これは、復讐ではなく、
選ばれ続ける未来を手に入れた物語。
---
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
婚約破棄されたので隣国に逃げたら、溺愛公爵に囲い込まれました
鍛高譚
恋愛
婚約破棄の濡れ衣を着せられ、すべてを失った侯爵令嬢フェリシア。
絶望の果てに辿りついた隣国で、彼女の人生は思わぬ方向へ動き始める。
「君はもう一人じゃない。私の護る場所へおいで」
手を差し伸べたのは、冷徹と噂される隣国公爵――だがその本性は、驚くほど甘くて優しかった。
新天地での穏やかな日々、仲間との出会い、胸を焦がす恋。
そして、フェリシアを失った母国は、次第に自らの愚かさに気づいていく……。
過去に傷ついた令嬢が、
隣国で“執着系の溺愛”を浴びながら、本当の幸せと居場所を見つけていく物語。
――「婚約破棄」は終わりではなく、始まりだった。
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる