婚約破棄から始まる物語【完】

mako

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ロマニア王国結婚式

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『ステフ、美しい‥』

レオナルドはステファニーを見て開口一番呟いた。

フレディックは

『分かった、分かったからとにかくレオも準備してくれ。』


時間配分に追われるフレディックは2人を離しレオナルドを急かす。


『ファビウス、後頼んだぞ。』


フレディックは参列者の確認をしに、庭に出る。


『これはこれは。』

フレディックが声を掛けるとレイモンドはベンチから顔を上げた。


『フレディック殿か。』


『どうされた?お疲れのご様子。』


『察してくれ。』


『だな。』


いつものペースに戻ると

『で?女狐は元気か?』

フレディックは女狐こと、ヴィクトリアを探すふりをして見せる。

『元気過ぎだ‥しかし今回はお留守番ってとこだな。』

『アレクセイ殿下はお一人で?』


『いや、側妃な話は聞いておろう?』

『アナスタージア様か?』

『相変わらず早いな』


レイモンドはフレディックの顔を見上げた。

『彼女はレオナルド様の正妃候補として調べていた頃があってね。』


『レオナルド殿下の?』


『まあね、正式には殿下に話は上げていないよ?その頃にさ、ほら?』


言いにくそうにするフレディックにレイモンドは

『なるほどね、アレクが真実の愛に侵されていた頃ね』


『ともあれ、アナスタージア様はなかなか良いであろう?』


フレディックが問うと

『なかなかではない。かなり良い』

満足気のレイモンドを確認するとフレディックは

『では後ほど』

軽快に駆け回っていた。




式も終わり夜会が始まるとフレディックは休む間もなく翻弄している。


夜会の扉を開くと、聖母マリアの様な我が国の王妃ステファニー様が目を引いた。
そこにはメープル王国夜会と同じ光景がみえた。

皇帝とレオナルド殿下とステファニー王妃。
アレクセイ王太子殿下と、ヴィクトリア王太子妃ではなくアナスタージア様。
その後ろには既にレイモンドが控えていた。

フレディックも急ぎレオナルドの側に控えた。


『レオナルド、分かっておるな?泣く泣く手を引いた私に感謝するのだぞ』

忖度ない皇帝は通常モード。

『もちろんです。』

レオナルドはステファニーの腰を抱き引き寄せた。

アレクセイも

『王妃、おめでとうございます。招待状には王妃のお心遣いがあり嬉しく存じます』

『ありがとうございます。お気づき頂けたのですね?』

ステファニーはアレクセイに微笑みを送るもすぐさまレオナルドを見上げて

『ね?お分かりになる方はいらっしゃるのよ?』

得意気に話す。

『アレク殿、花に精通しておるのか?』

レオナルドは驚きアレクセイに問う。


『まさか!アナスタージアから聞いたのですよ』

アレクセイもまたアナスタージアの腰を抱き引き寄せた。

その様子を眺めながら皇帝は

『良い、良い。後は私に良いご縁があればだな。』

自虐気味に笑う皇帝に一同大きな声を上げて笑った。



しばらくして、ステファニーはアナスタージアと2人でテラスに出た。


『アナスタージア様、ありがとうございます。』

ステファニーからの言葉に驚いたアナスタージアは

『とんでもない事でございます』

ステファニーは小さく首を振り


『いいえ、私の祖国を救って下さったのはアナスタージア様貴女ですわ。アレクセイ殿下のお顔を見れば分かります。こうみえても私、殿下の元婚約者ですもの。』


『私は何もしておりませんわ。ただ候爵令嬢として生きてきた経験を王太子妃教育で学んだ事と合わせて日々取り組んでおりますだけ。

真実の愛も知らなければ恋に落ちたりもしませんしね。

ただ、何も無かった更地に少しづつ育んで育てていき、やがて確固たる真実の愛が育てばよいなと希望を持っているだけですの。』


クスクスと笑うアナスタージアにステファニー様は驚いた様に


『同じ!全く同じ考えですわ!私もそのように思っておりますもの!』


2人は王妃と王太子妃ということを忘れて、2人の令嬢として抱き合いながら笑った。そして孤独を分かち合うかのように涙を流した。その2人の美しい涙に魅せられた皇帝と国王と王太子であった。
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