婚約破棄から始まる物語【完】

ロマニア王国夜会

ロマニア王国の夜会が開かれる日、朝から慌ただしく王宮は動き出す。もちろんステファニーチームも同様の事。

ステファニーが１人で、なんちゃって悪女令嬢をしている中、メアリー率いる侍女たちがテキパキとこれまたなんちゃって王妃に仕上げていく。


『メアリー、今日は気合いを入れて臨まなくてはなりませんの。貴女たちの力を貸してくれないかしら？』


‥


『ねえ、意地悪しないで相手をしてよ～』


『ステファニー様、それはもしや悪女令嬢ゴッコとやらですか？そのような生ぬるい悪女なんぞ存在しませんですわ！まだまだですね!』


辛辣な言葉にわかりやすく落ち込むステファニー。


‥

『まあ、そこがステファニー様の良いところでもありますわ』

フォローを忘れないメアリーにどこからともなく現れたフレディックが

『流石はメアリー。相変わらずの腕前と口だね。』

ステファニーを見て満足そうなフレディック。

『ステファニー、君は本当に何者なの？今日はまた新たに見せるね！』

先日はアレクセイ好みのパステルカラーのシフォンのドレスで可愛らしい令嬢であった。

本日は真紅のベルベットのドレスにハーフアップ。
首にはレオナルドの瞳の色でとあるコバルトブルーの宝石がきらびやかに輝いている。


『今日は大役ですからね』

満面の笑みで答えるステファニー。

『期待しているよ。』

フレディックは満足そうに微笑み、ステファニーをエスコートしレオナルドの待つ部屋まで案内をした。




部屋に入るとレオナルドは既に準備を終えており、慌てたステファニーは

『お待たせして申し訳ありません』

と頭を下げるも、返答がない。


恐る恐る顔を上げると、レオナルドは驚き目を丸くしている。


『大成功かな？』

フレディックはこれまた満足気に言った。

その横には同じ目を見開くファビウス。


‥令嬢はわからん。



レオナルドはステファニーをエスコートし会場に向う。


『大丈夫か？』

前を見たままステファニー二声を掛ける。

ステファニーは

『はい』

短く答える。


しばらくの沈黙の後、会場の扉はファンファーレと共に開かれた。

一斉に集まる視線を全身に浴び２人は前に歩みを進める。

会場で見守るフレディックさえも、想像以上の２人の貫禄にしばらく身動きが取れずにいた。


レオナルドが中央まで来ると


『今宵は私の婚約者を紹介する。ステファニーだ。』


ステファニーは会場をゆっくりと見渡し小さく微笑んだ。

『ステファニー・バーナディント申します。』

あまりの美しさに会場は静まり返るがすぐに割れんばかりの拍手が止むことはなかった。