愛するということ【完】

mako

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王子誕生

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アルビオンとリネットが帝国に戻ってからは、ようやくヴェルヘルトにも日常が戻ってきた。

エレノアは既にお腹も大きくなりウィリアムの過保護が日に日に増していたのである。


『エレノア、どこへ?』


エレノアがどこに行くにも側近では無く、御自ら後を追う様になっている。


…子どもの後追いかよ。

テオドールは毎度ながらため息を付きながらウィリアムとエレノアの背中を見送る。


『テオ、お前もいい加減慣れたらどうだ?』


ハロルドが書類から目を離さず声を掛けると

『我が国の王太子だぜ?何故に妃殿下のトイレまで付き添うかな?流石にもう慣れただろ?この広い王宮も…。』


ハロルドはようやくテオドールを見ると


『誰が連れてきた妃殿下だよ。』


…。


『でも、お前の1番の功績だぞ?あの妃殿下は。』


ハロルドが微笑みながら思い出した様に語ると


『初めはどうなるかとハラハラしたけどな?』

テオドールもニヤリと笑いハロルドを見る。



平和な日常。王太子が妃殿下と仲良くお手洗い。こんな平和がどこにあるか…。

2人は妃殿下がもたらしたヴェルヘルトの日常に笑みを溢さすにはいられなかった。




ある晴れた朝。エレノアは下腹部に鈍痛を感じ目を覚ました。


ベッドから天井を見上げるエレノアはいまだかつて無い緊張を覚えた。


…いよいよかしら?


隣で寝るウィリアムを見ると幸せそうに寝ている。起こさない様にそっと起き上がると、心の準備を整えた。


…さぁ、こい。

死ぬ程苦しいと聞く。されど母は誰もが通る道。エレノアはしっかり目を見開き定期的に来る痛みを感じある種の幸せを噛み締めた。


『エレノア?』


ウィリアムが目を覚ました時には既にエレノアの痛みの間隔が短くなってきていた。
ウィリアムは苦しそうにするエレノアを見ると、飛び起きすぐに声をあげた。



『誰か!誰かおらぬか!』


慌ただしくなる王宮、1人エレノアは落ち着いていた。


『殿下、落ち着いてください。私はどこも悪くはございません。母になる者ならば誰でも通る道。これを越えれば幸せが待っておりますわ!』


戦にでも出る様な勇ましさでウィリアムを宥める。


ウィリアムは何度も頷き、部屋の中を徘徊するしか出来ない。


そこへ側近2人がノックも前触れもなく飛び込んで来ると


『妃殿下!』


テオドールはウィリアムを素通りしエレノアの元へ走るとそれに続くようにハロルドも


『妃殿下、我々が付いております!』


…。

ウィリアムは1人手持ち無沙汰に3人を見つめる。


『お、おい!エレノアには私が付いている!』


ウィリアムも競う様にエレノアの横を陣取ろうとするも


『殿下は何も出来ずウロウロしていただけでしょう?』


ハロルドの辛辣な言葉に追い打ちを掛けるように


『ウィルはゆっくりしてればよいよ。我々が妃殿下に付いているから。』


テオドールはもはや敬意をどこかに置き忘れている。



『おい!エレノアの手を握るのは私はの役目だ!』


ウィリアムがテオドールからエレノアの手を引き離すとエレノアの顔が痛みに歪む。


『ほら!妃殿下が苦しそうだ!』


テオドールの言葉にウィリアムはサッと手を離すとすかさずテオドールが握る。目を見開きテオドールを見つめ

『いやいやおかしいであろう?』


ウィリアムがまたもエレノアの手を取ろうとした時ハロルドがもう片方の手を握っているのを見つける。


『お前たち、どさくさに紛れて私の妻の…』




『3人とも部屋からお出になって下さい!』


医師のカミナリを受け、大人しく廊下に出されたヴェルヘルト王太子と側近2人であった。





どれだけの時間が過ぎたであろうか。3人は同じ体勢のまま椅子に腰を下ろし同じ表情で扉を見つめている。

護衛騎士らは不思議そうに3人を見るも何も見ていない体で護衛を行う。流石はプロである。少なくとも今のこの3人よりは仕事が出来る男である。





『ほぎゃっ…』


…。固まる3人の耳は澄まされる。


『ほぎゃっほぎゃっホギャー!』


元気に泣く声を聞くと3人は立場も忘れて声を挙げ抱き合った。流石の護衛らも今回ばかりは皆、声を挙げて歓喜を挙げた。



…。



誰もが職務を全う出来ていないヴェルヘルト王宮であった。


この日誕生した赤子は元気な王子であった。正真正銘ウィリアムとエレノアのお子、生粋の後継者誕生である。






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