1 / 5
アトラテラルの湖畔
しおりを挟む背負う鞄からは時折ジャラジャラと鉄の擦れる音がなっていた。
私は《エステラ・ラ・バステル》、世界各地を旅しながら色々な国や場所で通貨を交換している両替商人だ。
私は両替商をするために旅をしている訳ではなくって、旅をするために両替商をしている。
貿易都市ハンベルハベルで手持ちの通貨の一部を両替した私はハンベルハベル近郊で有名な観光地、アトラテラルの湖畔にやって来た。
「すごいなぁ、これは見とれちゃうな」
【アトラテラルの湖畔】
私がこの湖畔にたどり着いたときには日が少し傾き始めていた、木々に囲まれた湖には空の星が映り込み、まるで地上の空といった有様でだった、そんな湖の中心部には丸く一箇所だけ星空が写り込まず深い青色の部分がある。
アトラテラルの湖の中央は凄く深くなっていて、その箇所は深すぎるあまり光を反射しない。
未だに底がどこにあるか解明できていないアトラテラルの湖にはこんな話がある、深い湖の中央の先は神々が住まう世界があり、かつて神々はこの湖から地上に降臨された、神々の世界に足を踏み入れようとした愚か者は水面の底に引きずり込まれ二度と外には出られない、と。
神々の降臨の地、ということで聖地として崇められているこの湖を一目見ようと観光客は後を耐えない有名な湖畔である、事実私も湖の人気に誘われてやって来た観光客のわけだ。
湖畔を歩いていると、屋台をしている少し毛深い胡散臭いおじさんに声を掛けられる。
「お嬢ちゃん!トルパはどうだい、神々の湖畔で取れた魚で作った霊験あらたかなトルパだよ!」
「トルパ?」
「魚を潰して丸めた後に油でカリッと揚げた料理さ!」
神々の湖で取った魚を潰して練り上げて、それを油であげる、霊験あらたかというよりもどう考えても罰当たりな一品だけれども、別に私はそこまで信心深いわけでもないのでカスティール銅貨を3枚支払って1ダースのトルパを買った。
トルパを食べるために付近のベンチに座って、星の映る湖を肴に熱々のトルパを口に放り込んだ。
「ほぁ、は、は、は」
熱々のトルパが口で弾けて、頬の内側を火傷する。
味は淡白なもので魚の甘みと塩がまぶしてあるのでその味がするだけである、綺麗な湖で取れた魚というのは本当なのだろう、泥臭さは一切なく、雑に練られているぶん食感が独特でそれが美味しい。
「お嬢さん商人だろ、ちょっと商談をしたいんだが」
肌が少し黄色く、顔が少し平たい男性に声を掛けられた。
私を商人と言ってきたのは多分巨大な鞄と明らかに旅を指定そうな身なりであろう、若い女が一人で旅をしている危険は重々承知しているつもりの私は、警戒しながら男の話を聞いた。
「いえ、私は物品を売買している商人ではありません」
「じゃあ両替商人か、話だけでも聞いてくれ」
「両替商人でもありません」
両替商は強盗にあいやすい、商材がお金そのものだ、両替商かいと聞かれて配送ですと街の外でいう者はいない。
「もういっそお金もいらない!受け取ってほしいものがあるんだ」
「いりません」
「そういうなって、な?」
胡散臭すぎる男だった、いつ衛兵を呼ぼうかと私は周囲を見渡した。
「これ、スマートフォンって言うんだが凄いんだぞ、こうここの背面のレンズを合わせて、ここを押すとほら!」
男は四角い平たい箱を湖に向けた後、箱のガラス面を私に見せる。
そこには湖の精巧な絵が書かれている、精巧と言うにはあまり緻密すぎて、まるで箱の中身湖が入り込んだようだった。
「凄い」
「だろ、こいつは近くにあるものを写真っていってまあ絵だな、絵にする事と、こことは違う遥か遠くの世界の人々の世界を見ることができるすげえ道具だ」
男は箱の底にある穴に小さい楕円上の道具の先についている突起を差し込む、するとガラス面に写っていた記号は私のよく知る文字に置き換わった、記号はどこかの国の文字であったと推測できる。
その後男は、写真のとり方、SNSの使い方、太陽の光を貯める機械とその機械を繋げてガラスの箱を充電する方法など、私がそれを扱えるようになるための一通りの内容をレクチャーしてくれた。
使い方が分かるほどにこれには途方もない価値があると私は思うし、そうおいそれと人に渡していいものとは思えない、私なら絶対手放さないだろう。
「これ、貰っていいんですか」
「俺にはもう、必要ないんだ」
「何でですか、これ凄い物ですよね、売るにしたってちゃんと売れば一生の財を築けますよ」
私がそう言うと、少し遠くの方から白いワンピースを着た女性が走ってくるのが見えた。
「あなた~何やってるの?」
どうやらこの男の知り合いのようだった、彼は女性の方を向くと優しい笑顔で私に告げた。
「俺はもっと見てあげないと行けない人がいるんだ、そいつは君が色んなところに連れて行ってあげてくれ」
男性はそういうと私のもとを去っていった、私は手元に残された【スマートフォン】で何となく湖を写真に収めた。
「そうだなぁ、せっかく頂いたんだし、、、旅行記でも付けてみようかな」
この日私は、SNSと旅行記の執筆を始めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
