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レイモンドの腕
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アレクセイの要望が嘘のように本当になった。
あれから3日で訪問が決まり、ロマニア王国国王夫妻は
メープル王国にやってきた。
非公式な訪問のため、カジュアルな雰囲気で晩餐会が催された。
『申し訳ありません、我が国の気まぐれ王太子の要望を聞いて下さり‥』
頭を下げるレイモンドに
『いえいえ、最近暇をもてあましております我が国の国王ですからお気遣いなく‥』
こちらも頭を下げるフレディック。
向かい合う王族4人は苦笑い。
『で?その気まぐれとは?』
レオナルドはアレクセイに問う。
『此度の件では、世話になった故。』
アレクセイはステファニーに頭を下げた。
ステファニーは驚き
『私は何もしておりませんわ。話は後から聞きましたもの。』
ヴィクトリアとハロルドの件である。
『いや、ルシャード殿の力が無ければ、こんなに早くに解決出来なかった。』
『お義兄様が?』
アレクセイは頷き、自ら席を立ち入口の扉を開けると
バーナディン公爵とルシャードが入ってきた。
ステファニーは目を見開く。
『バーナディン公爵、忙しい中申し訳ない。座って晩餐としよう。ほら、ルシャード殿も。』
アレクセイがもてなしバーナディン公爵へ椅子を引く。
バーナディン公爵は慌てふためき
『殿下!お止め下さい。』
2人は急いで席につく。
『まずはルシャード殿。此度は世話になった。遠慮なく食べて飲んで行ってくれ。』
相変わらず無表情なルシャードは
『私は別に‥』
アレクセイはニヤリと笑い
『相変わらずシャイだな。ヴィクトリアが執務を行うようになって直ぐにわかったよ。ハロルドの頼った先がルシャードだという事は。
あのヴィクトリアに執務は無理だ。でも彼女もバカではない。必死に暗記をし誰かにそれを教え、誰かが指示を出していた。書類を確認したらその指示を出す人物がバーナディン公爵令息であるルシャードだと確信したよ。
見事な仕事だ。あれはバーナディン公爵家の思考から来る決裁だ。ステファニーの決裁とまるで同じであった。破棄する案件もよく似ていた。
流石はバーナディン公爵家だと感服したよ。』
『勿体ないお言葉‥』
父親である公爵が頭を下げる。
『それだけじゃあ無いよね?ルシャードはヴィラ候爵の件の首謀者がハロルドへと繋がる案件を敢えて決裁保留とし、私に廻る様にしたんだ。自分ではなくヴィクトリアを使ってね。本当、誰かと違ってシャイなんだ。』
といいながらレイモンドを見ると
『一応、私もそれくらいは掴んでおりましたよ?』
焦るレイモンドに一同笑いが起こった。
『ステファニー、私は今までバーナディン公爵家は皆、サイボーグの様に感じていたのだ。愚かな私は外側しか見ていなかったのだね。バーナディン公爵家は他からはわからないバーナディン公爵家の絆がそこにあったのだね。』
ステファニーは驚き、そして涙を流した。
『それが我がバーナディン公爵家ですわ。』
『公爵、さぞや私を憎んでおったろうね?』
自虐的に問うアレクセイに
『とんでもない。私はメープル王国の公爵です。殿下の判断に異存はございません。』
『公爵としてではなく、父親としてはどうだ?』
いきなり割って入ってきたレオナルドに
『はあ、まあ八つ裂きにしても足りぬ程‥』
ニヤリとユーモアを入れる公爵にルシャードは絶句する。
『ち、父上?』
『何、私も直に引退であるからな。殿下が即位されたらゆっくりさせてもらうつもりだ。後はルシャード、お前に託す故しっかりな。』
アレクセイは頷いてユーモアに乗るかのように
『ヴィクトリアとの結婚式での夜会の時にさ、皇帝交えて話をしていただろ?あの時公爵が私を迎えに来たの覚えてる?』
レイモンドはすかさず
『!覚えてる。覚えてる!あの時私だけがアレと2人で残されたんだ!』
笑いが起こる。
『あの時の公爵の私への耳打ち。何だと思う?』
一同頭を巡らせるが、一人公爵は青くなる。
『『殿下、トイレの時間です!』だよ?有り得る?おかしいだろう?それ程公爵も頭に来ていたのだよ。私は親心を慮り会場を出てトイレに向かったよ。』
笑い声が響き渡る。
初めて見る父親の姿に絶句するのはルシャードだけでは無い。もちろんステファニーも同じ。
レオナルドは
『では義父上。これまでのご苦労をお察しするとともにお祝いがある。義父上は夏には孫を抱けますぞ』
‥固まる一同。
メープル王国一同はロマニア王国側を凝視する。
‥皆、微笑でんいる。
ステファニーは父親と夫の会話にこの上ない喜びを感じていた。
『はい、抱いてやって下さいね。お父様、お義兄様。』
湧き上がるメープル王国。アナスタージアは自分の作ったあり余る白い刺繍のハンカチを手に涙を拭う。
