17 / 45
王太子妃の執務室
しおりを挟む
イングリットが嫁いで半年余りが過ぎた王太子妃の執務室。すっかり仲良しこよしとなった2人は今日も楽しそうに執務を終えてソファでお茶を飲んでいる。ちなみに本日の天候は雨。ガゼボテラスへのお出かけお茶会は中止である。
アルベルトはアンドレを伴い、イングリットの執務室へと足を運んでいた。2人にとって気乗りはしないが確認事項がありわざわざ雁首揃えて無言で向かう。
…。
…。
こうしてみると、普段感じた事など無かったが、えらく廊下が長い。イングリットの部屋の前まで来ると衛兵らが頭を垂れた。
アンドレはノックをしようとした時、部屋の中から2人の空気とは裏腹に楽しそうな笑い声が漏れて来た。
…。
…。
『秘密よ!』
イングリットの声に2人は視線を合わせ固まった。
…何?
…秘密?
『王女はそんなに自由気ままな生活なのですか?』
『他国は知らないわよ?バイエルンは特殊よ。なんてたって揃いも揃って強欲で土地争いしか頭に無いのよ。でもね、揃いも揃って皆、私の事を金の掛かる姫だと思ってるのよ?』
『何故ですか?』
『うふふ、だって私、王女に充てがわれるお金の殆どキレイに使ってたからね?』
『金、掛かってるじゃないですか!』
『いいえ、私の為に使う事など無かったわよ?全て投資に回してるの。そしていつか多くの孤児院を作るのが私の夢。いいえ違うか…多くの孤児院だと多くの孤児を待ち望んでいるみたいになるわね…。うん、多くのではなくて充実した孤児院を作るのが私の夢。だからね、輿入れの際のドレスや宝飾などは最高級品なのよ、だって売れるでしょう(笑)?』
…。
『妃殿下、素晴らしい志ではありますが…もう少しアンドレ様と上手くやられてはいかかですか?なんだか天敵のようですよ?』
アレクセイの言葉に扉の向こうのアンドレは眉間にシワを刻んだ。
『オルコック公爵家の嫡男ね。オルコック公爵家は安泰だわ。あのような優れた嫡男が居るのだから。』
『妃殿下…。妃殿下はアンドレ殿をお嫌いなのでは?』
『え?好きも嫌いも無いわよ?だってまだ彼の人となりも知らないもの。ただ分かるのは彼のあの私への態度は殿下を思えばこそだわ。私は感謝こそしても嫌う事は無いわ。』
『感謝ですか?』
『そうよ。感謝でしょう?殿下は私の夫だもの。その夫を支える男として彼以上の人材は居ないわ。』
『夫…。』
『何よ!政略結婚、でもないか。何にせよ縁が合って夫婦となったのよ?最も彼にとっては迷惑な話しでしょうけど。きっと彼はこれが無ければ妻帯するつもりなど無かったはずよ。』
扉の向こうでアルベルトは俯いていた顔を上げた。
『どこの国でもある他国の機密情報を多く保管してある書庫は王族しか立ち入れないでしょ?そして私は王族。もちろんヴェルニ王国だけを調べてたんじゃないわよ?大陸の殆どの国を勉強したわ。だって王女教育で学ぶ社会情勢なんてバイエルン視点でしょ?あんなのアテにならないし洗脳みたいなものよ(笑)だから事実だけの情報を調べてたの。』
『それと殿下の妻帯とどう関係あるのです?』
『ある、ある。だって彼の境遇は私と似ているもの。私は兄弟揃って同じ両親だけれど孤独という点では同じだわ。幼き頃の孤独はね…癒える事はないわ。ってべつに卑屈になっているわけじゃなくてね?彼だってそうだわ。氷の王太子と言われる所以はそうならざるを得なかった。という事だと思うの。』
『妃殿下、貴女はツンデレなのですか?』
『は?アレク。離宮王女を舐めんなよ(笑)』
2人の声が一層大きく響き渡ると扉の向こうの2人は揃って踵を返し再び長い廊下を戻って言った。
…。
…。
アルベルトはアンドレを伴い、イングリットの執務室へと足を運んでいた。2人にとって気乗りはしないが確認事項がありわざわざ雁首揃えて無言で向かう。
…。
…。
こうしてみると、普段感じた事など無かったが、えらく廊下が長い。イングリットの部屋の前まで来ると衛兵らが頭を垂れた。
アンドレはノックをしようとした時、部屋の中から2人の空気とは裏腹に楽しそうな笑い声が漏れて来た。
…。
…。
『秘密よ!』
イングリットの声に2人は視線を合わせ固まった。
…何?
…秘密?
