婚約破棄から始まる物語【完】

mako

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ロマニア王国からの招待状

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メープル王国にロマニア王国から結婚式の招待状が届けられた。そこにはステファニーからカキツバタの押し花があった。

それを見たアナスタージアは

『幸せはきっと来る。』

アレクセイとレイモンドは不思議そうに顔を見合わせる。

『ステファニー様からの花言葉ですわ。』

2人は納得したかのようにアナスタージアを見た。

いつものように執務室に3人でこもり執務を行っている。


一方のヴィクトリアは暇をもてあまし、視察と名を打って街に繰り出す日々であった。


レイモンドは視察に出掛けるヴィクトリアを捕まえ、ロマニア王国からの結婚式の話をする。


『まあ、それではドレスの用意が必要ね』

意気込むヴィクトリアにレイモンドは

『困った事にロマニア王国の参列者一覧には北側の国が多くあり、様々な言語が入り交じりますが、ヴィクトリア様は何ヵ国語いけますか?』


『は?』
意味の分からないヴィクトリアは素直に口にした。


『ですから、ヴィクトリア様は何ヵ国語お話になりますか?』

『何ヵ国語って、私は母国語しか話さないわ。私は王太子妃よ。向こうが合わせるわ!』


『ヴィクトリア様、参列者は皆王族。メープル王国母国語に合わせてくれは無理ですが?』


『私たちの結婚式にはそんか事無かったじゃない?』


『我が国の参列者はほとんど我が国と同じ公用語ですからね?』


『ロマニア王国もそうすればいいじゃない!』


ここまで来ると話がおかしくなってくる。

『真面目に話してくれ』

レイモンドは遂に本音で語る。


『真面目も真面目、大真面目よ!』


大きな溜息を吐き出しレイモンドは

『では、結婚式までに3カ国語はマスターして下さい。』


『はあ?無理よ。どうしてロマニア王国のためにそんな苦労をしなければならないの?』


『ロマニア王国の為では無く‥王族ならばそれくらい皆様お話になります。出来ないのは貴女の怠惰ですよ。時間ならいくらでもお有りでしょう?』


真っ赤になるヴィクトリアはレイモンドを睨み付け
私室の扉を大きな音を立てて締めた。

『フゥ~』

大きな息を吐き出したレイモンドであった。




執務室に戻ったレイモンドはアレクセイに問う。


『アレク、王族なら何ヵ国語くらい話せる?』


唐突に聞くレイモンドを怪訝な表情で見上げるアレクセイ。

『何?いきなり‥普通かどうかは知らないけど、私は7カ国語くらいかな?レイもそのくらいは話せるだろう?』


レイモンドは黙ったままアナスタージアを見る。

『私もそのくらいでしょうか?』




『私もだ。』
レイモンドは呟く様に言う。



『だから何?話が見えないけど?』

アレクセイは立ち上がりソフィアに腰を下ろした。


『アレがね。母国語しか話せないとさ。』


固まる2人を横目にレイモンドはおもむろに溜息をついた。






重い空気はしばらく続いたのであった。
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