人質王太子妃【完】

mako

文字の大きさ
21 / 45

犬猿の仲

しおりを挟む
イングリットの顔を見ればしかめっ面になる男。アンドレ・フォン・オルコック。その男がまさかのまさか、イングリットの執務室のドアをノックした。


アレクセイは驚いたように固まるもすぐにイングリットに視線を置くとイングリットもまた驚いたようにぎこちない笑顔でアンドレを迎えた。


『無理はなさらなくとも結構。』


言葉短くアンドレはソファへと腰を下ろした。お前も来いという意味だ。イングリットは慌ててアンドレの前に座ると背筋を伸ばしてアンドレの言葉を待った。アンドレの口から出た言葉はイングリットが予想もしない内容であった。


『妃殿下、申し訳ありません。』


…?


…?


押し黙る2人に視線を這わすとアンドレは続けた。


『ブロワ公爵の件、お時間が掛かっておりご迷惑をおかけしております。』


イングリットは安堵の笑みを浮かべると


『なんだそんな事かぁ。あぁ驚いちゃったじゃない?ブロワ公爵のセレンの葉の代替品の事ね。どうせ調査に入れないのでしょう?機密事項とか言って。だからと言って王命が出せるわけが無いとなると無理に決まってるわ。』



アンドレは驚いたように目を見開いた。


『で、ですが妃殿下は…』


『あはははあれはね、はったりよ?私だって本当にセレンの葉を見せて貰えるだなんて思ってないのよ。見なくても分かるけどね?だけどあれでも抑制にはなるでしょう?ヴェルニ王国の公爵家が代替品を使ってるなんてマズイもの。あまりに他国への輸出が増えればやがてどこかの国が私のように不信に思うはずよ。そうなってからでは遅いの。だからはったりをかましたの(笑)』



そう言うとケラケラと笑い出したイングリットを不思議な生き物を見るかのようにアンドレは見つめていた。


『で、アンドレ。時間が掛かっているという事は私に借りがあるということね?』



…?借り?さっきまでの言葉からして借りなのか?


『だから借りを返すと思ってお願いがあるの!』



アンドレにとって初めて見るイングリットの素の姿。アンドレはあからさまに驚きアレクセイを見た。アレクセイはもちろん慣れた様子で笑っているではないか。


…。嫌な汗が出てきた…。


アンドレは眉間にシワを刻んだ。



『なに、簡単な事よ?』


ニヤリと笑うイングリットの顔がいつも似まして怖かった(笑)


アレクセイは肩を揺らして笑っている。


アンドレは大きくため息を付いて目の前でにこやかに微笑む王太子妃にゆっくりと頷いたのであった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

【完結】ぐーたら令嬢は北の修道院で狂犬を飼う

たちばな立花
恋愛
三度の飯より昼寝が好きな公爵令嬢ミランダは、王太子のイーサンに婚約破棄され、北の修道院へと入った。 ひょんなことからミランダは修道院の近くの塔に幽閉されている、王族のオルトを救い出したのだが、彼にとても気に入られ――!?

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

だってわたくし、悪女ですもの

さくたろう
恋愛
 妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。  しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。 小説家になろう様にも投稿しています。

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

水川サキ
恋愛
家族にも婚約者にも捨てられた。 心のよりどころは絵だけ。 それなのに、利き手を壊され描けなくなった。 すべてを失った私は―― ※他サイトに掲載

処理中です...