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第十七章 理樹さん、愛しています

思い出せない

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「亜紀?どうかした?」

「いえ、どうもしません」

「もう病室戻ろうか」

「あの、東條さんは毎日病院に来てくれて、私に優しく接してくれますけど、お仕事とか、ご家族とか大丈夫なんですか」

「ああ、仕事は信頼おける仲間がいるから任せてあるんだ、それから家族は亜紀だけだよ」

「私が東條さんの家族?」

《俺の妻になれ》

私?まさかね、そういえば、東條さんは指輪してないんだ。

「どうかした?」

「どうもしません」

私どうしちゃったんだろ、東條さんの事すごく気になる。

ある日、私は、トイレに一人で行ってみた。

トイレから廊下に出ると、病室に戻る通路がわからなくなってしまった。

こっち?どっち?

何号室だっけ?

目の前にナースステーションがあった。

私は看護師さんに聞く事にした。

「あのう、トイレ行ったら部屋に戻れなくなってしまって」


「大丈夫ですよ、東條亜紀さんですね、一緒に行きましょう」

東條亜紀?

「あのう、私、東條って言うんですか」

「そうですよ、東條亜紀さんです、いつもご一緒の方がご主人様ですよね、毎日一緒で羨ましいです」

東條さんが私の旦那様?私、東條さんの妻なの?

「こちらですよ、もしトイレ行きたい時はナースコールしてくださいね」

「ありがとうございました」

そして、部屋の入り口には、確かの東條亜紀と記されていた。

自分の指を確認した。

指輪していない。

東條さんも指輪していなかった。

思い出せない、東條さんとの事。

その時、東條さんが病室に現れた。

「亜紀、おはよう」

「おはようございます」

「どうした、変な顔しちゃって」

私は東條さんにいっぱい確かめたい事があった。


「今、トイレ行ったら、帰り部屋がわからなくなったんです」

「そうか、それでどうしたんだ」

「看護師さんが連れてきてくれました」

「良かったな」

「私は本当に東條さんの妻なんですか」

「ああ、そうだよ」

「東條さんとの事全然思い出せなくて、それに私達指輪をしてないんですね」

東條さんはしまったと言う表情を見せた。

「亜紀、ごめん、バタバタしてて、すっかり忘れてたよ、本当にごめん」

「大丈夫です、そんなに謝らないでください」

「退院したら、一緒に買いに行こうな」

私はどう答えていいか迷っていた。

しばらくして、亜紀は退院の許可が降りた。

相変わらずリハビリも兼ねて通院を余儀なくされた。

「亜紀、このマンションが亜紀と俺の住んでいたところなんだ」

部屋に入ると、亜紀はキョトンとしていた。

「どう、まだ何も思い出せない?」

「そうですね」
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