人質王太子妃【完】

mako

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王太子妃の執務室

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イングリットが嫁いで半年余りが過ぎた王太子妃の執務室。すっかり仲良しこよしとなった2人は今日も楽しそうに執務を終えてソファでお茶を飲んでいる。ちなみに本日の天候は雨。ガゼボテラスへのお出かけお茶会は中止である。





アルベルトはアンドレを伴い、イングリットの執務室へと足を運んでいた。2人にとって気乗りはしないが確認事項がありわざわざ雁首揃えて無言で向かう。


…。


…。



こうしてみると、普段感じた事など無かったが、えらく廊下が長い。イングリットの部屋の前まで来ると衛兵らが頭を垂れた。


アンドレはノックをしようとした時、部屋の中から2人の空気とは裏腹に楽しそうな笑い声が漏れて来た。


…。


…。








『秘密よ!』

イングリットの声に2人は視線を合わせ固まった。


…何?

…秘密?







『王女はそんなに自由気ままな生活なのですか?』


『他国は知らないわよ?バイエルンは特殊よ。なんてたって揃いも揃って強欲で土地争いしか頭に無いのよ。でもね、揃いも揃って皆、私の事を金の掛かる姫だと思ってるのよ?』


『何故ですか?』 


『うふふ、だって私、王女に充てがわれるお金の殆どキレイに使ってたからね?』


『金、掛かってるじゃないですか!』


『いいえ、私の為に使う事など無かったわよ?全て投資に回してるの。そしていつか多くの孤児院を作るのが私の夢。いいえ違うか…多くの孤児院だと多くの孤児を待ち望んでいるみたいになるわね…。うん、多くのではなくて充実した孤児院を作るのが私の夢。だからね、輿入れの際のドレスや宝飾などは最高級品なのよ、だって売れるでしょう(笑)?』


…。



『妃殿下、素晴らしい志ではありますが…もう少しアンドレ様と上手くやられてはいかかですか?なんだか天敵のようですよ?』



アレクセイの言葉に扉の向こうのアンドレは眉間にシワを刻んだ。






『オルコック公爵家の嫡男ね。オルコック公爵家は安泰だわ。あのような優れた嫡男が居るのだから。』


『妃殿下…。妃殿下はアンドレ殿をお嫌いなのでは?』


『え?好きも嫌いも無いわよ?だってまだ彼の人となりも知らないもの。ただ分かるのは彼のあの私への態度は殿下を思えばこそだわ。私は感謝こそしても嫌う事は無いわ。』


『感謝ですか?』


『そうよ。感謝でしょう?殿下は私の夫だもの。その夫を支える男として彼以上の人材は居ないわ。』


『夫…。』


『何よ!政略結婚、でもないか。何にせよ縁が合って夫婦となったのよ?最も彼にとっては迷惑な話しでしょうけど。きっと彼はこれが無ければ妻帯するつもりなど無かったはずよ。』




扉の向こうでアルベルトは俯いていた顔を上げた。


『どこの国でもある他国の機密情報を多く保管してある書庫は王族しか立ち入れないでしょ?そして私は王族。もちろんヴェルニ王国だけを調べてたんじゃないわよ?大陸の殆どの国を勉強したわ。だって王女教育で学ぶ社会情勢なんてバイエルン視点でしょ?あんなのアテにならないし洗脳みたいなものよ(笑)だから事実だけの情報を調べてたの。』

『それと殿下の妻帯とどう関係あるのです?』


『ある、ある。だって彼の境遇は私と似ているもの。私は兄弟揃って同じ両親だけれど孤独という点では同じだわ。幼き頃の孤独はね…癒える事はないわ。ってべつに卑屈になっているわけじゃなくてね?彼だってそうだわ。氷の王太子と言われる所以はそうならざるを得なかった。という事だと思うの。』


『妃殿下、貴女はツンデレなのですか?』


『は?アレク。離宮王女を舐めんなよ(笑)』


2人の声が一層大きく響き渡ると扉の向こうの2人は揃って踵を返し再び長い廊下を戻って言った。


…。



…。

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