婚約破棄から始まる物語【完】

mako

文字の大きさ
51 / 76

レイモンドの腕

しおりを挟む
アレクセイの要望が嘘のように本当になった。

あれから3日で訪問が決まり、ロマニア王国国王夫妻は
メープル王国にやってきた。


非公式な訪問のため、カジュアルな雰囲気で晩餐会が催された。

『申し訳ありません、我が国の気まぐれ王太子の要望を聞いて下さり‥』

頭を下げるレイモンドに

『いえいえ、最近暇をもてあましております我が国の国王ですからお気遣いなく‥』

こちらも頭を下げるフレディック。


向かい合う王族4人は苦笑い。


『で?その気まぐれとは?』

レオナルドはアレクセイに問う。

『此度の件では、世話になった故。』

アレクセイはステファニーに頭を下げた。

ステファニーは驚き

『私は何もしておりませんわ。話は後から聞きましたもの。』


ヴィクトリアとハロルドの件である。

『いや、ルシャード殿の力が無ければ、こんなに早くに解決出来なかった。』

『お義兄様が?』

アレクセイは頷き、自ら席を立ち入口の扉を開けると
バーナディン公爵とルシャードが入ってきた。

ステファニーは目を見開く。

『バーナディン公爵、忙しい中申し訳ない。座って晩餐としよう。ほら、ルシャード殿も。』


アレクセイがもてなしバーナディン公爵へ椅子を引く。

バーナディン公爵は慌てふためき 

『殿下!お止め下さい。』

2人は急いで席につく。


『まずはルシャード殿。此度は世話になった。遠慮なく食べて飲んで行ってくれ。』

相変わらず無表情なルシャードは

『私は別に‥』


アレクセイはニヤリと笑い


『相変わらずシャイだな。ヴィクトリアが執務を行うようになって直ぐにわかったよ。ハロルドの頼った先がルシャードだという事は。

あのヴィクトリアに執務は無理だ。でも彼女もバカではない。必死に暗記をし誰かにそれを教え、誰かが指示を出していた。書類を確認したらその指示を出す人物がバーナディン公爵令息であるルシャードだと確信したよ。

見事な仕事だ。あれはバーナディン公爵家の思考から来る決裁だ。ステファニーの決裁とまるで同じであった。破棄する案件もよく似ていた。

流石はバーナディン公爵家だと感服したよ。』


『勿体ないお言葉‥』


父親である公爵が頭を下げる。


『それだけじゃあ無いよね?ルシャードはヴィラ候爵の件の首謀者がハロルドへと繋がる案件を敢えて決裁保留とし、私に廻る様にしたんだ。自分ではなくヴィクトリアを使ってね。本当、誰かと違ってシャイなんだ。』

といいながらレイモンドを見ると

『一応、私もそれくらいは掴んでおりましたよ?』


焦るレイモンドに一同笑いが起こった。


『ステファニー、私は今までバーナディン公爵家は皆、サイボーグの様に感じていたのだ。愚かな私は外側しか見ていなかったのだね。バーナディン公爵家は他からはわからないバーナディン公爵家の絆がそこにあったのだね。』


ステファニーは驚き、そして涙を流した。

『それが我がバーナディン公爵家ですわ。』



『公爵、さぞや私を憎んでおったろうね?』

自虐的に問うアレクセイに

『とんでもない。私はメープル王国の公爵です。殿下の判断に異存はございません。』


『公爵としてではなく、父親としてはどうだ?』

いきなり割って入ってきたレオナルドに


『はあ、まあ八つ裂きにしても足りぬ程‥』

ニヤリとユーモアを入れる公爵にルシャードは絶句する。

『ち、父上?』

『何、私も直に引退であるからな。殿下が即位されたらゆっくりさせてもらうつもりだ。後はルシャード、お前に託す故しっかりな。』

アレクセイは頷いてユーモアに乗るかのように

『ヴィクトリアとの結婚式での夜会の時にさ、皇帝交えて話をしていただろ?あの時公爵が私を迎えに来たの覚えてる?』


レイモンドはすかさず

『!覚えてる。覚えてる!あの時私だけがアレと2人で残されたんだ!』

笑いが起こる。

『あの時の公爵の私への耳打ち。何だと思う?』

一同頭を巡らせるが、一人公爵は青くなる。


『『殿下、トイレの時間です!』だよ?有り得る?おかしいだろう?それ程公爵も頭に来ていたのだよ。私は親心を慮り会場を出てトイレに向かったよ。』


笑い声が響き渡る。


初めて見る父親の姿に絶句するのはルシャードだけでは無い。もちろんステファニーも同じ。

レオナルドは

『では義父上。これまでのご苦労をお察しするとともにお祝いがある。義父上は夏には孫を抱けますぞ』

‥固まる一同。


メープル王国一同はロマニア王国側を凝視する。

‥皆、微笑でんいる。



ステファニーは父親と夫の会話にこの上ない喜びを感じていた。


『はい、抱いてやって下さいね。お父様、お義兄様。』

湧き上がるメープル王国。アナスタージアは自分の作ったあり余る白い刺繍のハンカチを手に涙を拭う。

ルシャードは無表情が崩れ掛け、顔面がピクピクとしている。


この時間は国境を越え、1つになり1つの命に祝杯を挙げたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

青天の霹靂ってこれじゃない?

浦 かすみ
恋愛
贅沢三昧でとんでもない王妃だった私、国王陛下の(旦那)から三行半を突き付けられた! その言葉で私は過去を思い出した。 第二王妃からざまぁを受ける羽目になった私だが、おや待てよ? それって第一王妃の仕事もうやらなくていいの? 自分磨きに独り立ちの為に有効使わせてもらいましょう! ★不定期更新です 中盤以降恋愛方面の話を入れていく予定です。 誤字脱字等、お見苦しくてすみません。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。 そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。 貴方は酷い人よ。 羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。 私は生きる屍。 貴方は悪魔よ! 一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定ゆるいです。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

処理中です...