ルシャードは無表情が崩れ掛け、顔面がピクピクとしている。
この時間は国境を越え、1つになり1つの命に祝杯を挙げたのだった。
あれから3日で訪問が決まり、ロマニア王国国王夫妻は
メープル王国にやってきた。
非公式な訪問のため、カジュアルな雰囲気で晩餐会が催された。
『申し訳ありません、我が国の気まぐれ王太子の要望を聞いて下さり‥』
頭を下げるレイモンドに
『いえいえ、最近暇をもてあましております我が国の国王ですからお気遣いなく‥』
こちらも頭を下げるフレディック。
向かい合う王族4人は苦笑い。
『で?その気まぐれとは?』
レオナルドはアレクセイに問う。
『此度の件では、世話になった故。』
アレクセイはステファニーに頭を下げた。
ステファニーは驚き
『私は何もしておりませんわ。話は後から聞きましたもの。』
ヴィクトリアとハロルドの件である。
『いや、ルシャード殿の力が無ければ、こんなに早くに解決出来なかった。』
『お義兄様が?』
アレクセイは頷き、自ら席を立ち入口の扉を開けると
バーナディン公爵とルシャードが入ってきた。
ステファニーは目を見開く。
『バーナディン公爵、忙しい中申し訳ない。座って晩餐としよう。ほら、ルシャード殿も。』
アレクセイがもてなしバーナディン公爵へ椅子を引く。
バーナディン公爵は慌てふためき
『殿下!お止め下さい。』
2人は急いで席につく。
『まずはルシャード殿。此度は世話になった。遠慮なく食べて飲んで行ってくれ。』
相変わらず無表情なルシャードは
『私は別に‥』
アレクセイはニヤリと笑い
『相変わらずシャイだな。ヴィクトリアが執務を行うようになって直ぐにわかったよ。ハロルドの頼った先がルシャードだという事は。
あのヴィクトリアに執務は無理だ。でも彼女もバカではない。必死に暗記をし誰かにそれを教え、誰かが指示を出していた。書類を確認したらその指示を出す人物がバーナディン公爵令息であるルシャードだと確信したよ。
見事な仕事だ。あれはバーナディン公爵家の思考から来る決裁だ。ステファニーの決裁とまるで同じであった。破棄する案件もよく似ていた。
流石はバーナディン公爵家だと感服したよ。』
『勿体ないお言葉‥』
父親である公爵が頭を下げる。
『それだけじゃあ無いよね?ルシャードはヴィラ候爵の件の首謀者がハロルドへと繋がる案件を敢えて決裁保留とし、私に廻る様にしたんだ。自分ではなくヴィクトリアを使ってね。本当、誰かと違ってシャイなんだ。』
といいながらレイモンドを見ると
『一応、私もそれくらいは掴んでおりましたよ?』
焦るレイモンドに一同笑いが起こった。
『ステファニー、私は今までバーナディン公爵家は皆、サイボーグの様に感じていたのだ。愚かな私は外側しか見ていなかったのだね。バーナディン公爵家は他からはわからないバーナディン公爵家の絆がそこにあったのだね。』
ステファニーは驚き、そして涙を流した。
『それが我がバーナディン公爵家ですわ。』
『公爵、さぞや私を憎んでおったろうね?』
自虐的に問うアレクセイに
『とんでもない。私はメープル王国の公爵です。殿下の判断に異存はございません。』
『公爵としてではなく、父親としてはどうだ?』
いきなり割って入ってきたレオナルドに
『はあ、まあ八つ裂きにしても足りぬ程‥』
ニヤリとユーモアを入れる公爵にルシャードは絶句する。
『ち、父上?』
『何、私も直に引退であるからな。殿下が即位されたらゆっくりさせてもらうつもりだ。後はルシャード、お前に託す故しっかりな。』
アレクセイは頷いてユーモアに乗るかのように
『ヴィクトリアとの結婚式での夜会の時にさ、皇帝交えて話をしていただろ?あの時公爵が私を迎えに来たの覚えてる?』
レイモンドはすかさず
『!覚えてる。覚えてる!あの時私だけがアレと2人で残されたんだ!』
笑いが起こる。
『あの時の公爵の私への耳打ち。何だと思う?』
一同頭を巡らせるが、一人公爵は青くなる。
『『殿下、トイレの時間です!』だよ?有り得る?おかしいだろう?それ程公爵も頭に来ていたのだよ。私は親心を慮り会場を出てトイレに向かったよ。』
笑い声が響き渡る。
初めて見る父親の姿に絶句するのはルシャードだけでは無い。もちろんステファニーも同じ。
レオナルドは
『では義父上。これまでのご苦労をお察しするとともにお祝いがある。義父上は夏には孫を抱けますぞ』
‥固まる一同。
メープル王国一同はロマニア王国側を凝視する。
‥皆、微笑でんいる。
ステファニーは父親と夫の会話にこの上ない喜びを感じていた。
『はい、抱いてやって下さいね。お父様、お義兄様。』
湧き上がるメープル王国。アナスタージアは自分の作ったあり余る白い刺繍のハンカチを手に涙を拭う。
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