『王女はそんなに自由気ままな生活なのですか?』
『他国は知らないわよ?バイエルンは特殊よ。なんてたって揃いも揃って強欲で土地争いしか頭に無いのよ。でもね、揃いも揃って皆、私の事を金の掛かる姫だと思ってるのよ?』
『何故ですか?』
『うふふ、だって私、王女に充てがわれるお金の殆どキレイに使ってたからね?』
『金、掛かってるじゃないですか!』
『いいえ、私の為に使う事など無かったわよ?全て投資に回してるの。そしていつか多くの孤児院を作るのが私の夢。いいえ違うか…多くの孤児院だと多くの孤児を待ち望んでいるみたいになるわね…。うん、多くのではなくて充実した孤児院を作るのが私の夢。だからね、輿入れの際のドレスや宝飾などは最高級品なのよ、だって売れるでしょう(笑)?』
…。
『妃殿下、素晴らしい志ではありますが…もう少しアンドレ様と上手くやられてはいかかですか?なんだか天敵のようですよ?』
アレクセイの言葉に扉の向こうのアンドレは眉間にシワを刻んだ。
『オルコック公爵家の嫡男ね。オルコック公爵家は安泰だわ。あのような優れた嫡男が居るのだから。』
『妃殿下…。妃殿下はアンドレ殿をお嫌いなのでは?』
『え?好きも嫌いも無いわよ?だってまだ彼の人となりも知らないもの。ただ分かるのは彼のあの私への態度は殿下を思えばこそだわ。私は感謝こそしても嫌う事は無いわ。』
『感謝ですか?』
『そうよ。感謝でしょう?殿下は私の夫だもの。その夫を支える男として彼以上の人材は居ないわ。』
『夫…。』
『何よ!政略結婚、でもないか。何にせよ縁が合って夫婦となったのよ?最も彼にとっては迷惑な話しでしょうけど。きっと彼はこれが無ければ妻帯するつもりなど無かったはずよ。』
扉の向こうでアルベルトは俯いていた顔を上げた。
『どこの国でもある他国の機密情報を多く保管してある書庫は王族しか立ち入れないでしょ?そして私は王族。もちろんヴェルニ王国だけを調べてたんじゃないわよ?大陸の殆どの国を勉強したわ。だって王女教育で学ぶ社会情勢なんてバイエルン視点でしょ?あんなのアテにならないし洗脳みたいなものよ(笑)だから事実だけの情報を調べてたの。』
『それと殿下の妻帯とどう関係あるのです?』
『ある、ある。だって彼の境遇は私と似ているもの。私は兄弟揃って同じ両親だけれど孤独という点では同じだわ。幼き頃の孤独はね…癒える事はないわ。ってべつに卑屈になっているわけじゃなくてね?彼だってそうだわ。氷の王太子と言われる所以はそうならざるを得なかった。という事だと思うの。』
『妃殿下、貴女はツンデレなのですか?』
『は?アレク。離宮王女を舐めんなよ(笑)』
2人の声が一層大きく響き渡ると扉の向こうの2人は揃って踵を返し再び長い廊下を戻って言った。
…。
…。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
キズモノ令嬢絶賛発情中♡~乙女ゲームのモブ、ヒロイン・悪役令嬢を押しのけ主役になりあがる
青の雀
恋愛
侯爵令嬢ミッシェル・アインシュタインには、れっきとした婚約者がいるにもかかわらず、ある日、突然、婚約破棄されてしまう
そのショックで、発熱の上、寝込んでしまったのだが、その間に夢の中でこの世界は前世遊んでいた乙女ゲームの世界だときづいてしまう
ただ、残念ながら、乙女ゲームのヒロインでもなく、悪役令嬢でもないセリフもなければ、端役でもない記憶の片隅にもとどめ置かれない完全なるモブとして転生したことに気づいてしまう
婚約者だった相手は、ヒロインに恋をし、それも攻略対象者でもないのに、勝手にヒロインに恋をして、そのためにミッシェルが邪魔になり、捨てたのだ
悲しみのあまり、ミッシェルは神に祈る「どうか、神様、モブでも女の幸せを下さい」
ミッシェルのカラダが一瞬、光に包まれ、以来、いつでもどこでも発情しっぱなしになり攻略対象者はミッシェルのフェロモンにイチコロになるという話になる予定
番外編は、前世記憶持ちの悪役令嬢とコラボしました
伝える前に振られてしまった私の恋
喜楽直人
恋愛
第一部:アーリーンの恋
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
第二部:ジュディスの恋
王女がふたりいるフリーゼグリーン王国へ、十年ほど前に友好国となったコベット国から見合いの申し入れがあった。
周囲は皆、美しく愛らしい妹姫リリアーヌへのものだと思ったが、しかしそれは賢しらにも女性だてらに議会へ提案を申し入れるような姉姫ジュディスへのものであった。
「何故、私なのでしょうか。リリアーヌなら貴方の求婚に喜んで頷くでしょう」
誰よりもジュディスが一番、この求婚を訝しんでいた。
第三章:王太子の想い
友好国の王子からの求婚を受け入れ、そのまま攫われるようにしてコベット国へ移り住んで一年。
ジュディスはその手を取った選択は正しかったのか、揺れていた。
すれ違う婚約者同士の心が重なる日は来るのか。
コベット国のふたりの王子たちの恋模様
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
無実の令嬢と魔法使いは、今日も地味に骨折を治す
月山 歩
恋愛
舞踏会の夜、階段の踊り場である女性が階段を転げ落ちた。キャロライナは突き落としたと疑いをかけられて、牢へ入れられる。家族にも、婚約者にも見放され、一生幽閉の危機を、助けてくれたのは、見知らぬ魔法使いで、共に彼の国へ。彼の魔法とキャロライナのギフトを使い、人助けすることで、二人の仲は深まっていく。
わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。
離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。
王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。
アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。
断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。
毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。
※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。
※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる