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二人の時間②

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そして、拓真と入れ替わりでツトムがやってきた。

「ツトムくん、よろしくね」

「大丈夫です、任せてください」

拓真はツトムに何回も確かめた。

「かすみに手を出すなよ、いいか」

「組長、大丈夫ですよ、もう何回目ですか、俺を信じてください」

「もし、かすみに襲い掛かったら、命はねえぞ、いいな」

かすみは慌てて口を挟んだ。

「拓真さん、またそんな怖いこと言って、やめてください」

「かすみ、この島に二人になるんだぞ、かすみは警戒心がなさすぎる」

「組長、俺を信じてください」

拓真はツトムが乗ってきたヘリで東京へ向かった。

「ツトムくん、よろしくね」

「任せてください」

かすみはこの時、痛みに対して相当我慢していた。

いつも、拓真が側にいて、手を握ってくれた。

今日から拓真はいない。

明日の夜帰宅予定だが、その間も正直、心細かった。





食事はツトムが用意してくれた。

しかし、食欲はあまりない。

そんな矢先、かすみ島に台風が接近していた。

「ツトムくん、台風がこっちに向かってるって」

「台風ですか、やばい、俺、風で飛びそうなもの片付けてきます」

かすみは嫌な予感が脳裏を掠めた。

もしかして、ヘリ飛べないかも……

台風が通り過ぎないと、拓真さん帰ってこれないんじゃないかな。

台風は進むスピードが遅く、停滞していた。

「今晩通り過ぎればいいんですけど」

かすみの予感は的中した。

その頃東京では、ヘリが飛ばないと大混乱だった。

「社長、今日はヘリは無理です、それより、台風が過ぎ去るまで、一週間は不可能かと」

拓真はツトムに連絡を入れた。

「組長、こっちは変わりありません、台風の備えも完璧です」

「そうか、かすみに今すぐ電話するからと伝えてくれ」

「かしこまりました」

そして、拓真はかすみのスマホに電話をかけ直した。






「かすみ、俺だ、大丈夫か」

「大丈夫です、台風が今晩中に通り過ぎればいいんですけど、しばらく居座るみたいなので、
ヘリが飛ばないと拓真さん、帰って来れないですね」

かすみの声は少し涙声だった。

それに拓真は気づいたが、どうすることも出来ない自分が歯痒かった。

「かすみ、かすみ、もう少し頑張ってくれ」

「はい」

かすみと離れて数時間でこんなにも辛い、寂しい思いをするなんて、

拓真は耐えられなかった。

かすみが自分の側にいることが当たり前の生活で、俺はかすみがいない世界は考えられなかった。

かすみ、俺はずっとお前の側を離れないぞ。





それから台風は停滞したまま、ヘリが飛べる状態ではなかった。

まるで、拓真とかすみを試しているかのように、二人の間を阻んだ。

かすみは精神的にも弱っていった。

拓真に会えない寂しさと心細さは尋常ではなかった。



「かすみさん、少しは食事召し上がらないとダメです」

かすみは窓から暗い空を見上げて、泣いていた。

そんな姿を見て、ツトムはかすみを抱きしめられずにはいられなかった。

「かすみさん、かすみさん」

「ツトムくん、私は大丈夫、ありがとう、頑張ってご飯食べるね」

かすみは少しずつ食事を口に運んだ。

その時、かすみのスマホが鳴った。

「はい」

「かすみ、大丈夫か」

それは東京にいる拓真だった。

「拓真さん、私は大丈夫です」

声に力がなく、まるで今にも消えそうな蝋燭の炎のように感じた。

台風が停滞してから一週間が過ぎ去ろうとしていた。

拓真はスマホを切って、ツトムに掛け直した。

「かすみの様子はどうだ、声が弱々しいと感じたが……」

「頑張って食事を召し上がっていますが、日に日に弱っています、組長早く戻ってあげてください、俺、見てられなくて……」

「すまない」



それから、台風は急に速度を上げて、過ぎ去っていった。

拓真は急いでヘリを飛ばし、かすみの元へ急いだ。

ドアをバタンと開けてかすみの元に駆け寄った。

「かすみ、かすみ」

「かすみさん、水も飲み込む力がなくて」

拓真は水を自分の口に含み、かすみに口移しで喉を潤した。

「かすみ、今、村上先生が後からくるからな、頑張れ」

拓真は手をギュッと握って、声をかけた。

かすみは何か言いたい感じだったが、はっきり聞き取れない。

拓真は神に祈った。

あと、十日、俺が側にいてあげられなかった分だけでも、もたせてくれ。

村上先生が到着すると、すぐに点滴を施し、装置をセットした。

「これで、少しは回復するといいのですが、それでも時間の問題です」

「かすみ、かすみ」

かすみは苦しそうな呼吸は落ち着きを見せはじめた。

かすみはずっと目を閉じたままだった。

かすみ、俺がいない間、頑張ってくれたんだな。

嬉しいよ、お前はいつでも俺を一番に考えてくれた。

目を開けてくれ、俺はお前にもっと愛を囁きたいんだ、かすみ。


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